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19.パーティー結成

「それではお前らにはパーティを組んでこの森の採集をしてもらう。珍しいものを採取したパーティには高ポイントだ。弱いが魔獣もいるから気をつけろよ。あとほかのクラスの連中もいるが喧嘩はするなよ」


 気分を新たにした俺たちをまっていたのは初のパーティーを組んでの授業だ。俺たち生徒の前に広がるのは森におおわれた山だ。学校の土地広すぎないか? とは思うが貴族たちの集まる学校である。有力貴族からの寄付の額はかなりあるらしいので金は余るほどあるのだろう。


 この森には珍しいキノコや薬草、熊系や兎系の魔獣がいる。このまえの授業で俺たちの実力をみたジェイス先生がこの山に出てくる魔獣くらいなら大丈夫と考えたのだ。ちなみにこの学校にはもっと強い魔獣が出てくる「竜王の森」などもある。大抵は上級生の試験などに使われるのでしばらくは縁がないだろう。

 

「ティアの別荘での冒険を思い出すねぇ」

「懐かしいわね、夏休みはまたいきましょ」

「キラーベアーと戦った時は死ぬかと思ったな……」


 楽しかっただけではない、あの時は本気で死を覚悟したものである。もちろんパーティーはいつものメンバーである。そしてそれに一人追加メンバーがいる。


「エレナです。よろしくおねがいします」


 少し緊張した声であいさつをしたのはエレナだ。同室のティアがパーティーに誘ったのだ。彼女は魔法も剣術も優秀でかなり戦力になるのでありがたい。


「昨日はありがとう。パーティーを組めてうれしいよ。よろしく」

「はあ……」


「僕はハロルドだ。属性は風だよ。剣術は得意じゃないんだけどよろしくねぇ」

「はい、私もどちらかというと魔法のほうが得意です。よろしくお願いします」


 昨日の事もきまずいかなって思って勇気を振り絞って声をかけたらこの一言である。え? なんか冷たくない。ティアフォローしてくれたんだよな。


「なあ、ティア誤解解いてくれたんだよな?」

「ええ、ちゃんとヴァイスはいいやつって言っといたわよ。最初会った時は私の秘密を知っててなんかきもいなって思ってたけど話すと意外とちゃんとしてて仲良くなれたってフォローしといたわ。なんかエレナが小声でやはりストーカー? とか言ってたような気がするけど多分気のせいだと思うわ」


 なんも解けてねー!! むしろ溝が深まっている気がする。人見知りって可能性にかけたがハロルドとは普通に話しているしな。とりあえずは考えても仕方ない。行動で巻き返すしかないだろう。


「あー、とりあえず珍しいきのことかポイント高いものを中心に集めておこう。大体の場所把握しているからついてきてくれ。あと魔獣もでるから陣形を組むぞ」

「あ、リーダーってヴァイスさんなんですか」

「そうよ、なんとなくだけどそうなったわ、でも結構頼りになるのよね」


 少し不安そうなエレナにティアがフォローを入れてくれている。まあ、みてろって。俺はようやくゲーム知識を役立てることができそうで少し高揚していた。まあ、地味なチートだけどな。



「だいたいこんなもんでいいんじゃないかなぁ。もう体が限界だよ」


 あらかたのめぼしいものをとりつくした俺たちはハロルドの一言で休憩をすることにした。治療に使われる高価な薬草に、味が絶品といわれるきのこ、魔兎の肉などのこの山でとれるレアアイテムが俺たちのかごにはぎっしりと詰まっていた。これだけとれば成績上位間違いなしだろう。


「それにしてもさすがヴァイスね。言った通りのところを探したら珍しいものが色々みつかるんですもの」

「ヴァイスの情報収集能力はすごいよねぇ。これならトップも狙えるんじゃないかな」

「情報収集能力……やはりストーカー……」


 ストーカー? ねえ、いまストーカーっていったよな。それはさておき俺の未来をみる能力は信用されないだろうということで情報収集がすごいということでごまかしているんだがなんとか信用してもらえそうだ。いや不本意な誤解も与えてそうだけど。


 ゲームで何回もやったおかげかアイテムの収集は予想以上にうまくいったものだ。ほかの生徒達が迷いながら進むのに俺たちはすぐにレアアイテムの場所に行くことができたのでほぼ独占できたのだ。途中魔兎という兎の魔獣を狩れたのもうれしい。魔兎は普通の兎に比べてすばしっこく凶暴だがあまり脅威ではないのもあるが急造パーティーにしてはうまく連携が取れていたと思う。あとは中ボスを倒して終わりでよいかなと思う。


「実はな……ここにはあいつが……キラーベアーがいるんだよ」

「いいわね!!いいわ この前より強くなったから腕試しにはちょうどいいわよね」

「なんでこんなとこにいるんだい? 一歩間違えたら死ぬだろう」


 うれしそうなティアだが、ハロルドの反応が普通だろう。キラーベアーは中々厄介な魔獣である。しかし俺たちももう15歳。ティアの別荘で戦った時から1年たっているし、今はエレナもいる。不意打ちなどをされなければ負けることはないだろう。


「キラーベアーですか……確か初心者狩りってよばれている魔獣ですよね。そんなのがいる山に授業を使うとは思えないんですが……」


 エレナが信じられないという顔をしていた。たしかにこの前も一歩間違えたら皆殺しにされていたもんな……でもいるものは仕方ない。


 意気揚々歩く俺とティアを先頭にゲームでキラーベアと遭遇した場所へ向かっていた俺たちだが、何やら声が聞こえてきた。どうやら先約がいるようだ。


「だからついてこないでっていってるじゃないですか!!」

「いいじゃないか、平民よ、誰もパーティーを組んでくれなかったのだろう? このレイド様が組んでやろうというのだ。泣いて喜ぶところだろう」


 げぇ、シオンとレイドかよ。冷静に考えたらゲームの中ボスだったんだからシオンが倒すことになるのか……結構早くきたつもりだったが先をこされたようだ。 


「ヴァイス……逃げよう」

「なんで逃げるんですか……あれは確かレイド王子ですね……もう一人はだれでしょう?」


 今にも逃げ出ようとしているハロルドにエレナが突っ込む。まあ、そうだよね。俺らの未来をエレナは知らないもんね。てかシオンのこと知らないのかと思ったが、そうか……あの騒動の場にいないからエレナはシオンの事を知らないのか。


「あいつはシオン、平民だけど魔法の力が強くて特例で入学したんだよ。属性は多属性使用者だ」

「本当ですか!? おとぎ話の登場人物じゃないんですよ!!」


 信じられないといった表情のエレナだがこれは現実である。主人公だからね。存在がチートなんだよ。俺もできればチートスキルがほしかったなぁとつくづく思う。いや、こんなゲーム感覚ではまずいな。気を引き締めないと。


「グルルルルゥゥ」


 森に獣のうなり声が響く。声のほうをみるとシオンとレイドの前に魔獣がいた。忘れるはずもないキラーベアーだ。


「ほう……獣風情がレイド様に喧嘩を売ろうというのか!! いいだろう相手をしてやろう。平民よ。少しでいいあいつの動きをとめるのだ」

「なんであなたに命令されなきゃいけないんですか!? とはいえキラーベアーはまずいですね……わかりました」


 どうやらシオン達は戦うらしい。放っておいてもいいがさすがに死なれたら目覚めが悪い。負けることはないと思うが一応みていたほうがいいだろう。


「早く助けにいかないとまずいですよ!! こんなとこで王子が死んだなんてなったら……」

「大丈夫だ……あの二人は強い。ただ万が一の時に備えて魔法の準備だけはしといてくれ」


 今にも飛び出しそうなエレナを俺は引き止めた。ティアとハロルドは俺と視線が合うとうなずいた。以心伝心ってやつだな。ちょっとうれしい。


「大地よ」


 キラーベアーの足元の地面が急に崩れた。落とし穴ようにやつの下半身が地面に埋まった。すげえ、ティアの土魔法とはレベルが違う。


「よくやった!! 紅蓮の炎よ、すべてを焼き払え!!


 レイドの手から炎の渦が現れキラーベアーを焼きつくす。圧倒的破壊力である。炎が消えた後には黒焦げになり息絶えたキラーベアーの焼死体があるだけだった。一撃かよ…さすがに強すぎない。


「すごい威力だねぇ……大体30ヴァイスってところかなぁ」


 変な単位作るなよ!! しかし俺の30倍くらいといわれても文句は言えない破壊力だった。さすがゲームでもメインアタッカーとして最後まで一軍なだけのことはある。


「ふっ、これが炎帝レイド様の力だ」

「炎帝って……いいから素材をはぎ取りましょう。時間もないですしね」


 無事シオン達がキラーベアーを倒したので俺たちもさっさと消えるしよう、変に絡んで厄介なことになっても嫌だしな。


「炎帝……かっこいい……」

「え?」

「なんでもないです」


 エレナがぼそっとつぶやいたのを俺は聞き逃さなかった。くっそ、結局主人公パーティーがフラグをもっていくのかよ。俺はモブとして転生したことをすこし悔しく思うのであった。



「高得点はヴァイスたちのパーティーだ。よくやったな。こいつチートしたな……」


 ジェイスさんが最後のセリフは俺にだけぼそっと聞こえるようにいった。まあ、ばれるよな。でも禁止をするつもりはないようだ。


 まあ、なにはともあれ今回の成績は期待してよさそうだ。転生してようやく俺のゲームの知識が役に立ち始めてきた。このままうまくいけばいいんだが……


「お言葉ですが先生キラーベアーがいる山に私たちを探索させるのはさすがに危険だと思いますが……」

「は? キラーベアーだと……そんなもんいるわけねえだろ。死人がでるぞ」


 え? あれってイレギュラーな出来事だったのか? ゲームにも普通にでてきたから生息しているのかと思っていた。

 ジェイスさんが表情で本当かと尋ねてきたので俺はうなずいた。


「あー、めんどくせーことにならないといいけどな……ほかの教師とも相談するわ……明日は山狩りだな」


 なにやら不穏な雰囲気である。嫌な予感を残しつつ今日の授業は終了をつげた。あれ? これってなんかの伏線だったのだろうか? もしかしたら俺のプレイしていないルートで発生するイベントがあるのかもしれない。


「ね、いいでしょ? エレナも来るっていうしみんなで明日は街にいきましょ?」

「そうだねぇ、明日は色々観光するのも楽しいかもしれないね」

「予定もないですしいいですよ、付き合います」

「ヴァイスもどうせ私たちのほかに友達いないだろうし付き合ってくれるでしょ?」


 考え事をしていて聞き逃していたがみんなで街に遊びに行こうってことらしい。そういや、ゲームでもあったな。冒険者ギルドにいったり装備を買ったりヒロインたちとデートをするのだ。まあ、俺にヒロインはいないんだけどな。

 

「もちろん、おれもいくよ」

「やったー、じゃあ明日はよろしくね」


 とりあえず部屋に帰ったら所持金の確認と面白そうなところをピックアップしておくか。なんだかんだ楽しみにしている俺がいた。






 

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