18.かませ貴族としての学園生活
「これが終わったら聞かせていただきますね、まずはスライムを倒しましょう」
「ああ……」
俺は冷や汗を垂らしながらうなずく。とりあえず協力はしてくれるようだ。その間に俺は彼女を納得させる言い訳を考えないと……
「すべてを凍てつかせし氷狼よ、その牙にて我が敵を食らい尽くせ」
詠唱!? 魔法のイメージ力を高めるために詠唱をする人間がいるとは聞いていたがはじめてみた。ちなみに俺もためしてみたがなんか恥ずかしかったのですぐやめたものだ。
彼女の手から放たれた牙状の氷がスライムを襲う。スライムに氷の牙が触れたと思うと一瞬で全身を氷漬けにした。すげえ威力だな……
「火よ!!」
俺は訓練用の剣に火をまとわせてスライムの核を氷ごと貫く。普段なら動いて狙いのつかない核も体液が凍っているためうごかない。エレナの氷が思いのほか固く俺の炎で中々溶けなかったのは秘密だ。
核を貫かれたスライムは形を維持できずに息絶えた。これで試験は終了だが本当の問題はここからである。
「では先生に報告しに行こうか?」
「そんなことはどうでもいいんです。なんで私の魔法の属性を知っていたのか教えてもらえますか?」
「それは……」
いきおいでごまかそうとしたがダメみたいだ。どういいわけをしようかとあせりまくっている俺に背後から助け舟がきた。
「もう隠せないだろう? 正直に言ったほうがいいんじゃないかな?」
なにやら意味ありげな顔を浮かべ声をかけてきたのはハロルドだ。ティアもいる。もうスライムを倒したのか。こいつ頭は回るからなんとかしてくれるかもしれない。
「えーとあなたは確かこの人の友人ですよね……?」
「ああ、僕は彼の親友のハロルドという。彼は有力な同級生の事を調べていたんだよ。ライバルの情報をもっておくのは大事だからねぇ。現に属性を知っているのは君だけじゃないさ。そうだろ?」
「ああ、王子レイドは火が使えるな。あとは……」
俺は何名か列挙していくにつれて最初は驚いていたエレナだったが後半になるにつれなぜかまた視線が冷たくなっていった。それはティアもである。なんでだ……
「レイド王子はともかくほかは女性ばかりね……」
「調べてたって何を調べていたんですか……」
ティアの言葉でなぜ俺が呆れられているかを悟った。ちがうんだよ、元のゲームの登場キャラが女の子ばかりだから仕方ないんだ。このままでは女性の事を色々調べている変態扱いされてしまう。俺はハロルドに目線で助けを求めた。彼はまかせろとばかりにうなずいた。
「ふっ、彼は地方貴族だからね。有力な女性のことを調べて嫁にしようとしているのさ」
「してねぇぇぇぇぇぇぇl」
俺でももっとまともな言い訳考えるわ!! おそるおそるエレナのほうをみると目線が一瞬あったがすぐそらされた
「最低……」
ぼそっと聞こえたのは気のせいだと思いたい。
「いやー災難だったねぇ……」
「お前どうせならもっとましな言い訳にしてくれよ……」
今日の授業が終わった俺とハロルドは自室にてくつろいでいた。そして当たり前のようにティアもいた。俺はみんなに実家から送られてきた紅茶をいれながら今日の出来事を後悔していた。ちなみに紅茶は趣味でセバスが作っているものである。
「まあまあ、エレナとは同室だし、あとでフォローしておくわ」
紅茶を飲みながらティアがフォローしてくれる。やはり持つべきものは友達である。しかしティアあんまり頭良くないけど任せて大丈夫だろうか。
「しかし、ヴァイスの未来が見えるっていうのもあながち嘘ではないようだね。確認したところさっきいっていた人物の属性は一致していたよ」
「そうね……てっきり頭の病気かと思ってたわ」
「おまえらな……」
ひでえ、信頼度なしかよ……いや、まあ友達が未来見えるんだっていいはじめたらこうなるか…… この世界はゲームに似ているんだっていったらまじで頭がおかしい人間扱いされそうである。
「それじゃあ一個聞きたいんだけど私って将来どうなるのかな? 素敵な旦那さんと結婚したりするのかしら?」
「きっとオークかなんかと結婚するんじゃないかなぁ。夫婦で脳筋でお似合いだと……あああああ、頭を握らないで……つぶれるぅぅぅ」
無言でハロルドの頭を握っているティアまじこわい……てか結婚願望あったんだな。てっきり冒険者になるものだと思っていたが。
「わるい、みたいものがみれるわけじゃないんだ。なんかこう、ふと記憶を思い出す感じにふっとわいてくるんだよ」
完全に嘘である。なんかの小説で読んだ描写をそのままパクらせてもらった。俺の知識はゲームでおこったことしかわからない。ティアが学園を出てからどうなったかはわからないのだ。
「まあ、未来なんてわからないほうが楽しいわよね」
「ふーん、じゃあ僕の栄光の道もわからないってことだねぇ」
「いや、お前は俺と一緒に学校を中退させられるよ」
「なんでさぁぁぁぁ!!」
悲鳴をあげるハロルドだが俺こそ悲鳴をあげたいものだ。そうならないように色々がんばっているというのに……
「この前のシオンって平民いたろ、あいつに俺たちが喧嘩をふっかけてそれが原因で先生たちの不興をかって退学になるんだよ」
「じゃあ、あいつらにかかわらなきゃいいだけじゃないか」
「だからそういってんのにお前が入学初日に喧嘩ふっかけたんじゃねえか!!」
かかわらなければいい確かにそのとおりである。だがはたしてそんなうまくいくのだろうか? 初日もなんだかんだ俺は避けようとしたが避けることはできなかった。ジェイスさんも変えれないこともあるといっていたし、もしかしたらゲーム内でおきたことは変えられないのかもしれない。
「どうしたんだい、急に黙って」
「いや……質問なんだが退学決まった後に取り消しとかってありえるのかな」
「そうねぇ、お父様から聞いた話だとお父様も一回退学になりかけたけど学園内に現れた魔物を倒したおかげでなんとか退学を免れたらしいわよ、まあ成績優秀だったし、うちの家名門だから元から退学に反対の意見もあったらしいけど」
なるほど……家柄はおいといて成績はなんとかするしかない。てか結局転生した直後とやろうと思ったこととかわらないな。
「ふむ、やることはきまったねぇ」
「ああ、そうだな、ティアも力を貸してくれたらうれしい」
「もちろんよ、二人がいない学校なんてつまらないしね」
俺たちは顔をあわせうなずいた。転生直後と同じといったが違うな。今の俺には信頼できる仲間がいるし、未来をみれるっていうのもある程度は信用してもらえている。もしかしたらゲームの知識を使って俺つえーだってできるかもしれない。俺の異世界転生の知識がいきるのはこれからなのだ。
「よし、じゃあ、成績アップがんばるぞ」
「あと家柄もどうにしなきゃだねぇ。というわけでティア僕と結婚しないかい?」
「この流れでプロポーズされてオッケーするわけないじゃない!! あんたと結婚するならオークと結婚するわよ!!」
「それはお似合いだねぇ……だから無言でつかまないで頭がわれるぅぅぅ」
友人たちの騒がしい声が心強い。こうして俺は気分も新たに異世界生活を頑張ることを決意した。
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ブックマーク30件いきました。ありがとうございます。これからもがんばりますのでよろしくお願いします。




