1.かませ貴族に転生して
まずは、与えられた情報をまとめ頭の中を整理しよう。素数でも数えたいところである。
どうやら俺の名前はヴァイスというらしい。年齢は13歳。地方貴族の長男。貴族といっても領地は小さく、たいした名物もない。
原因はわからないが大学生だった俺はこの世界ではヴァイスという人間のようだ。20歳から13歳に年齢が変化したのはなんか意味があるのだろうか?
あとは驚くことが二つあった。まず一つ俺はというか、この世界の一部の住人は魔法が使えるようだ。俺は精神を集中して指先から火を出す。一部の例外を除き、風、火、水、土のどれか一属性の魔法が使えるようだ。ちなみに俺の魔法の力は指先からライター規模の火を出す程度の力だ。いや、しょぼくない?
もう一つの驚くこととは、俺の顔である。最初見たときはきづかなかったが俺はこの顔に覚えがある。俺はおそらく異世界転生をした。そして異世界転生する前にやっていたゲームのキャラと顔が似ているのだ。そのゲームは平民出の主人公が魔法学園に入学し、学園生活を経験し様々なイベントをこなすというものなのだが、俺の今の顔はそのゲームの登場人物にそっくりなのだ。
しかもメインキャラではない。入学したばっかりの主人公を平民出だと馬鹿にしてちょっかいをかけ続けそれが原因で問題をおこしたり、成績が落ちたりして最終的に退学になるというモブキャラである。ぶっちゃけ名前がヴァイスっていうのも今知った。
さて、これからどうするかである。とりあえず学園の退学は避けたい。ゲームでは俺の退学後は一切触れられなかったが、まあろくなことにはなってないだろう。
おそらく俺にはチートスキルはないだろう。剣術は普通、魔法も普通、馬術も普通、体格も普通である。顔はまあ、死んだ目をしてはいるものの腐っても貴族である中の上ではあるようだ。
だが俺には記憶がある。この世界があのゲームと同じならば何がおきるのかわかるのだ。ならば退学という最悪な運命を避けるために行動すべきだろう。
主人公には極力かかわらない、成績をおとさないようにするため、今から鍛錬をする。とりあえず消極的だがそれを徹底するしかないだろう。
ただ、もう一つ懸念がある。俺がなにをやっても退学という未来はかえられないという可能性である。
ゲームではどのルートも同じ結末だった。ならばもしかしたらこれは動かせない未来なのかもしれない。
そのときのことを考えて、手を打つ必要がある。幸いこの世界の文明は中世と同程度である。現代社会の発明品をヒントに色々考えてこの土地を発展させればもし学校を退学しても安泰というわけである。
よっしゃー、やるぞ!! 俺はモブキャラかもしれないがバッドエンドだけはさけてやる!!
コンコン!!
俺がこれからの決意表明をしているとノックとともに扉が開いた。
「やあやあ、元気かな。親友殿 怪我をしたと聞いたがただでさえアンデットのような目がさらにひどくなったのかと心配で思わずきてしまったよ」
「まだ入っていいっていってないんだけどな、あとアンデッドみたいな目で悪かったな」
部屋に入ってきたのはうさんくさい笑みを浮かべた金髪の少年である。この顔も覚えがある。ゲームでも俺と常に一緒にいて主人公に絡んでやっぱりそれが原因で退学をするかませ貴族だ。
俺もはじめてしったが俺と彼は幼少からの幼馴染らしい。せっかくの幼馴染なら女の子のほうがよかった……