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16.同郷者

 深夜の学校に俺はひとりたたずんでいた。心なしか薄気味悪くおばけでも出てきそうだ。俺は手の中の手紙に再度目をやった。


 手紙には『貴様の秘密を知っている深夜にここに来い』と書いてありご丁寧に地図まで添付されている。いやーあれかな、昼の俺の剣技に惚れた女の子からのラブレターかな。などと勘違いをする余裕すらない。 秘密ってあれだよな。俺が転生者ってことだよな。でもなんでばれた? このことを言ったのはオーキス様とハロルド、ティアだけだし、ハロルドとティアに至ってはいまいち信じてもらえていないようだ。いや正確には三人には転生ではなく未来がみえるってごまかしてはいるけれど……


 俺は警戒しながら目の前の扉をノックする。ここに手紙の差出人がいるようだ。


「きたか、入れ」

「失礼します」


 愛想のかけらもない返事が聞こえた。俺は緊張で固くなった体をほぐすため深呼吸をしてから部屋に入った。なにかの研究室なのだろうか。本棚には所狭しと大量の本がある。机にも雑に積まれており、うかつに触れたら崩れてしまいそうだ。


 部屋の奥の椅子に昼間俺たちをしかった壮年の男がいた。この男が俺を呼んだのか。


「俺は……」

「ヴァイスだろ? オーキスから聞いているぞ。さっそく騒ぎをおこすとは思わなかったがな。俺の名前はジェイス、かつてオーキスとセバスとともにこの学校で生活をしていた男であり、お前と同じ転生者だ」


 この人がオーキス様の友人か。不思議と驚きはなかった。オーキス様から存在は聞いていたのもあるし、なんとなくそんな気はしていたのだ。だがこんなに早く接触してくるとは。


「お前はどんなキャラとして転生したんだ? ちなみに俺はゲームの主人公の親友キャラだった。なかなか刺激的な人生だったぜ。ちなみにそのゲームの主人公がオーキスだよ」

「俺はとあるゲームの……その……かませキャラです……」

「うわっ……お前転生してもかませだったのか……」


 憐みの目でみられた……いや転生前はわからないだろ。天才少年だったかもしれないじゃん。いや、まあ転生前も普通の学生だったけど……とはいえ先輩がいるのはありがたい。色々教わることができれば力強い。


「やはりこの世界はゲームなんでしょうか? なんで俺たちはこの世界に転生したんでしょうか?」


「さあな……なんで俺もこの世界にきたのかはわからない。お前もゲームの世界、俺もゲームの世界だ。これはなんか意味があるのかもしれないし、意味はないのかもしれない。もしかしたら神のような存在が本当にいて俺もお前もその神が作ったゲームをやっていたからこの世界に転生したのかもしれないし、神が単なるゲーマーで気に入ったゲームの登場人物として俺たちを転生させたのかもしれない……だがな、そんなことはどうでもいいんだよ」


「どうでもいいって……」


「大事なのはどう生きるかだ。結局俺は35年間この世界で生きている。つまり俺たちにとってはこの世界がもはや人生なんだよ。自分の知っているゲームと似ているとか関係なくな」


 おそらく俺が考えていた疑問なんて彼はとっくに考え抜いたのだろう。そして答えは出なかった。だから割り切ったのだろう。彼の言う通り大事なのはこの世界がなんなのかではない。この世界でどう生きるかである。だったらもっと大事なことを聞くべきではないだろうか。


「この世界がゲームの世界に近いと思うんですが俺たちがどうがんばっても元になったゲームと同じような展開になるのでしょうか?」

「さあな……それに答えを聞いたらお前はなにかをあきらめてしまうんじゃないか?」

「えっ、それは……」


 予想外の返答に俺は困惑した。でもそうだ。俺はもしこの人が未来はかえられないといったらすべての努力をあきらめるのではないだろうか? 


 俺は退学という未来を変えるためにに今まで努力をしてきた。だが退学は変えられないと知ったら俺は今までのように努力できるのだろうか? わからない。それでも未来を変えてやるって思うのかもしれないし、どうがんばっても未来は変えられないのだと絶望するかもしれない。でもそれは今まで鍛錬に付き合ってくれたハロルドやティアを裏切ることになるのではないだろうか?


「悩んでいるな……俺も悩んださ。でもがんばって変えられたこともあったし、どうがんばっても変えられないこともあった。それにお前のキャラはゲーム内では死ぬのか?」

「いやそこまでは……主人公にちょっかいかけた上に退学させられるんです。それでこのキャラの出番は終了ですね」


「典型的なかませ犬か……でも死なないんだったらがんばってみたらどうだ? 仮に未来を変えられなくても退学後もお前の人生は続くんだ。がんばって得た知識は経験には無駄にはならんよ。だから俺も必死に研究を続けている」


 かませ犬!! 確かにかませ犬なんだけどもっと言い方があるのではないだろうか……でも万が一退学を避けれなかったとしてもそのあとの人生か……考えてもみなかったな。


「そうですね……俺もがんばってみます。そういえばなんの研究をしているんですか?」

「俺はエルフ萌えでな。でも寿命に差があると結婚が難しいんから不老の薬を作れないか色々調べているんだ」


 しょーもねー、いや研究内容自体はすごいんだけど動機がね……ちょっと感動した俺の気持ちを返してほしい。

 そのあと俺たちは転生前の世界の話題で盛り上がった。結局有益な情報を得ることはできなかったが、いい気分転換になったし同じ境遇の人がいるのは心強い。




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今回セリフばかりになってしまいましたね……


面白かったらブクマ、評価、感想お願いします。本当にモチベーションがあがるので……



 




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