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魔法少女と鎧の戦士  作者: 森ノ下幸太郎
第1章 蜘蛛怪人編
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第4話 魔法使い


 一方、蜘蛛の巣の上にいた蜘蛛の怪人は地上の人間達の様子を見ていた。


「何だ…?

 あのガキが騒ぎ始めたら攻撃を止めやがった…。」

 黒い制服の人々が攻撃を止めて広場を封鎖する様に銃を構えて待機している様子を覗う。


「何だ。何だよ?

 どういうつもりだ!?


 これからだってのによ…!

 もっと人を集めろよ!!!何してんだよ!!!」

 思惑とは裏腹に受け身の態勢を取り始める魔法使い達に対して、

 怪人は思わず空から辺りを見渡すと住宅地の中を走り去る幼い少年達の姿を見掛けた。


「あの糞ガキがぁあ!余計なことしやがってよ!!!」

 意図していた展開が起こらないことに腹を立てる怪人は、

 幼い少年と2人の男女を睨み付けると手を繋いだ少年を見て「いや…待てよ。」と考え始めた。


「あいつらの誰かを拉致って見せしめにすればいいのか…。

 街を壊させて罪悪感や恐怖心を煽るよりも、

 親子で絶望して貰った方が欲望も確実に手に入るかもしれないしなぁ…!」


 独り言を呟いてそう考えた怪人は穴の空いた手の平を住宅地の屋根に向けると「やべえな…。頭にきて本来の目的を忘れるところだったわ…。」と呟く。


「こんなことしている場合じゃねぇんだ。


 さっさと地球を平等で平和な世界にしないと、

 他の奴らに何されるか分からねえんだからな…。」


 すると手の平の穴から一直線に放出された糸は住宅地の屋根に付着し、

 怪人は大きく蜘蛛の巣の屋根の上から跳び上がった。



 その動きを観察していた黒い制服の人々は、

 慌てて怪人の後を追うためにパトカーや白バイに乗って動き始める。


「移動したぞ…!」という僅かな声が聞こえてくる中で、

 糸にぶら下がって空中を翔る蜘蛛の怪人は広場から住宅地を超えて屋根の上に着地した。



 住宅地の中で「ここを真っ直ぐ行った先だよ!」と声が響いた。

 屋根の上から様子を覗き込んだ蜘蛛の怪人は手を繋いで走る幼い少年の姿を捉えた。


 その先で出くわした1人の女性が幼い少年の元へと駆け寄っていく姿と、

 タクヤという幼い少年の手を引いて走る彼方がルル・フィリアと共に住宅地の中を走ってくる様子が窺えた。


 先回りしている怪人はタクヤに向かってすかさず手を翳して糸を発射する。


 しかし、

 その直前でパトカーからサイレンを鳴らして向かって来ている事に気が付いた4人はその場で立ち止まってしまった。


 すると放たれた糸が彼方の足元に付着すると、

 驚いた彼は大きく仰け反りルルは糸が放たれた方向を見て怪人を発見すると指をさして警戒する様に何らかの指示を促している。


 命中を外してしまったことに「ちっ…。」と舌打ちをした怪人は、

 手の平から伸ばした糸を伸びた昆虫の脚のような鋭い刺を使って引き千切る。

 今度は両手を翳して穴の空いた手の平をタクヤの方へと向けた。





「タクヤ!!!」

 そう呼びかける女性の声を聞いた幼い少年タクヤは「母さん!!!」と呼んで駆け寄っていく。

 手を繋いでいた彼方という少年が女性の元まで手を引いて互いに駆け寄ると、

 タクヤは手を放して母親の元まで駆け寄る。


 すると女性は「離れちゃ駄目だって言ったでしょう!!!」と叱るように言いながらタクヤの頭を抱き寄せて言うと、幼い少年は「ごめんなさい…。でも!怪人の事を伝えに言ったら!魔法使いの人達が助けてくれたんだ!」と嬉しそうに言った。

 女性は「またこの子は…!」と呆れた様子で深い溜息を吐くと、

 彼方とルルを見てタクヤを向かい合わせながら頭を下げて言った。


「うちの子がご迷惑をお掛けしたようで…!すいません!

 どうもありがとうございました…!」


 礼を言う女性に彼方は両手を前に出しながら「あっ…、いえ。俺は、タクヤ君を送っただけなので…!」と戸惑った様子で言う。

 しかし、もう一度頭を下げた女性は「いいえ!お世話に成りました…!」と言って礼を言った。



 ルルはタクヤの頭を撫でながら「もうお母さんを心配させちゃ駄目ですよ!」と微笑みかけるとタクヤは無邪気な笑みを浮かべて「うん!お姉ちゃんもありがとう!」と礼を言った。


 そんなやり取りを阻害するかのように後方からサイレン音が近づいてきた。

 思わず一同はその音の近づく方向を見ると、

 パトカーが赤いランプを光らせて向かって来る様子が分かった。


 思わず一同が後ろに下がって脇道に寄ろうとしたその時、

 彼方という少年の足元に白く粘ついたものが飛んできた。


「うわっ!?なんだこれ…!」

 そう言って仰け反った彼方は自身の足元を見ながら驚く。

 べっとりと住宅地の凸凹とした玉石舗装路に付着している糸の先端部を見て言った。


 粘性の高い艶やかな糸が地面に粘り着いた途端に石のように一気に固まる様子を見た彼方は、思わず「な、何だ…?これって、あの蜘蛛の巣の…!?」と動揺した様子で母子を隠すように両腕を広げて背中で庇うような体勢をとった。


 ルルは糸が飛んできた方向を見ると怪人が屋根の上から両手を向けている事に気が付くと「カナタさん!上です!あの屋根の上から狙われています!」と指をさして言った。


 思わず彼方は怪人の蜘蛛の様な形状の身体や刺々しい赤紫の甲殻の様な鎧を見て「あれが…怪人…!?」と困惑した様子を見せて数歩下がった。


 すると後ろに下がる事でタクヤを庇っている事を再認識すると、

 振り向いて母子に「に、逃げましょう…!何処かに隠れないと!」と言った。


 女性はすぐさまタクヤを抱き寄せながら「は、はい…!」と返事をする。

 辺りを見渡していたルルは「カナタさん!こっちです!!!」と呼び掛けて住宅地の路地を案内する様に先導する。


「行きましょう…!」

 母子の背中を押す彼方は怪人に警戒して視線を向けながら走って行くと、

 怪人は両手から蜘蛛の糸を発射した。


 それを見ていた彼方は思わず「危ないっ!!!」と叫んで母子の背中を強く押した。


「…っ!!?」

 タクヤのいた足元には糸の先端がべっとりと粘つくと親子は思わず唾を飲んだ。


 しかし、怪人は再び糸を千切る動作を素早く行い再び両手を構えを取っている。


「い、今のうちです…!先に…!先に行って下さい!」

 その間に胸元にタクヤを抱き寄せた女性の背中を押すと、

 女性は「はい!」と返事をしながら幼い子供の手を握って「タクヤ…!走るよ!!!」と呼びかけた。


 目を丸くして驚いた顔をしていたタクヤは「うん…!」と返事をすると、

 ルルが「さあ…!こっちです!」と女性の背中を支えながら先導する路地へと向かわせる。


 慌てて走った母子は息を切らせながら狭い路地の中へと入っていくと彼方も後に続こうとしたその時、左足には白い粘着物がべっとりと屋根の上まで伸びていた。


 怪人が放った糸が彼方の足に糸を命中させていたのだ。


 前へ進もうといた彼方は怪人の蜘蛛の糸によって左足を上げようとした瞬間に「うわっ…!?うわぁあっ!?」と驚いた声を上げて転んでしまう。

 漸く後ろを振り返る事で糸の存在に気が付いて「しまった…!」と呟くように言った。


 その声と様子に気が付いたタクヤは「お兄ちゃん!?」と声を上げて駆け寄ろうとすると、彼方は「来ちゃ駄目だ!!!!お母さんと一緒に走れ!!!」と大声を上げて呼び止めた。

 そして路地裏からタクヤの後ろから引き返してきたルルの姿が見えると、

 「ルルさんすいませんっ!!!タクヤ君とお母さんを頼みます!」と言った。


 段々と接近してくるパトカーの姿とサイレンの音が聞こえる方向に視線を向ける怪人は「ちっ…。余計なことすんなよ…。」と呟きながら急いで左足に接着した糸を引っ張ると彼方は「うおぁぁっ!?」と声を漏らして逆様に吊し上げられる。


 その中で1台のバイクが凄まじいエンジン音を吹かせながら接近してくると、

 屋根から引き上げられる少年の姿を見た運転手は車体を傾かせると大きくコーナリングブレーキを行う様にパワースライドをさせながら、糸と少年に衝突しないように急停車させた。


 それは茶髪の少女が運転していたバイクだった。

 少女は素早くバイクから降りて一気に身体を引き上げられる逆様になった彼方に飛び付くと、怪人は急に飛び付いてきた少女と糸にぶら下がる彼方の体重に身体ごと引っ張られて「うおっ!?」と声を上げると思わず糸から手を放した。


 アスファルトに叩き付けられた少女と彼方は互いに「うわっ…!」と呻き声を上げると、

 少女は素早く立ち上がって怪人がいる屋根を見上げた。


 怪人は建物の屋根から軽い足取りで屋根から飛び降りる。

 対峙したヘルメットのシールドで顔を隠した少女を見ながら、

「はぁぁ…。…また変なのが邪魔しにきたか………。」と溜息交じりに呟く。

 その様子を見て起き上がった彼方は「お、降りてきた…!」と慌てた様子を見せると、左足にくっついた糸を無理矢理引きはがそうとする。


 身構える少女は後ろを振り向きながら「その糸が切れるまで、私から離れないで下さい!」と呼びかけると、ホルスターから青い宝石で装飾されたトランシーバーを取り出して側面にあるスイッチを数秒間長押しすると「ピピッ」という電子音と伴に「OVER?」と女性の声の様な電子音を鳴らした。


 それを見た怪人は「ん…?まさか…お前、昨日の魔法少女か?」と聞く。

 茶髪の少女は口元をトランシーバー近づけて「装着。」と言った。

 トランシーバーは返事をするように「ACTIVE」と音声を鳴らし、

 装飾された宝石が青く美しい光を放つ。


 青い光を放つ宝石を手に持った少女は、

 ブルゾンに通した白いベルトの金属製のバックルにトランシーバーを取り付ける。

 目映く光り輝いた宝石は青い光で少女の身体を包み込むと、

 トランシーバーは「ARMAMENT」と女性の声の様な電子音で音声を鳴らす。


 包まれた光が消えて姿を露わになると、

 そこには制服を着たヘルメットの少女の姿は居なかった。


 白髪の赤いリボンで纏めたポニーテールと灰色で縁取られた紺のロングコートを靡かせて、腰の白いベルトの両サイドに取り付けられた剣と銃を武装した少女が佇んでいる。


 瞬く間に特徴的だったヘルメットがなくなり、髪や瞳の色から服装まで変わったその姿を見た彼方は「か、変わった…!?」とありのまま起きたことを声に出して驚く。

 怪人は「やっぱり、またお前か…。」と呆れた様子で言った。


 少女は怪人から視線を離さずに剣を引き抜くと、

 彼方の左足から怪人の手の平の間まで伸びた1本の白い糸を宝石の刃で素早く引き裂く。

 裂かれた糸は「ガリッ!バリッ!」と卵の殻を粉々に割った様な音を立てて千切れた。

 殻の様に罅割れた糸の残骸が床に散乱すると少女は「離れて下さい!」と言う。

 頷いた彼方は「は、はい…!」と狼狽えた様子で返事をした。


 制服の人々の後方まで距離をとった彼方は、

 人々の背中に隠れると足にくっついた粘つく糸を引き剥がして様子を窺った。


 その間に白髪の少女と彼方の周囲を黒と白の車が包囲すると、

 停車した順に黒い制服の人々が次々と降りて怪人に銃口を向けていく。


 辺りを見渡した怪人は数十人の黒い制服の人々を目の前にすると、

「何だ…何だよ!今回ばかりは大勢で来やがってよ!」と威嚇するように言った。


 剣を構える少女は「これ以上!貴方の好きにはさせないっ!」と言うと、

 銃を構えていた中年の男性の「撃て!」という言葉と供に制服の人々は銀色の拳銃から光弾を発射した。


「っ…!くそぉっ…!」

 思わず怪人はその場から逃げ出そうと数歩踏み出すが、

 中距離から発射された光の弾は全弾直撃する。

 赤紫の身体から血を噴き上がらせる度に怪人は「ぐあっ!?がぁあっ!!」と呻き声のような悲鳴を上げて顔を両腕で覆いながら大きく仰け反る。


 一斉に6発の光弾を連続で発射されたと同時に何度も引き金を「カチカチカチカチ」と執拗に音を鳴らしながら弾の出ない銃の引き金を引くと拳銃から「ENERGY LOST」と女性の様な声で電子音が鳴った。


 おおよそ60個以上の光弾を浴びた怪人の身体は立ち上る煙と伴に両腕や胸部や腹部は皮膚を黒く焼け焦がして「あがっ…っぁぁぁぁ………。」と呻き声を上げるとふらついた足取りで数歩引き下がる。


 弱り切った怪人を目の前にした時、

 中年の男性は「攻撃止め!!!」と大声で呼びかけると、

 制服の人々が一斉に銃を下ろしたと同時に「今だ!アヤ!!!」と呼び掛けた。


 頷いた白髪の少女は構えていた剣を宝石の散りばめられた鞘に押し込むと「ピピッ」という電子音と伴に柄に装飾された宝石は青く光り「EXECUTION」と女性の様な声で電子音が鳴った。


 音声と伴って青く発光する刃を引き抜く少女は右手に持った剣を確りと握ると、

 ふらついて引き下がる怪人に向かって駆け出した。


「うわああぁぁああああっ!!!!」

 駆け出した少女の掛け声と伴に青い剣を構えて振り回そうとする動作を見た怪人は思わず「っぁ…、やばいっ…。くぅ…、ふっ…!」と振り絞った小さい声と痛みに堪えた様子で右隣の建物の奥から見えた長い煙突に向かって手の平を翳すと糸を放出した。


 その動作と同時に右手に持った光る剣を左方から右方へと平行に動かしながら「あぁああっ!!!」と力の入った声で振るう。

 鬼気迫るものを感じていた怪人は思わず跳び上がると同時に腹部を振るわれた青い光の刃に浅く切り裂かれながら攻撃を回避して、煙突に付着した糸にぶら下がって右方の屋根へとぶら下がって行く。


 思わず自身の右斜め上の方向に高く跳んでいく蜘蛛の怪人を見た少女は「なっ…!?」と驚いた声を上げて直ぐに振り返ると、怪人は左手で斬られた腹を押さえながら右手に伸びた糸の遠心力で空中をぶら下がりながら住宅地を越えていく。


 その光景を眺めていた制服の人々は「あんなに攻撃を受けたのにまだ動けるのか…!?」と驚く声や「何て奴だ…!」と畏怖する人の声でどよめく。


 遠くの怪人が影になるまで眺めながら拍子抜けした少女は「そんな…。やっと、追い詰めることが出来たのに…。」と呟いて肩に入れていた力をがっくりと落としながら落胆した様子で剣を鞘に収めると中年の男性は少女の肩を叩いて言った。


「まあ…あんまり気負いするんじゃないぞ。

 街への被害を最小限に抑える為にこの作戦で動いているだけだ。


 皆もそれを理解してくれているからこそ出来ることなんだよ。

 だからお前だけ責任を感じる必要はない。

 全員で終わらせてこそ、意味があることなんだからな。」


 顔を向けた少女は「はい。」と真剣な表情で返事をする。

 意思を確認する様に2度頷く中年の男性は「…それじゃあ、次も同じ様に頼むぞ。」と微笑みながら言うと、ざわつき始めた制服の人々を見渡しながら良く通った声で言う。


「皆!慌てるのはまだ早い!

 今回は負傷者を出さずに撃退することが出来たんだぞ!


 次も同じように、一斉に攻撃できれば必ず奴を倒せるはずだ!」

 そう言った中年の男性は「各班に分かれて奴を捜し出すぞ!見つけ次第連絡し!必ず陣形をとって射殺するんだ!」と呼び掛けると、制服の人々は「了解!」と各々に返事をしてパトカーへと乗り込んでいく。



 その一連の様子を後ろで見ていた彼方は「…そうか……。これが、この世界の…警察の仕事…なのか…。」と呟いて目の前で起きていたことに圧倒されていた。


 呆然と立ち尽くす彼方を見た白髪の少女は宝石の様なバックルを取り外すと、

 光に包まれた一瞬の内に焦げ茶色の腰まで伸びた長い髪を下ろしたヘルメットの少女の姿へと戻った。

 そして少女はヘルメットを外して右の脇に抱えながら彼方の元まで歩み寄っていく。


 紺色のコートが黒い制服に戻った瞬間を見ていた彼方は服装まで変わった瞬間を見ると「も、戻った………。」と目を丸くして呟きながら唖然している。


 そんな彼方に少女は「あの…御怪我はありませんか?」と心配そうに顔を覗き込んで言う。

「えっ…ああ。大丈夫です!」

 戸惑いながらそう笑顔で返事をした彼方を見た少女は、

「それは何よりです。」と微笑むと自己紹介を始めた。


「私は中央魔法署の者で、アヤ・アガペーと申します。」

「は、はい。俺は、その…久遠彼方っていいます。

 あの…さっきは助けてくれてありがとうございます!」


 自分が異世界からやって来たという脈絡の無い説明をする訳にもいかずに、

 困惑した様子で名前だけを名乗る彼方に魔法使いの少女アヤは頷きながら「ルルさんから聞いています。地球から来られた方ですよね?」と聞く。


 その質問に安堵した様子で「はい!そうです!すいません戸惑っちゃって…。そのせいで、なんて言って良いのか分からかったんですよね…!」と苦笑しながら焦った様に答える。


 その様子を見て首を振るアヤは「いいえ。色々と巻き込んでしまって申し訳無いです…。」と謝りながら言った。

 突然謝られた彼方が「えっ…?」と驚くと、アヤは頷きながら話をする。


「地球から来られた事情は知りませんが、

 貴方はあくまでも民間人の立場なので…。

 この事件に巻き込んでしまったことに関してお詫びします…。」

「いいえ!自分から関わったんです!

 寧ろ、邪魔をしてしまって申し訳ないです。すいません…!」


 申し訳なさそうに謝るアヤと、

 慌てて自分に非があることを自覚して頭を下げる彼方が互いに謝罪すると、

 アヤは下げられた頭を見て可笑しそうに微笑みながら言った。


「とんでもないです。

 貴方はあの男の子への避難誘導だけではなく、

 怪人の蜘蛛の糸から親子を守ってくれたじゃないですか。


 協力感謝します。」


 そう言って一礼したアヤに、

 彼方は「こちらこそ!さっきは本当にありがとうございました!」と再び頭を下げて礼を言った。


 上がった彼方の顔を見たアヤは

「私達はこの周辺で捜査を継続しますので、貴方も直ぐに避難して下さい。」と言ってバイクに駆け寄りながら振り返って一礼をすると「では、失礼します。」と挨拶をしてヘルメットを被り直す。

そしてバイクに跨がりながら巻き込みの確認をして素早く出動した。


 颯爽と去って行くアヤの背中を見た彼方は「なんか、格好良い人達だな…。魔法使いの、刑事さんなのかな…?」と呟くと住宅地の路地を見て思い出したかのように「そうだ!ルルさんを探さないと!」と言って慌てた様子で駆け出していった。



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