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魔法少女と鎧の戦士  作者: 森ノ下幸太郎
第1章 蜘蛛怪人編
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第1話 魔法少女

  街灯に照らされる夜の街。


 バイクに乗る一人の少女がいた。

 白いボディに側面部を特徴的なコバルトブルーで塗装されたバイクに乗り、

 青いフルフェイスのヘルメットを被り、長い焦げ茶色の髪を揺らして走る。

 軍服の様な黒のブルゾンに黒いショートパンツを穿いた少女がバイクに跨がって煉瓦調の舗装路を走行している。


 あらゆる場所に水路が通っている街の舗装路を急な速度で運転する中、

 少女の腰に巻かれたベルトに取り付けられたホルスターから「ピー」という音声が鳴った。

 ホルスターに収納してある青い宝石で装飾された風変わりのトランシーバーから「こちら中央区魔法署本部!メルフィオナ北区に出動した魔法使いとの連絡が取れません。付近の魔法使いは至急応援要請を願います!」と音声が流れた。


 何らかの指令を受けている少女は必死な形相でアクセルを回すと、

 アメジストの様に綺麗な紫色の瞳で真っ直ぐに前方を見据えながら住宅地に入っていく。


 その奥には赤いランプを付けた白と黒の車が3台ほど無造作に停まっていた。

 パトカーが3台停車しているのだ。


 それを見た少女はバイクを急停車させると直ぐさまヘルメットを外してハンドルに掛けるとバイクから降りて現場へと駆け付ける。


 停車した3台の車の先を抜けると、

 そこには少女と同じ軍服の様な黒い制服を着た人々が倒れている。


 そしてその奥では昆虫のような異形の身体をした人型の生き物に首を片手で捕まれた制服の男性が「…っぁぁ…!」と喉の奥から振り絞った声を上げていた。


 人の身体に昆虫の堅い外骨格のような赤紫の鎧を装った肩の甲殻にはそれぞれ2本の長い脚のような尖った刺が伸びている。

 髑髏の様な顔に鎌状の鋏角と2つの赤い目に筋肉質な身体に生えた無数の体毛。

 そして首にはハートの形をした透明な宝石の左右に金属で鳥の翼を模したネックレスが掛けられている。


 それはまるで骸骨が蜘蛛を象った鎧を着ているような姿だった。


「…っ!

 やめて!!!もうやめなさい!!!!」

 瞳孔を開いて必死に叫ぶ少女の声に全く反応しない異形の生き物は男性の首を持ち上げた状態で昆虫の様な牙のある口をギチギチと音を鳴らしている。


 目の当たりにした光景に思わず少女はホルスターから風変わりのトランシーバーを引き抜いた。側面にあるスイッチを数秒間長押しすると再び「ピピッ」という電子音と伴に「OVER?」と女性の声の様な電子音が鳴った。


 口元をトランシーバー近づけた少女は「装着…!」と言うとトランシーバーは返事をするように「ACTIVE」と音声を鳴らし、装飾された宝石が青く美しい光を放った。


 夜の町中が青い光に照らされると、

 人型の生き物は思わず光を照らすと方向へと視線を向けた。


 光を放つ青い宝石を手に持った少女は、ブルゾンのベルトループに通った白いベルトの金属製のバックルに宝石で装飾されたトランシーバーを取り付ける。

 すると宝石が更に目映く光り輝いて青い光で少女の身体を包み込むと、

 トランシーバーは「ARMAMENT」と女性の声の様な電子音で音声を鳴らす。


 少女を包んでいた光が一瞬にして消え去ると、

 人型の生き物は男性の首から手を放して身体の方向を少女へと向けていた。


 しかし、視線の奥では立っていた茶髪の少女ではなかった。


 雪のように白銀に輝く髪の毛を揺らす少女が立っていた。

 赤いリボンで結ばれた白く長いポニーテールが靡き、赤い裏地をはためかせる。

 灰色で縁取られたと紺のスカートと紺色のロングコートを羽織っており、

 白い2本のラインが入った赤いネクタイが特徴的だった。


 宝石で装飾されたブーツで青い光の中を少女が佇んでいる。

 そして首にはハートの形をした透明な宝石の左右に金属で鳥の翼を模したネックレスが揺れていた。


 コートのベルトループには白いベルトが巻かれており、

 スカートの中心辺りで装飾された宝石のバックルから青い光が放たれている。


 生き物はその姿を捉えようと青い光の影を観察すると、

 左の剣帯には剣がぶら下がっており、右には銃を納めたホルスターが装着されていた。


 辺りをキラキラと輝かせる白い霧のような光に包まれた白髪の少女は、

 夜の暗闇の中で青い眼光で人型の生物を見据える。


 その少女は左手で拳銃を引き抜くと素早く両手で構えた。

 しかしその拳銃には実弾を放つことの出来る様な構造は見当たらず、

 SF小説に登場する様な近未来的な造形をした風変わりな拳銃だった。


 スライド部分が異様に長く、

 縦幅の広い拳銃を構えた少女が銃口を向ける。


 暗闇の中で光を放つ青い瞳とベルトの宝石を見た生き物はゆっくりと近づきながら「何だ、お前…。お前も魔法使いなのか?」と言った。


「それにしてもなんなんだぁ…?その中途半端に物騒な格好は?

 そういうの確か…子供の頃、朝方にそんなやつやってたっけなぁ…。


 魔法少女とかいう奴かぁあ…?」


「…っ!?」

 怪物としか形容できない昆虫の様で人間のような生物。

 怪人に話しかけられた少女は数歩引き下がって動揺しながら「貴方…!人間の言葉が分かるの…!?」と驚いて質問を続ける。


「貴方たちの目的は何!?

 どうして人を襲ったりするの!!?」


 懸命に話を聞き出そうとする様子に何故か両手を上げて首と供に振りながらあきれた様な態度をとって深い溜息を吐きながら言う。


「はぁぁあ………。


 何だよ…。

 戦う気まんまんな格好になったと思ったら………。

 お前も、なのか…。」


 質問の返事とは別の返答が帰って来たことに理解を出来なかった少女は「どういうこと…?」と言って引き下がりながら銃を構える。


「どうもこうもないわ…。


 こっちはちゃんと目的があって殺しに掛かっているのに、

 全然抵抗もしないどころか…。

 どいつもこいつも話し合いで解決しようとしやがってよぉおお…!!!!


 お前等、まじで頭可笑しいんじゃねぇのかぁ…?」

「何を………。

 何を訳の分からない事を…!!!


 貴方たちこそ何なの!?

 そんな当たり前の事に疑問を持つだなんて………。


 人として許されることじゃないわ!!!」


「だからさぁああ!!!

 そういうのが可笑しいんだよなぁあ!!!

 この世界の連中はよぉお!!!」


 地団駄を踏む様に甲虫の様な鋭い脚を地面に叩き付ける怪人は不気味な赤い複眼から眼光を鋭くさせて怒りを露わにして言う。

 しかし、怪人の話の内容をいまひとつ理解できていない少女は「この…世界………?」と不思議そうに呟いた。


 怪人は針の様に鋭く尖った5本の指を握り絞めながら、

 自分で作った握り拳を見詰めながら言った。


「暴力には屈しないくせに無抵抗で長々と死ぬまで説教だけは垂れてよぉお…!

 お前等何の為に魔法の拳銃、持って来ているんだよ!!?

 ここの魔法使いってのは、警察と同じ組織なんだろう!!?


 ちゃんと仕事しろや!!!


 こんなんじゃあ!全然、天使の欲望も集まんねえし…、

 仕事は進まねえし、ストレスが溜まるだけなんだわ!!!!」


 握った拳を力強く震わせる怪人を見た少女も銃口を震わせながら「当然のことでしょう!?」と言った。


「誰だって人が人を傷付けることがどれだけ苦しいのか…。

 どれだけ心が痛むことなのか…!


 そんなことやる前から分かっていることでしょう!?

 だから私達は人の心を大切にしているんでしょう!


 人が人の心を守ることが当たり前だからこそ、

 この世界は平和でいられるのだから!」



 怪人は手の震えが治まらないのか右手に作った拳を左手で包み込むように押さえると「うだうだ、うだうだと…!うるせえなぁあ!」と吐き捨てるように言った。


「どいつもこいつも口を開けば綺麗事ばかり並べやがって…!」

 そう言った怪人は手の震えを治めながら甲殻のような腰に携えた鋭い棒を取り出した。

 まるで蜘蛛の長い脚の様な棒は怪人が握り込んだ瞬間、

 形状を変化させて刺叉のような槍に変化させる。


「だったらなぁ…!」

 そして先端が2つに分かれた刃を少女に向けて構えをとった怪人は敵意を向きい出して駆け出しながら言った。


「抵抗しないことがどれほど恐ろしいことなのかを教えてやるよ…!」

 槍を両手に握って突きつけてくる怪人を見た少女は、

 突如と始まった闘争の中で槍の刃に向かって拳銃を発砲する。


 すると拳銃の銃口からは光の弾丸のようなエネルギーが発射される。

 2つに分かれた刃に着弾する光の弾丸は蒸発するような煙と、

 刃には黒い焦げ目を残すことから高熱なエネルギーの塊であること伺わせる。


 6発連射された光の弾丸は槍の刃に命中するが、

 刃は壊れる様子はなく怪人は構わずに少女に向かって槍を突き出した。

 少女は思わず後方へと引き下がった。


「おら!どうした!?そんなんじゃ何の意味もないぞ!」

 突き出された刃が少女の左肩を掠めるが、

 白髪の少女が着ているコートは破れることなく刃を弾き飛ばしていく。


「それとも…なんだぁ!?

 魔法少女だからこれぐらいの攻撃は効かないってかぁあ!?」


 そんな様子に構うことなく次々と槍を構え直して突き出す。

 それを見た少女は右方へと避ける。


「武器じゃなくて俺に撃ってみろ!」

「っ…!」

 再び少女は後方に引き下がりながら拳銃で槍の刃に発砲する。


「お前の腰にぶら下がっている剣はただの飾りかぁあ!?」

 それを見た怪人は少女を追い掛けるように走りながら槍を構えて向かっていく。


「くっ…!」

 少女は思わず左方に逃げ回りながら追い掛ける怪人の後ろに回り込もうとする。

 逃げ回る少女に怪人は追い掛けながら「おい…!おいっ!ふざけんなっ!!!」と叫び「お前はここに何しに来たんだ!?」と怒鳴りつける。

 そして素早く駆け付けて高く飛び上がった怪人は槍を掲げて少女に向かって突き出した。


 しかし素早く動く少女は回避と逃避に専念した途端に怪人との距離を一気に離して、

 向かってきた刃を難なく躱した。


「チョロチョロと逃げ回りやがって…。

 意地でも攻撃はしないつもりか………。」


 そして少女はパトカーの正面まで駆け付けると後ろを向いて怪人と向き合う。

 怪人は地面に突き刺さった槍を抜いて少女を見据えた。


 するとその奥から咳き込んだ声が聞こえてきた。

「げほっ…ごほっ…」と聞こえてきた声を探して視線を向ける。

 すると少女の後ろに見える車を見た怪人はその奥で首を押さえながら倒れている男性を発見し、顔をしわくちゃにして涙を流しながら苦しそうに過呼吸をしている様子を見て言った。


「んん?

 ああ…。何だ…まだ生きている人間がいるじゃん…。」

「えっ…!?」

 その言葉を聞いた少女は思わず後ろを振り向くと倒れている男性を確認し、

 怪人に向かって慌てた様子で言った。


「止めなさい…!

 あんなに人を苦しめて何とも思わないの…!?

 あの苦しそうな顔を見て…!


 悲しいことだとは思わないの…!?」

「…お前はもういいわ。うるさい。」

 冷めた様子で吐き捨てるように言った怪人は槍を片手に持って構えをとると男性を狙うように振りかぶった。


「どうして…こんなことに…っ!」

 落胆した様子の少女は目をぎゅっと瞑りながらベルトのバックルを外すと、

 急いで拳銃の遊底にあたる部分にスライドさせて宝石の装飾されたバックルを嵌め込んだ。

 すると拳銃に取り付けられた宝石は再び青い光を放ち「ピピッ」という電子音と伴に銃身が伸びると、口元に宝石を近づけながら「アンロック!」と強い口調で言った。


 その声に反応する様に拳銃は「COLD LIBERATION」と女性の声の様な機械音を鳴らして宝石や銃口から青い光を収束し始める。


 その声に怪人は「何だ…?今更…。」とあきれた様子で少女に視線を向けた。

 向けられている銃口からは白い冷気を纏わせたて青い光を放っている。


 それを見て笑った怪人は吐き捨てるように言った。

「もう遅いんだよ。


 抵抗をしなかったことに後悔しろ…!」

 そう言って大きく振りかぶった怪人の槍を投げようとする姿を捉えて少女は引き金を引く。

 拳銃は収束された青い光を解き放ち白い冷気を纏いながら怪人の身体に向かっていく。


 怪人が槍を投げる寸前に胸部に衝突した砲丸のような青いエネルギーの塊は、

 昆虫の様な甲殻を砕いて青色の光を拡散させると今度は冷気を収束していく。


 白い冷気に包まれる怪人の身体は音もなく氷漬けになると身動きすることなく固まった。

 一瞬にして全身が氷の中に閉じ込められたのだ。


 少女はその様子を見詰めてゆっくりと銃を下ろしてホルスターに収める。

 そして剣の柄を握って宝石の散りばめられた柄に押し込むと再び「ピピッ」という電子音と伴に柄に装飾された宝石は青く光り「EXECUTION」と女性の様な声で電子音が鳴った。


 武器に搭載された冷酷な単語を淡々と発する機械とは裏腹に、

 少女は戸惑いをみせながら静かにゆっくりと剣を引き抜いていく。


 鞘から抜き身になった青い光の剣を右手で慎重に構える。

 その中世ヨーロッパに登場する様なショートソード程の刃渡りがある結晶の様な美しい刀身の剣を両手に握り込むと、光る剣先を震わせながら凍り漬けの怪人に向かって斬り掛かろうと大きく振るった。


「ふっ…!」


 振るわれた剣は頭上から大きく瞬く間に怪人の首に向かっていくが、

 首元に到達する寸前に少女は動きを止めてしまった。


「…っぅ!」


 まさに寸止めというところで。


 それは少女の脳裏に黒い猫の怪人が過ったからだ。

 記憶の中で切り裂かれて倒れている傍には怯えた目で幼い少女が見詰めている。


 その時の斬られた怪人を見た幼い少女が、

 怯えた顔と震えた唇で青い宝石の少女にとある言葉を伝えようとしていた。


 ふといつかの記憶がフラッシュバックする中で、怪人からぴしりと音が鳴った。


 怪人の身体は揺れ始めると凍った身体をみしみしと音を立て始める。

 身体に固まった氷が「ぴきぴきぴき」と音を立ててひび割れていく中で少女は歯を食いしばりながら震えた剣で怪人の首に接触させようとする。


「………くっぅ…。」


 怪人の首元で光の刃が揺れたその時、

 身体で固まっていた氷は「ぱきり」と音を立てて砕け散ると同時に怪人の脚は動いていた。


「…なぁっ!?」

 後ろに引き下がって素早く少女に向かってその脚で蹴りつけると少女は「うわぁあっ!?」と悲鳴をあげて後ろへ大きく仰け反ると真後ろにあった白と黒の車に衝突した。


 背中を叩き付けた少女は「ぐぁぁ…っ…。」と声を漏らしながらゆっくりと身体を起き上がらせていく。

 怪人は光弾によって抉られて赤い肉が露出した胸部を片手で押さえながら、

 口から白い息を吐いて何度も何度も「ぜーはー…ぜーはー…」と掠れた声で荒い呼吸を続ける。


「がぁぁっ…ぅぁ…。

 はぁ…はぁ…なんだよ………こんなにすげえ力が…はぁ………、あるのに…。


 止めを刺すことも…はぁ…できねえのか…。」


 そう言った怪人は赤いランプと車の振動音が聞こえる方向を見ると、

 遠くから赤いランプとパトカーと救急車のサイレンを鳴らして向かって来ている様子を覗った。

 すると怪人は辺りを見渡すと住宅の屋根に向かって手の平の中心に空いた穴を向けると、

 そこから白い蜘蛛の糸を放出した。


 太く長い糸は住宅地の屋根にべっとりと付着すると、

 怪人はその糸を両手で掴みながら少女に向かって言った。


「…はぁ…はぁ…。とんだ甘ちゃんだよ…お前等は…。

 言った通り、ここで俺を殺せなかったことを後悔…!させて、やるよ…!


 お前等が…はぁ…俺を!殺さなかったせいで…、

 次は大勢の犠牲者がでるんだからよ…!」


「………っ!ま…待ちなさい!」

 立ち上がって剣を構えていた少女はその言葉を聞いて目を見開くと、

 慌てた様子で青く透明な剣を怪人に向かって振るった。


 その剣から灯っていた青い光は消えており、

 宝石の様な刃を怪人の背中に向かって振るう。


 しかし怪人は先に飛び上がると、

 屋根に粘着された蜘蛛の糸が怪人の手の平に戻っていくかのようにその身体を引っ張ると、宙にぶら下がった怪人はそのまま粘着した屋根へと向かって高く跳び上がった。



 一目散に蜘蛛の糸を使って逃走してく怪人は少女の視線からは既に小さく見えている。

 漸く駆けつけた救急車からグレーの救急服を着た2人の男性が降りてくると、

 倒れた黒い制服の男性達の意識の確認を始める。


 その後について来たパトカーから黒い制服の人々が降りてくると、

 少女も元まで駆け付けて言った。


「逃げられたか…!」

 制服を着た1人の中年男性がそう呟くと、

 若い女性は少女に向かって「大丈夫ですか…?怪我は?」と心配そうに訊ねる。


「大丈夫です。

 ただ…今回も、止めを刺すことが出来なくて………。」

 俯いた白髪の少女は申し訳なさそうに「すいません…。私の責任です。」と言って返事をした。


「気にするな…。

 俺達だって未だに銃を撃つ事には躊躇いがあるんだ。」

 男性の話を聞く少女は顔を上げて曇らせた表情を見せていた。

 それを見た女性は頷きながら「そうですよ。」と言って少女の肩に手を添えた。

「何せ、彼らも人に似た存在なんですから…。

 私も…彼らを撃った時に痛そうで…苦しそうな顔をされた時は…。

 その時は…もう撃てなくなるんです。


 彼らにもきっと…私達の様な心や感情があるんだなって…思うと………。」


 話をしている内に女性の顔まで曇ってしまうと、

 男性は真面目な顔をして言った。

「まあ…でも被害が出ている以上、

 撃つ以外でしか解決できないのも事実なのかもしれないしな…。」


 それを聞いた少女の脳裏には蜘蛛のような身体をした怪人が言った言葉を思い出す。





(「…はぁ…はぁ…。とんだ甘ちゃんだよ…お前等は…。

 言った通り、ここで俺を殺せなかったことを後悔…!させて、やるよ…!


 お前等が…はぁ…俺を!殺さなかったせいで…、

 次は大勢の犠牲者がでるんだからよ…!」)





 先程起こった出来事を思い返した少女は顔を上げて2人を見ながら「そう…なのかもしれません…。」と真剣な眼差しで言った。

 その言葉にぎょっとした2人は思わず視線を向けると、

 頷いた少女は話を続ける。


「実はさっきの怪人が…その人間の言葉を喋っていたんですが…。」

 そう少女が伝えると2人の男女は目を見開いて驚いた顔をしながら「えっ…!?」と言った。

 男性は思わず「奴ら…!人間の言葉が分かるのか…!?」と驚き、

 女性は「それで!何て言われたんですか…!?」と慌てた様子で聞いた。

 少女は再び頷いて静かに答えた。


「はい…。

 どうやら彼らには何らかの目的があって人を襲うみたいでして…。


 それで…止めを刺さなかった時に言われたんです。


 ここで俺を殺さなかったせいで、

 次は大勢の犠牲者がでるんだって………。」


 その言葉を聞いた一同は驚愕した表情から一転して女性は悲しそうな顔をして「何てことを………。」と呟いた。

 男性は顔を顰めて目を背けながら言う。


「………何だって…そんな…。

 ………だが、どちらにしても…だ。


 奴らが話を出来るというのはかなり重大な情報だ。

 今後の事件次第では捜査や警備体制も今以上に強化される可能性だって高いんだ。


 兎に角、これは本部に戻って報告しに行ってくれ。」

 俺達は残りの被害状況を確認してから戻ることにする。」


 そう言った男性に少女は「了解です。」と返事をするとバイクに乗ってその場を後にした。


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