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魔法少女と鎧の戦士  作者: 森ノ下幸太郎
第1章 蜘蛛怪人編
1/25

プロローグ 始まりは誰もが不条理な世界の中で


 子供の頃。

 仲の良い女の子の友達がいた。

 初めて出来た友達というだけではなく、

 その子のことを子どもながら尊敬していた。


 人口6387万4500人。

 両親は海外で働き、子どもが国に残る寂しいこの世界で、

 夢を語るその子がとても眩しく見えていたからだ。


(「私たちみたいな親と離ればなれの子供に安心させてあげたり、

 楽しいことや嬉しいと思えることを沢山教えてあげられる人になりたいんだ。」)


 あの子の言葉は今でも思い出せる。


 (「この世界は間違っているから、

 せめて私達みたいに何も知らない子ども達に何が正しくて、

 どうすれば良いのかを教えてあげられる先生みたいな人になりたいんだ。」)


 その子には素晴らしい夢があった。


 人口の7割が高齢者で3割が外国人のこの国で、

 その子は子どもの為に先生になる夢を持っていた。


 当時、小学生の中学年頃から両親が海外に赴任した子どもの頃の自分にとって、

 それは素晴らしいことだと思った。


 子供の語る夢物語だと分かっていても、

 両親と離れ離れに暮らすこの世界の子供にとって、

 世知辛く、悲しいと思っていた頃にとってその夢は、

 まさに理想の世界の象徴だった。


 生きていることに対するこのどうしようない虚無感を拭い去りたかったからだ。


 だからその子と同じ夢を持った。

 その子が夢みる眩しい世界に触れたくて。

 この寂しく虚しい気持ちから解放されたくて。

 そして誰かにその夢を共感してもらいたくて。



 でもあの日。

 その子と離れ離れに成ってしまった。

 北東まで旅行に行っていたその子の乗ったフェリーが津波に飲み込まれたらしい。


(「彼方君…。

 ごめんね。」)


 あの日、その子は帰ってきた時の涙を覚えている。

 その子がいつも身に着けていた赤いカチューシャが無くなっていて、

 満開に咲いた向日葵の様な明るく朗らかな笑顔を見ることが出来なかったからだ。


(「彼方君との約束…。

 守れなくなっちゃったの。

 

 お父さんと…お母さんがっ………!

 帰りの船でね………お父さんとお母さんが…、

 津波に飲み込まれて…いなくなっちゃったから…。


 お祖父ちゃんと…。お…お祖母ちゃんの家に…引っ越すことに…なったんだ。」)


 その子は生きて、両親は死んでしまったそうだ。

 年に数回しか会えない両親が不条理な現実に飲み込まれたのだ。


 心優しい女の子だった。

 その心そのものが尊いものだと思えるあの子は憧れだった。


 幼い頃、両親がDVDで見せてくれたバイクに乗って自由の為に戦う戦士や、

 皆で力を合わせれば乗り越えられると勇気付けてくれる戦隊の話より、

 愛情や感情という人の心を守ってくれる魔法少女の話なんかよりも。


 両親のいない孤独な生活を送っていた子供の頃の自分にとって、

 紛れもなくあの子がヒーローだった。


 あの日以来、

 学童クラブであの子が作った自作の紙芝居や絵本を読み聞かせてもらうことがなくなった。あの子はこの街にはもういないからだ。


 ずっと後悔していた。

 あの時、笑ってお別れしようと言ったけれど。

 本当はもっと別の言葉が欲しかった。心優しいあの子の笑顔の為に。

 せめてあの子の向日葵の様な笑顔を咲かせてお別れをしたかった。


 夢をくれたあの子に恩を返したいのだ。


 子どもが産まれてきてはいけない世界に取り残されても尚、

 ずっとそのことが気掛かりで後悔をし続けていた。


 だからあの子の夢を追いかけ続けた。


 でも今日でそれも終わってしまうようだ。





 今、殺されそうになっているからだ。


 人助けをした。


 バイクでツーリングしていた途中、助けを呼ぶ声の方に向かったら、

 歴史の資料に載っている西洋甲冑みたいな怪人に学生服の子が襲われていたからだ。


 だからその子を助ける為に立ち向かった。でも、もう駄目だ。


 バイクで突撃しても生きている様な相手だ。そんなのは人間ではない。

 学生服の子と近くにいた子を逃がす為にその怪人に掴み掛かっている。

 この状況はもう、逃げ切れない。


 でも後悔はなかった。それはきっとあの子も同じ状況なら同じ事をした筈だから。


 だから殺されると悟っていても不思議と後悔していない。

 それはきっとあの子の眩しさが死に直面することで理解することが出来たのかもしれない。


 自分という存在はあの子の夢を重ねて生きてきた幻想だということに過ぎないのだと。




 倒れたバイクから煙が立ち昇り、学生服の少年が住宅地へと走り去っていく。


 その後ろ姿を見た西洋甲冑は舌打ちをすると、

 鉄の身体を振り回して「逃げられちまったじゃねえかっ!!!!」と言って少年が掴んだ腕を振り解いた。

 地面に叩き付けられた少年は再び立ち上がって西洋甲冑を見据えると、

 甲冑は駄々をこねる様に地団駄を踏んで激怒した。


「何なんだよ!!!お前!!?

 さっきからよぉお!!!?


 折角3人も天使が揃ったのに…、

 これじゃあお前のせいで1人しか殺せねえじゃんか!!!


 俺の願いを叶えられるチャンスだったのによ!!!」

「はぁ…ぁぁ…願い…?」


(天使だの、願いだのと…。何を言っているんだ…?)


 少年は息を切らせながら脈絡のない話に疑問を抱くと、

 甲冑は憤慨した。


「ぁぁあああ!!!もぉぉおおおぅぅう!!!!!

 折角天使を3人も見つけられたのにぃ………。


 …俺が先に願いを叶えられれば、

 この国の年寄り共を抹消できるチャンスだったのにぃぃいい!!!!」


 怒鳴り散らした甲冑は「他の奴に横取りされたらどうしてくれるんだよぉお!!!」と叫びながら少年に向かって駆け出すと右手で少年の頬を殴り付けた。


「うごぉおっ!!?」

 肩で息をしていた少年は殴打されると、

 鉄の鎧による重たい攻撃を受けて倒れ込んだ。


 倒れ込んだ少年が直ぐに起き上がろうとすると、

 甲冑は素早く少年の腹部に向かって蹴り付けた。


「うっ…!」

 今度は堅く鈍い一撃を腹部に突き出された少年は、

 口から血を噴き出すと起き上がれずに怯んでしまった。


 その様子を見た甲冑は再び少年の腹部を蹴り付けながら言った。

「お前等、天使はな!!!

 どうせ何も出来ない存在なんだから、俺たちの為に死ねばいいんだよ!!!」

 そう言った甲冑は何度も少年の腹や胸を鋼鉄の足で蹴り付けると、

 次第に少年の服が裂けて腹部や胸元が打撲して裂けると出血を起こし始めた。

「うがぁ…!がはっ…!」

 口から血を噴き出して、

 流血した腹部の傷を執拗に狙った甲冑は再び蹴り付けながら言った。


「おらっ!!!

 おらっ!!!!

 強い者が!!!

 弱い者を犠牲にするのが!!!

 人間の歴史なんだよ!!!


 俺たち若者は…!

 生まれた時から人権なんて無いようなもんなんだからさっ…!

 何も出来ない奴らは黙って俺の思い通りに殺されていればいいんだよ!!!」


 言葉の終止に脚を振り上げる様にして少年の腹部を蹴り飛ばすと、

 少年は口元を真っ赤に染めながら「…っぁぁ。」と声を上げる事無く線路上に転がった。


(駄目だ…。身体…が痛くて力が、入らない。…動くことも…出来ない。

 意識が薄れていくたびに…何も、考えられなくなる………。


 明らかに…こいつは、おかしなことを言っているのに、

 考えることが…でき、ない。


 思考が…停止して、いく…。


 そうか…。

 これが…暴力。これが、支配なのか。

 この…何も考えられなくなる。この感覚が…暴力に…よる…支配、なのか。


 暴力とは…こんなにも、恐ろしいものだったのか…。)


 線路上で身動ぎをした少年は起き上がろうとするが、

 地面を着いた手は力なく崩れ落ちて倒れ込んでしまった。


(でも…。

 確かに…こいつの言う通りなのかもしれない…。

 

 俺の…父さんや母さんだってそうだった…。

 この国に居る高齢者や外国人の為に出稼ぎをして一生懸命生きていたのに…。

 自然災害に巻き込まれて死んでしまうぐらい呆気ない人生だったんだ…。)


 虚ろな目をして動かなくなってしまった少年を見た甲冑は振り返ってベンチの下に落ちている剣に視線を向けると乗降場の段差を上って剣を取りに行った。


(本当に2人には感謝していたし…今でも大好きな家族だと思うけれど…、

 俺を育てる為に海外で働いていても…努力は報われなかったんだ…。


 結局はこの国の高齢者や外国人の為に働かされていただけに過ぎない…。

 そう考えればあの鉄仮面の言う通りだ…。)


 ベンチの下に辿り着いた西洋甲冑は落とした剣を拾い上げると、

 乗降場の段差を降りて少年の元へとゆっくり歩み寄っていく。


(…俺たちは、

 この国で生まれた時点で誰かによって支配されている存在に過ぎないんだ………。)


 甲冑は剣を逆手に持って線路の上で倒れ込んだ少年の目の前で立ち止まると、

 逆手に持った剣の柄を両手で握り込んで振り上げた。


「はぁ…。

 あのさぁ…。

 こんな簡単に壊れちゃうならさ…最初から大人しくしてろよぉ…!


 お前みたいに他人ひとの邪魔にしかならない奴が、

 一番むかつくんだよぉおおお!!!」


 怒声を上げた甲冑は逆様に持った剣の刃を向けると、

 振り上げた剣を少年に向かって突き刺さった。





 そうして少年久遠彼方は謎の怪人の手によって命を落とす―――筈だった。



 あの時、怪人の剣によって刺された。


 だが、何故か意識がある。どうやらまだ死んではいないようだ。

 身体から光の塊みたいなものが放出されている。


 鎧の怪人は倒れたこの身体を見て喜んでいる。

 その光を見て喜んでいるのは理解出来た。

 この光が怪人にとってとても重要なものなのだろう。


 いつの間にか現れた魔法使いみたいな恰好の青年も喜んでいた。

 怪人は御伽話に登場する魔法使いの様な恰好の男性を前にして喜んでいる。





「神様!!!!これ!見て下さいよ!!!こいつの欲望!凄いですよ!!!!」

「やった…!やりました!これで完成しました!!!」


 魔法使いの男は神様と呼ばれ、怪人と伴に喜んでいる。

 少年の身体から出た光の塊を見て大いに喜んでいた。


「貴方がこの世界に対して強い感情や欲望を抱いてくれた御蔭で、

 この世界を変えられる程の願いを叶えられる魔法の力が手に入りました…!!!」


 魔法使いの男はまるで宗教団体の教祖の様な語り方で少年に言った。

 隣ではしゃぎ出す鎧の怪人は魔法使いの男に対して玩具をねだる様に言った。


「神様!!!!早く!この世界を…!

 この地球を平和にして下さいよ!!!!


 この世界の老害どもをぶち殺して!!!

 俺達、若者が自由で幸せに生きられる世界にして下さいよ!!!!」


 光に包まれていた少年は朦朧とした意識と、

 ぼやけた視界の中で少年は自身の背中に広がる光の翼と発光する輪っかを見詰めていた。


 それはまるで天使の様な形をした光の塊だった。


 その光の中で微かに背中から翼を広げた光の塊が少年の胸元へと触れると、

 まるで身体の中へと入り込んだかの様に少年の身体を発光させる。


 そこに魔法使いの格好をした青年が現れると、

 青白く光る不思議な手で少年の胸元に触れようと手を伸ばしていた。


「これで…この地球を…。この世界を平和にすることができる…!」


 そう目を輝かせながら青年は少年の胸元に手を触れた瞬間。



「やめてっ!!!!」



 青年を制止させる為に言い放たれた女性の声が聞こえた。


 それは天使の様な姿の少年ではなく青年の背後に立った金髪の女性だった。

 その女性は純白のドレスを身に纏い、

 バックルに白い菱形の宝石で装飾された白銀のベルトを身に付けていた。


 長い髪の女性は剣帯に真っ白い鞘の剣を携えて、

 腰のベルトには真っ白い宝石が装飾されたバックルが特徴的だった。

 

 その宝石が真っ白く発光すると、

 女性の掌から白い炎を発生させて青年の身体を焼いていた。

 それを横で見ていた怪人は「か、神様ぁ!!?身体が!!!身体が変な炎で!焼けてますよ!!!?」と騒ぎ出した。


 女性はそんな怪人を無視する様に青年に対して言った。


「もうやめて下さい…!

 こんなことを続けていたら…、この星でも戦争が起きてしまう…!」


 そう言った女性の目からは涙が流れていた。


 青年は自身の身体を燃やす炎を見て「これは………まさか…!」と言って狼狽えると、怪人に「この炎は危険です。貴方は下がっていて下さい。」と指示する。


 素直に従う怪人は「あ…あぁぁぁ…。神様が…!俺の願いがぁ…。」と混乱した様子を見せた。

 引き下がる怪人を確認した青年は再び女性を見て言った。


「最後の最後まで、貴女は私の邪魔をするのですね…。」

 青年は振り向いて女性を見ると「しかし…止めても無駄ですよ。」と言って身体を白い炎で燃やしながら言う。


「私はこの地球の人々と約束したのです。

 この世界を救う為にこの魔法の力を使うと…!


 その魔法の力で私の身体を消滅させようとも、

 私は何度も、何度でも願いを叶える事で身体を再生させます。


 また月日を掛けて…何度も、何度でも復活し…!

 この魔法を使って私は人間の世界を平和にし続けるのです!」


 青年は身体を白い炎に包みながら身体を消滅させていった。

 文字通り、身体という存在そのもの消し去っていたのだ。

 消滅の最中に青年は天使の様な姿の少年に手を伸ばそうとする。


「…させないっ!!!」

 その行動を見た女性は目を見開くと、

 急いで青年を羽交い締めにして両腕を拘束した。


「そんなことは…絶対に起こしてはいけない…!」

 そして再び女性はベルトの宝石を白く発光させると、

 2人の身体は白い炎に包まれて徐々に身体を消滅させる。


 すると、青年の身体が消えた途端。

 引き下がっていた怪人の身体が人間へと変化した。

 

 人間の姿に戻ったのだ。


 人間に戻った少年は思わずは「あ、あれ!?俺の身体が…!魔法の力が!俺の魔法が!?使えない!!?」と狼狽える。


 女性はその様子を見て安堵した様に肩を下しながら言った。


「どうやら…これで計画を阻止できた………。」


 不思議な炎に焼かれた青年は消滅し、

 女性は身体を燃やしながら自分の消滅していく両手を眺めた。


「…でも。私の炎も…消えない………。

 …もう…この身体も…限界が…。」


 白い炎に焼かれる自分を見詰める女性は天使の様な姿の少年を見ると、

 腰に巻いたベルトのバックルを外して近付いた。


「あぁ…!巻き込んでしまってごめんなさい…!

 でも…もう頼れる人は、貴方しかいないのです…。」


 そう言った女性の持つバックルには白い宝石が装飾されていた。


 「だからこの力を貴方に託します…。」


 その宝石の様なバックルと少年の腹部へと近づけて女性は言った。


「もしも…いつか………。

 さっきの魔法使いが現れたのであれば…、

 この力で彼を止めて下さい。


 そして貴方がもし…また死んでしまう様な事があれば、

 この力を他の誰かに託して下さい。


 そうやって…この力を誰かの為に………繋いでください。」


 すると少年の身体から出現している光の翼と光り輪が、

 宝石に反応するかのように光を放ってバックルを包み込んだ。


 天使の様な光の塊が少年の姿に戻ったのだ。


 腰には白銀のベルトが巻かれており、

 バックルには白い菱形の宝石が取り付けられている。 


 そして女性は首に掛かったハートの形をした宝石のネックレスを取り外しながら言う。


「そしてこれは…守りの様なものです。

 向こうの世界で貴方が何者なのか証明してくれるでしょう。」

 そう言った女性は少年の首に宝石の付いたネックレスを取り付けた。


 真っ白く発光する炎に包まれた女性は「頼みました…。」と言うと、

 懐から黒くて丸いゴルフボールの様な形の装置を取り出した。

 装置にある円状の突起の様なスイッチを押してその場で投げ捨てた。

 

 すると装置から黒い光を放った魔法陣の様な模様が浮かび上がる。


 その言葉を言い残して女性の身体が消滅していくと、

 魔法陣の様な模様から発生した黒い光が少年の身体を一瞬にして包み込む。


 虚ろな目をした少年はその不思議な現象が起こったと同時に、

 その場から一瞬にして姿を消した。


 文字通り何処かへと消えてしまったのだ。





 それを一部始終見ていた怪人だった少年は「えっ…?待ってくれよ!!!」と言った。

 魔法使いの女性や青年がいた筈の場所に手を伸ばしたながら独りでに嘆いている。


「神様の世界に行ったんだろ!!?俺も連れて行ってくれよ!!!!」


 取り残された怪人であった少年は「いやだぁ…。いやだぁ…!こんな世界に居たくない!!!!」と頭を抱え込みながら膝を着いた。


「俺を置いて行かないでくれ!!!!俺の願いを叶えてくれよぉおおお!!!!


 いやだぁ…こんな絶望の世界に取り残されるのは…!

 いやだぁ…!俺の国を!世界を返してくれよ!

 老害や外国人のいない世界に連れて行ってくれよぉおおお!!!!」


 絶望の淵に立たされた怪人の少年は膝から崩れ落ちる様に額をアスファルトの上に打ち付けながら顔を伏せて絶叫した。



「あああぁああぁあああああああ!!!!

 昔の奴らはぁあ!!!!何でこんな国にしたんだよぉおおお!!!!」



 ここは地球。夢も奇跡も希望も魔法もない。資本主義の経済社会。



 近未来。

 とある国が政府の権限を外国に剥奪され経済的に国家を乗っ取られてしまう。


 外国は間接的に政府を介してその国を統治するため、

 国中を外資系企業が独占する状態を作った。

 これにより水道、ガス、電気、燃料などの国営の機関は全て民営化された。

 つまり、街にあふれるお店や会社は全て、外国人が運営している状態にある。


 その国は少子高齢化問題が異常なまでに進行していた事から、

 国中から働ける若者達が海外へと姿を消し、

 老人と外国人労働者だけの国となった。


 だが、僅かながら邪魔にしかならない若者や幼い子どもが残されている。


 この国の人口は6387万4500人。

 人口の7割は高齢者で外国人が3割であり、若年層は1割弱。

 両親は都心や海外で働き、子どもが国に残る寂しいこの世界。

 親から捨てられたホームレスの子どもが逞しく生きる世の中。



 この国で子どもという存在は生まれてきてはいけない世代と言われている。



 我々が未来の人々の事を考えなかったが為に、そんな世界になってしまった。



 これは平和や幸福を求める物語ではない。心と命を慈しむ為の物語である。


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