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私は、息を、動きを、止めた。
『ーーーーー』
何かを言っている。たぶん、女性の声で。カチャリと鍵を開ける音がして、この部屋の扉が開かれた気配がする。そうして、扉の前にあった鉄格子も。足音が近づいてきて、ベッドの横で、止まった。そして、何かを置いた。
『ーーーーーーーーーーーー』
近づいてきた足音は、カチャリと鉄格子に鍵をかけ、扉にも鍵をかけ、出て行った。
しばらく呼吸を整え、布団から顔を出すと、そこにはご飯が置いてあった。シチューのようなものだった。暖かそうな湯気がたっているそれに、私はつい手を伸ばす。
恐る恐るスプーンですくい、口に近づけ、食べる前に匂いを嗅いだ。シチューの匂いがした。なんだか気を張っているのが悲しくなってきて、少しだけ涙が出た。
食べ終わった後は、少し元気が出てきて、なんとかなるようになるさ!といつも通りの自分が戻ってきた。いまなら、このベルも鳴らせる気がする。とっくに空は暗くなっていて、何時だかもわからない。でもきっと、ここの人たちは鳴らせばくると思う。私は危険人物だから、無視するわけにもいかないだろう。
―――チリン
試しに、一度だけ鳴らしてみた。私を殺す気なら、シチューに毒でも入れておけばよかったのに、そうしなかったってことはまだ弁明の余地はあるのだろう。
すぐに、コンコンと音がしてカチャリと鍵を開ける音がしてからなにかがこちらを覗いた。……普通の人だ。少し筋肉質な武装をした男性がこちらを覗いて、驚いたような表情をしてどこかへ駆けていった。たぶんあの人は、ずっと扉の前にいたのだろう。偉い人に知らせに行った、かな。言葉が通じない以上、どうにかしてジェスチャーで私は何もしていないと伝えなければならない。
しばらく待っていると、近づく足音が聞こえてきた。