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太陽が異様に張り切って、アスファルトを照らしている暑い夏の日。肩につかないほどの長さの髪の毛は、真っ黒なせいかとても熱くなっていた。陽射しは強く、空を見上げてもきっと目から涙が出るだけだろう。行き交う人々は足を早めて涼しいところへ避難して行く。日陰のない場所での信号待ちは、ただただ暑くて、ぼーっと信号を眺めることしかできない。
……青だ。渡ろう。そう思った時、太陽の光をなにかが遮って、私の元へ陰を運んできてくれた。私と一緒に信号待ちをしていた人々は、すでに足を白線へと置いていた。立ち止まっている私は邪魔にしかなっていない。でもなぜか、歩き出すよりも太陽を見上げることの方が、その時の私にはよほど大事で、無性に気になった。陰を運んできたそれは、雲ではないという確信があったからかもしれない。少しの涼しさを与えてくれたものの正体はなんだろう。鷹か、カラスか。
その影は、鳥ではなかった。動物と呼ぶのかさえ、私にはわからない。私の言葉で言うのなら、それはたぶん、ドラゴンだった。