『蛇喰華』
手軽に投稿できることや数多の著名人が利用していることから、
人気を博してるSNS「インスタグラム」。
自己表現の場として、自身を売り出すため、己を磨くため。
様々な思いが反映され、インターネットを介して広がっていく。
それは決して悪いことではない。だが、
由良舞衣子が持ち込んだ画像は、おおよそ気持ちの良いものではなかった。
『蛇喰華』
そう付けられた画像に写っていたものは、黒髪の女性。
木々に囲まれたその女性は、月明りに照らされながら木にもたれ座っている。
しかし、その姿は異様だった。
目は光を亡くし、その口からは蛇が顔を出している。
それだけではない。
その腹部は引き裂かれ、大量の血とボロボロの臓器で汚れている。
その形は、まるで華のように不自然に整えられて。
「これーは・・・?」
異様な画像に嫌な汗が出るのを感じながら、朝倉は問う。
「はい・・。これ、最近投稿されたものなんですけど・・。あ、写っているのは私の友達で・・」
一度言葉を切り、深呼吸してから舞衣子は続ける。
「友達で・・ここ数日連絡がとれないんです。あ、その、私がやんちゃだった頃からの子で!
確かに昔は家出したりとか、数日間いないってこともあったんですけどでも!
更生して、今はバイトとか頑張ってて!それに以前からも私とかには行き先連絡してくれてて・・。
それになにより、この子実は血が苦手でこんな画像、撮るような子じゃなくて!」
「あーちょいちょい!落ち着いたー落ち着いたー。整理させてねー?」
段々要領を得なくなってきたため、一旦さえぎる。
「えーっと、まずこの子のお名前は?」
「あ!最初に言わなきゃですよね・・ごめんなさい!あ、で、この子は宮岸佐紀ちゃんです。」
「おーけー。佐紀ちゃんねー。んで、この佐紀ちゃんが数日前から連絡が取れないと。それはいつから?」
「五日ほど前からです。で、画像は一昨日投稿されてて・・!!」
「うんうん、なるほどねー。ご家族はどうって?」
首を横に振り、舞衣子は続ける。
「佐紀に家族はいません。幼いころに亡くして、養護施設に・・まぁだからか、やんちゃになっちゃったみたいで・・。」
「ふーむ・・となると、捜索願いとかは?」
「いえ・・。昔よくこのくらいはいなくなってたから・・。それに、画像だけじゃただそういうの撮りたかっただけなんじゃないかって・・周りは・・。」
「でも、由良ちゃんはそうじゃないって思うんだねー。」
「はい。だって・・本当にこの子は血がダメだし、私にも連絡くれないなんて今までなかったし、それに・・」
バッグを漁ると、一冊の雑誌を取り出す。
「これ、昨日佐紀の部屋に行ったときに玄関ポストに入ってたんです。これ見て、私、さらに不安になって!」
そういってページをめくると、その見出しを舞衣子は指さした。
「・・警察の怠慢、再びの悲劇―蛇喰華ーによる犠牲者が!!・・・って・・はぁ!?」
予想外の事態に思わず叫ぶ朝倉。
雑誌を渡すよう施し、手に取り内容を確認する。
そして、確信した。
これは間違いなく、事件だということを。