サイド 由良舞衣子 1
同刻 日野警察署管内・待合室。
静かな部屋に通されてからどれくらいたっただろうか。
案内されてからというもの妙な緊張が自分にまとわりついているのを感じていた。
(やっぱり・・場違いね・・私。)
先刻からいじっていた髪を見やり溜息をつく少女・由良舞衣子は、
傷んだ毛先から指を離すと居心地の悪さを誤魔化すように身なりを整える。
落ち着いた黒髪に白を基調としたワンピースに淡いベージュのカーディガン。
10代後半にしてはやや大人びた顔立ちに清楚な出で立ちからは、
彼女がつい数年前まで不良だったとは誰も想像ができないだろう。
舞衣子が現在の待ち人、朝倉刑事と出会ったのはその頃のことだ。
当時、近所で悪評が立っていた先輩達とつるんでいた彼女はひょんなことからいざこざに巻き込まれ、
それを助けてくれたのが朝倉だった。
不良をやめ更生し、現在の自分があるのも全ては彼のおかげだと思っている。
だからこそ、つい頼ってしまうし、今回の件については彼にしか頼めないと思っているのだが。
(うぅ・・・でもダメ!昔を思い出しちゃう・・どうしよう・・でもここまで来たわけだし・・)
怖じ気づき始めた頃、待合室の扉をノックする音がした。
「失礼しますよーっと・・久しぶりだねぇー由良ちゃん!」
「朝倉さん!!!も~遅いよ!不安と緊張でどうにかなりそうだったよ!?」
「ごめんごめん!!」
平謝りで入室してきた朝倉は、早々に向かいの椅子に腰かけた。
「それでー?なにがあったの?」
少し雑談を交えた後、朝倉から本題について聞かれる。
元々このために来たのだからと、意を決して舞衣子は切り出した。
「実は・・朝倉さんに見てほしいものがあって・・。」
「見てほしいもの?」
「はい。あの・・あ、見てほしいだけじゃないんですけど・・えと!とにかくこれです!」
スマホを彼に向け、それを見せた。
途端、朝倉の顔色が渋くなる。
「・・なっんだこれー・・・・・は?」