憤り
「…七菜香……チクショウ……」
力無く呟く片桐を横目に見つつ、
朝倉は応援に来た捜査員に状況を一通り説明する。
「さてとー。これからどうしますかねー。」
(また犠牲者が出てしまった……。
片方の身元確認はするにしても、
この片桐七菜香とおもしき人物の状態は、
どういう事だ?)
一見して、失踪当時と同じ年齢のまま、
『蛇喰華』となっている片桐七菜香の遺体。
おそらくは犯人が、
長期に渡りなんならかの方法で保存していたと考えられる。
が。
「何故、今になって遺体を出してきたんだ?
目的は一体?」
犯人の意図がわからない。
なぜわざわざずっと隠してきたであろう、
彼女の遺体を新たな犠牲者と共に置いたのか?
まるで、
自分のモノを見せびらかすかのような、
薄気味悪さを感じる。
そして何よりも、
未だ行方のわからない宮岸佐紀と連絡のつかない浦西とわ。
この二人と『蛇喰華』との関係性がわからない。
増えていく謎ばかりに、朝倉は思わず頭を抱える。
捜査本部でも、
片桐七菜香のケータイの位置情報など調べたらしいが、
情報が一部欠損しており、日野市内で撮影されたらしい事しかわからなかったようだ。
それが犯人の意図したものなのかはわからないがどちらにせよ、
弄ばれているような嫌な感覚を、朝倉は拭い去ることが出来なかった。




