緊張の一瞬
開いていただきありがとうございます。
ガチャッと玄関の扉を開けて小川澄香とともに家の中へ入っていく。
廊下を進み宮古誠司が研究室として使っている部屋へ入り散らかっているものを適当にどかしスペースを作る。
「とりあえずその辺で待ってて。」
何か急いだ様子で宮古誠司はやや早口で喋った。
すると突然、小川澄香が申し訳なさそうに質問をしてきた。
「あのー、その、お手洗いはどこにありますか?」
「えーとね、さっき通った廊下の左側に2つドアがあるんだけど、その手前の方だよ。」
またいつもよりも少し早めの口調で説明した。
「はい、わかりました。では失礼します」
いそいそと部屋を出ていく背中を見ながら、ついニヤニヤしてしまう。
これは変な意味の笑いではないのだと必死に自分に言い聞かせる。宮古誠司は自分の夢が叶うあと一歩のところまで来ているのだ。ニヤニヤしてしまうのも仕方がない。
小川澄香がいない間にシミュレーターを起動させ、淡々と準備をしていく。
そしてちょうど準備が終わったところで小川澄香が戻ってきた。
「じゃあ、そこに横になって」
そう言ってベットを指差すと、思いっきり怪訝な表情をされてしまう。
おそらくベットの本当なら枕がある位置にいかにもといった感じのマシンがあるからだろう。
「なんか、思ってたのよりも小さいですね…」
「本体は別の部屋にあるからね。これは本体にデータを送るためのやつだよ。」
とりあえず、ベットで仰向けになってもらい、頭をどこに乗せるのか、それとあまり動かないでもらいたい旨を説明した。
「それじゃあ、これから強制的に夢を見せる感じのことをするけどあまり怖がらないでリラックスしてていいよ。」
返事はないがおそらく聞こえているだろうと思い話を続ける。
「一瞬だけ目眩がするかもしれないけど気にしないで大丈夫だからね。」
そう言うと宮古誠司はゆっくりとスイッチを押した。
それと同時に後ろから規則正しく呼吸する音が聞こえた。
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