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LF Beginning Story 1ー1

 






「ーーちゃん……お姉ーちゃん!」





「……アルか。……おはよう」





「おはよ……って、今何時か分かってるの!?」


「ああ、9時だろう?既に軍の勤務時間だ」


「じゃあどうして家にいるの!?」


「……ふむ。寝過ごしたからだな」


「早く支度をしなさい!!!」






 寝起きの割には全く眠そうな表情を見せない女性ーーエルライト=ビギニングーーは、一瞬にして仕事用の軍服へと着替え終わるとリビングのテーブルの前に着席する。


 それを妹、アルは不思議そうな表情で見つめている。


「……どうした?朝食はまだか?」


「お姉ちゃん、遅刻してるんだよ!?朝食なんて食べる時間あると思ってるの!?」


「……なるほど。合理的な意見だ」


 頷いたエルライトは玄関へ行き、後から付いてきた妹ーーアルテミシア=ビギニングーーに敬礼をする。


「行ってくる」


「……はぁ……いってらっしゃーい……」


 こうしてエルライトは既に通算何十回を記録している、遅刻記録を更新するのだった。



 ーー


 《神下土しんげどルドラーー軍庁本部》


「エルライト!!貴様は一体何度遅刻すれば気がすむのだ!!今月でもう2回は遅刻しているのだぞ!!?」


「申し訳ありません大佐。ですが、勤務時間は9時から。私はその9時から既に軍務である悪人の逮捕を続けておりました」


「ぐ……確かに軍庁に着く頃には5人もの指名手配犯をお縄にしていたが……それとこれとは別だろう!」


「ふむ……大佐の意見も一理あります。ここは私の非を認め、辞任票をーー」


「……もういい分かった!」


「ご好意、感謝致します」


「だが!明日は絶対に遅刻すのではないぞ!神人デウス様の御警護に我々の部署が任命されているのだからな!」


「承知致しました」


 敬礼をしたエルライトは自身のデスクへと歩いていき、ゆっくりと着席するのだった。



 エルライト=ビギニング。軍指定の軍服、それも優秀で数々の業績を残したものにしか与えられない特別な軍服を身につけた、凛とした表情が印象的な女性。


 背中にかけている剣は刀匠に特注で仕上げて貰った最高級品。その刃に触れたものは全て一刀両断されるという、国中でも有名な業物である。


 階級は今年、中佐になったばかり。しかし一等兵からここまで昇格してきたのは非常に珍しく、業績的に見れば中佐では物足りないという人が数多くいるくらいだ。


「エルさん、今日も遅刻でしたね。はいこれ、今朝配られていた明日の業務情報です」


「すまないなジーク。どうも私は朝というものに弱いみたいだ」


「ははは、明日はちゃんと起きましょうね」


「善処する」


 凛とした顔つきを崩さないエルライトは、全く反省をしていないのか、席を立つと朝抜いた朝食を取りに軍庁の食堂へと向かうのだった。


 ーー


 《神下土ルドラーービギニング家》


 ポーンッ


「あ、フリードかな」


 朝食を片していたアルテミシアは、エプロンを外すと玄関のドアを開けて訪問者を見る。


「おっす、アル。ん?今日はエルのやつは遅刻しなかったのか?」


「おはようフリード……いつも通り遅刻していったよ。それでも普段よりは早かったけどね」


「ははっ!さすが俺の義姉さんってところだな!」


「朝の時間にルーズなところだけね」


 まだ片付けが終わってないから上がってゆっくりしてて。そう言ったアルテミシアはフリードと呼ばれた男を家にあげる。



 アルテミシア=ビギニング。エルライトの妹で、顔はとても似ているのだが性格が異なっている。優しげな雰囲気を持っており、しっかり者で自立しているという点では同じなのだが、エルライトよりは家庭的である。


 彼女の仕事は、街で『魔道』と呼ばれる類のものを教える事。基本的に昼間は大人を相手するため、彼らの都合に合わせた時間に家を出る。大人達はやはり仕事をしているので大抵は昼前だ。夕方には子供達を相手する。


 こういう接客業とも言える仕事を、昔から続けているからか、姉のエルライトとは違って人当たりの良い性格になったのであろう。


「つーか良いのか?明日は神人がこのルドラに来るって噂だ。あんまり魔道を使いすぎると『見初められちまう』って言うぞ?」


「大丈夫だいじょーぶ。もしそんな事があっても、お姉ちゃんが守ってくれるからね。それにフリードもいるし」


「おうよ!でも俺の方が後付けなのは何だか気に食わねぇけどな!」


「ふふっ、フリードにも期待してるね」


 ーー


 《神下土ルドラーー商人街》


 春の陽射しを受けながら、暖かい空気を切り裂いて一台の大型バイクが道路を走り抜ける。フルフェイスのヘルメットを装着した2人は、目的地に到着しバイクを降りる。


 大型バイクは科学技術に加え、フリード自身の扱う魔道によって加速されている為、通常なら1時間はかかる距離を半分程の時間で走りきる。


「じゃあまた夕方頃に迎えに来るわ、頑張れよ!」


「うん、いつもありがとうねフリード」


 アルテミシアはバイクに跨るフリードの頬に口付けをすると、ヘルメットを持って仕事場へと小走りで向かっていった。




「さて、俺も一仕事しに行きますか!」


 フリード=クールズ。大柄な体躯、大雑把な性格に大きな声……色々と大きい男。身体に見合った大型のバイクを自在に操作し、道路を駆け抜けていく。


 彼の仕事は『ハンター』


 といっても町近辺に発生する魔獣や魔物を倒し、その中から現れる小さなクリスタルの欠片を換金する、そのような仕事だ。


 またある時は困ってる人の手助けをしたり、警護をしたり……など、要するに便利屋ともいえる。


 しかしその実力は折り紙付きのものであり、軍部と協力して闘った『D.D事件』では神人から栄誉賞が贈られている。


「うおっと、燃料が少なくなってきてるな……とりあえず今回の村に着いたら燃料補給すっか!」


 燃料の節約の為、得意属性である氷魔道で道路を氷漬けにし、バイクに取り付けられた特注スキーを使う事で、ジェットスキーかの如く、彼だけしかいない道路を滑走していくのだった。





「しまったぁぁあああっ!!!!!財布持ってきてねぇっ!!!!!」



 抜けている所も彼の持ち味であったりする。

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