LF プロローグ
《都市国家????》
「こ、これは……!!何ということだ!ありえん!」
「騎兵隊長!!既に先遣隊の包囲網は突破され、奴らはこちらへと猛スピードで向かってきています!」
「神人に見初められし人間め……!全勢力を注ぎ込め!跡形もなく消し去ってやる!」
騎兵隊長と呼ばれた男が、暗がりの中、モニターに映る6人を憎々しげに睨みつけながら、机を思いっきり蹴りつけた。
「跡形もなく……か。構わないぞ?やれるものならな」
閃光が、部屋を駆け巡る。
否、閃光ではない。光速に達したかとも思えるような剣の一閃は、雷光の如く部屋の中にいる男達を貫いていった。
「お……前は……!」
「猛スピードでは遅かったのでな。私だけ先に来させて貰ったというわけだ」
首に当てられた剣には恐怖心がないのか、男は敵意のこもった目でその姿を凝視する。
「さすがは騎兵隊長。これから起こる事を想像できるというのに、それでも私を敵視する。……それなりの覚悟は持っている、という事だな」
「……死神が」
「お前達にとっては……死神なんだろうな」
儚げな表情を一瞬だけ見せた彼女は、すぐに元の顔つきに戻ると、躊躇なくその剣を振り抜いた。
「女神の御元へ……安らかなる眠りを」
ーー
「おう!やったか!?」
「ああ、陽動のお陰で大した警備もなかった」
「さすがですね。こっちは派手に暴れてただけですけど、なかなか疲れましたよ」
「そうだろうな。フリード以外は拠点に戻ったらゆっくりと休む事にしよう」
「いやいや!俺も結構疲れてるからって!」
「え〜フリードさっき『俺ゃまだまだやれるぜ!ドンドン来いやぁ!!』って言ってたよ?」
「アリア!それは言葉の綾ってもんだ!敵を引き付けるためのな!」
「あの脳筋のフリードがそんな事を考えて闘うなんて、考えられないわよ。どうせまだ闘い足りないんでしょ?」
「だから違うって!」
ワイワイと、戦火の上がる都市を歩いて行く一行を、周囲の人々はまるで別世界からやってきた異物を見るかのように睨みつけている。
彼女達はその視線を感じてはいるが、特に何の反応も見せない。いや、反応しようとしなくなった、という方が的確である。
「さあ行こう、敵の本陣はもうすぐだ」
「おうよ!エル!」
「エルさん、次は僕が前に出ますね!」
「も〜ジークったら、エルに影響を受けすぎ!危ないよ?」
「アリアの言う通りよ?それでも行くって言うんなら、私が付いて行ってあげるけど」
「レイスさんがいるなら百人力です!よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそよろしくね」
ーー
私達を取り巻く状況は絶望に包まれている。
でも、それでもこうやって前へと進めるのには理由がある。
絶望のなかでも、希望を見失わずに歩いているからだ。
そう、それさえあれば私達は前へと突き進むことができる。
「アルは俺達が助け出す!」
「……ああ、必ずだ」
例え希望の先には再び絶望が待っていようとも、また希望があるという事を信じ、私達は今日も前へと進むしかない。
いや、進むんだ。私達の意志で。
「待ってろ……アル」
最愛の妹の名を呟き、エルライト=ビギニングは、曇天を見上げるのだった。