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異世界救世譚―差し伸べるは救いの手―  作者: 明月
シア、異世界に立てり
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こっちでの”帰宅”

やっとレスクに入都します。

「――もう大丈夫だ……。今度は歩ける」


 しばらくの間木陰に座り込んで休んでいると、やっと震えが収まる。生き物を殺すというのが、こんなに辛いだなんて思いもしなかった。ただ、この気持ちは忘れないようにしよう。これを忘れてしまうと俺は間違った道に進んでしまいそうだ……。


 もう走る気力が無くなった俺は、立ち上がってゆっくりと歩き始めた。レスクがやけに遠く感じてしまうのは何故だろう。


――ナイフは常に携帯しておくことにした。この世界ではいつ襲われるかもわからないし、準備しておくに越したことはないはずだ。

 その後は何事も無く歩き続け、しばらくして俺はレスクへとたどり着いた。俺の体なら疲れないはずだが、いま疲れたと感じるのは心の問題だろう。


「やっと着いたか。長かった……」



それにしても……とにかくでかい。この国はどれだけ広いのだろうか? 門だけでこの大きさだ。王国全体は相当な大きさなのだろう。城壁は見上げるほどに高く、まさに"圧巻"だった。俺が壁を見上げていると、槍を持った兵士らしき人が話しかけてくる。



「どうした、何かあったか?」

「いえ。久々にここに来たのですが、やはりここは大きいなと思いまして」

「そうかそうか! この国は他国と比べても大きな方だからな。皆あんたと同じように、いつ見てもデカいって言ってるよ」


 兵士は誇らしげに話している。そして思い出したかのようにこう続けた。


「おっと、そうだそうだ。あんたは入国でいいのか?」

「はい」


 そう返事すると兵士は徐ろに門を指差し、



「そうしたら、そこで入国チェックを受けてくれ。時間はほとんど取られないはずだ。"久々"ってことは身分証は持っているだろ?」

「持っていますよ。有難うございます」



 そこまで話して、兵士は俺の服を見て心配そうに聞いてきた。自分で確かめてみると――恐らくあの狼を倒した時のものだろう。血がベッタリとついてしまっている。


「その服についてる血はなんだ? 怪我でもしたのか? もし怪我をしたなら治療したほうがいいんじゃ……」

「いや、返り血だと思います。道中でティアーウルフに襲われたので、きっとその時に着いたんでしょう」

「あぁ、そりゃあ災難だったな……。でも見たところ剣は身につけていないようだが? ぱっと見そのナイフしか見当たらないし」

「あー……このナイフで倒したんですよ」


そうすると兵士は驚いたように、


「そのナイフでか?! よく倒せたなぁ……。アイツは素早いからナイフで闘うのは至難の業だぞ?」

「(原因は俺だけど) 運良く相手が手負いだったんですよ」

「なるほど。……おっと、もう行ってくれて構わんぞ。引き止めて悪かったな」

「いえ。では失礼します」


兵士に一礼すると、俺は門に向かった。門につくと、また別の兵士に話しかけられる。


「おぅ、ちょっと止まってくれ。身分証を持っているか?」

「はい。っと、これでいいですか?」

「よし、ちょっとだけ待ってくれ。いま確認する」



 兵士は何やら水晶みたいな物にカードについている鉱石を(かざ)した。あの宝石に俺の情報が書いてあるのだろうか?


「名前が『シア』、犯罪歴はなし……と。よし、確認は大丈夫だ。ようこそレスクへ、歓迎するぞ!」



 カードを受け取り、俺はレスクへと入る。なんか疲れたな。

 だがいまはやるべきことがある。まずやることとしては家探しだな!


 ――バッグから地図を取り出し、場所を確認する。示された道通りに歩いて行くと、周りの家より少し大きな家が目に入った。


「この家か。なんか庭に草も生えてるし見栄え悪いな」


 お世辞にも綺麗とはいえないが、住むところがあるだけマシだ。それに以前人が住んでいたらしいが、それからどのくらいの時間が経ったか判らないしな。草が生えているのは仕方がないだろう。さて、扉を開け……鍵がかかってる?



「バッグの中には……っと、あぁ。あったあった」


 鍵を差し込んで回すと扉が開いた。この鍵で間違いないようだ。

 中に入ると、少し……いや、かなり埃臭い。



 ……これはまず掃除しないといけないな。


 一通り内装を確認しながら掃除を済ませた頃には、いつの間にか辺りが薄暗くなっていた。


「取り敢えずそろそろ終わりにするか。もうへとへとだし、これでぐっすり寝れそうだ」



 ――ヘッドへと横たわった俺は、すぐに夢の中へと落ちていった。





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