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桃太郎

─お詫び─

5分じゃ読めません(汗)

 昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。

 おじいさんは山へ芝刈りに。おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。


「ほえ~、こりゃまた大きな桃じゃのお」


 おばあさんは、流れてくる桃を珍しそうに眺めていました。


 どんぶらこ…

 どんぶらこ…

 どんぶらこ…

 …

 ……

 ………


 おばあさんは、何事もなかったかのように洗濯を始めました。

 すると、川を流れていたはずの桃がパカッと割れ、中から男の子が出てきて叫びました。


「拾えよ!!」


 おばあさんは、仕方なく男の子を拾いあげ、家に連れて帰りました。

 あとから帰ってきたおじいさんに

「隠し子か!?」

と問われて一時期、大騒動になりましたが男の子は無事に一人前の大人に成長しました。


 それはもう、ため息が出るほど美しい男でした。ただ、名前が「桃太郎」というダサい名前でした。


   ※


 成長した桃太郎は、鬼が島に鬼退治に行くことにしました。


「おじいさん、おばあさん、僕、鬼退治に行ってきます!」


 すると、おじいさんは言いました。

「うん、わかった」


 おばあさんも言いました。

「グッジョブ!」


 桃太郎は「なんか軽くねっ!?」と思いました。


「つきましては、おじいさん、おばあさん。お願いがあるんですが……」

「なんじゃ? ワシのふんどしならやらんぞ」


 桃太郎に若干殺意が芽生えました。


「いえ、お願いと言うのはきびだんごを作ってほしいというものなんですが……」

「きびだんご!? 言うにことかいてきびだんご!?」

「お、お、お、おじいさん。この子、ちょっと頭が悪いんじゃありません?」


 確かに鬼退治にきびだんごってどうなの?と桃太郎も思いましたが、話が進まないので無理やり作ってもらいました。


「ほらよ」


 おばあさんは、ムカつく物言いで桃太郎にきびだんごをあげました。


「ありがとうございます」


 こうして、桃太郎は旅に出たのでした。


   ※


 桃太郎が旅立ってしばらくすると、犬がやってきました。

「わんわん、わんわん」


「ん? なんだい?」と桃太郎が尋ねます。


「わんわん、わんわんわんわん!」

「ワンワンじゃわかんねーんだよ、クソ犬!」


 桃太郎には犬の言葉が理解できませんでした。


「わおーん! わおーん!」

「なんだ、このきびだんごが欲しいのか?よし、あげてもいいが、条件がある。僕の家来になれ」


 桃太郎が言うと、犬はきっぱりと言いました。


「やだ」

「しゃべれるのかよ!」


 犬は「は?しゃべれますが、なにか?」的な顔をしました。


「家来にならないんだったら、きびだんごはやらん!」

「うわ、なにこの人…。きびだんごごときでむきになってるよ。ちっさ。人間としてちっさ」


 桃太郎はムカついたので「ほらよ」と犬にきびだんごをあげました。


「わーい。パクパク……」


 おばあさんの作ったきびだんごは、予想以上においしくありませんでした。


「お。おのれ、謀ったな桃太郎」

「なにが!?」


 犬は、桃太郎に復讐することを心に誓って偽りの家来となりました。

 続いて現れたのはサルです。


「うきききき! うきーきききき!」


 発情期のような、興奮した叫び声をあげていました。


「なにこのサル。ウザ……」

「うきーきききき!」

「あーもう、うっさい」

「うきききー……う、ごほっ、ごほっ」

「むせた!?」


 サルは、ごほごほと咳を繰り替えして桃太郎に言いました。


「あの、すいません。のど飴持ってます?」

「いえ、持ってませんけど……」

「あ、そうですか。うきーききき…ごほ、ごほ」


 桃太郎は言います。


「あの、のどが痛いんだったら、無理にサルっぽい笑い方しなくてもいいんじゃありませんか?」

「サルっぽいってなんすか、サルっぽいって!? サルですけど、おいら、サルですけど!?」

「あ、すいません……、なんかてっきりサルの真似をしてる人かと……」

「無理にサルっぽい笑いをしてるわけじゃないっすから! おいら、本当にサルっすから!」

「あ、はい、すんません……」

「……で、きびだんごとか持ってないっすか?」

「いきなりだな!」


 桃太郎は、きびだんごを分け与えてやりました。


「うきーききき! きびだんごだ、きびだんご!」

「それ、食ったら僕の家来な」

「イヤですよ。なんできびだんごごときであなたの家来にならないといけないんですか」

「ごときときやがったか……」


 犬といいサルといい、失礼な動物です。


「それに、あれじゃありません? きびだんごで働かせるのって、どうなんですかね? 労働基準法とかに違反してませんかね?」


 だんだん桃太郎はめんどくさくなってきました。


「わかったわかった。鬼が島には金銀財宝がたんまりあるから、山分けって方向で手を打とう」

「うきき、よくわかってらっしゃる☆」


 カネにがめついサルでした。


 しばらく進むと今度はキジがあらわれました。


「コケー! せっしゃはキジでござる」

「いや、その鳴き方はニワトリだろ」

「コケー! せっしゃはキジでござる」


 キジは言い張ります。桃太郎もそれ以上はツッコミませんでした。


「コケー! 桃太郎さん、きびだんごくださいな」


 桃太郎が袋からきびだんごを出そうとしたら、いつの間にか犬とサルがすべて食べていました。


「おい! なに全部食ってんだよ! 全部あげるって言ってないじゃん!」

「むしゃむしゃ。んなこと言ったって、自分ら動物だし。なあサルよ」

「うききき。そうだね。犬よ」


 キジはふところからスマートフォンを取り出し、なにやら書き出しました。


『桃太郎のくせに、犬とサルに見下されてるwwwwww超ウケるwwwwww』

「ちょっとちょっと、キジさん。何を書き込んでるんすか!?」


 キジはしれっと言いました。


「え、ツイッターですけど?」

「ツイッターですけど?じゃないよ! キジがツイッターすんなよ!」


 キジは「チッ」と舌打ちしながらスマホを高速で入力します。


『桃太郎のやつ、キジがツイートしちゃおかしいって言ってる。これ、動物差別だよね』

「あの、誤解生むようなこと書かないでくれません?」

「ちょっとお、横から覗き込まないでくださる?」

「あ、すいません……」

『桃太郎は覗き魔のヘンタイ野郎です。マジキチwwww』

「なんか、また変なこと書いてるだろ!」


 キジは桃太郎に目を向けて、プッと笑いました。


『桃太郎、超動揺なう』

「キジ鍋にすんぞ、このヤロー!」

「コケーーー!」


 キジは大空へ飛び立って逃げ出しました。でも、可哀そうなので仕方なく家来になってあげました。

 頼りになる家来を味方につけた桃太郎。いよいよ鬼が島に潜入です。


    ※


 桃太郎たちは船に乗って鬼が島へとやってきました。


「たのもー! たのもー!」


 桃太郎が叫ぶと、奥から身体の大きないかつい鬼があらわれました。


「誰じゃー! 鬼が島に何の用じゃー!」

「……どうも、お邪魔しました」

 桃太郎があっさり引き返そうとすると、犬、サル、キジに止められました。

「いやいやいや、ちょいと桃太郎さん。鬼退治は?」と犬が言います。


「いや、アレ見てよ。超強そうじゃん。何あのカラダ。首しめられたら、ポキッていっちゃいそうじゃん……」

「いっちゃいそうじゃん、じゃないよ。鬼退治にきたんだから、ちゃんと退治しなきゃ」と、サルが言います。

「簡単に言うね、君」

「あ、そうだ。握手するふりして、隠し持ってたナイフでぶっさすとかっていうのは、どう?」とキジが提案しました。

「発想が怖いよ!」


 桃太郎があーだこーだ言っていると、鬼は金棒を地面に叩きつけて言いました。


「おおい、何ちんたらくっちゃっべてんだ! こっちは何の用か聞いてんだ! 早くしやがれ!」

「あ、はい、すいません、帰ります、もう帰りますんで」


 桃太郎がペコペコ頭を下げます。


「そうか、だったらすぐ帰んな。ここはガキのくるところじゃねえぜ」


 鬼はのっしのっしと去っていきました。

 その時、見かねた犬が鬼に向かって「くそ鬼!」と叫んで、そのまま走り去ってしまいました。


「あ、あ、あ、あのボケ犬! な、な、な、なに言っっちゃってくれんのさ!」


「くそ鬼」と言われた鬼は、その名の通り鬼の形相で振り返りました。


「ああん? 今、なんて言った?」


 桃太郎は顔面蒼白です。


「あ、い、いえ、今のは僕らじゃなくて……」

「くそ鬼とかって聞こえたなあ。オレの聞き間違いじゃなければ、くそ鬼って聞こえたなあ」

「い、いえ、聞き間違いだと思います……」

「んなわけあるかボケェ!!」


 鬼が怒鳴りながら金棒を地面に叩きつけると、地面がめくりあがりました。


「ひえええ!! すいません、すいません!!」


 桃太郎は、生きた心地がしません。


「誰が言ったんじゃい!? 誰がくそ鬼って言ったんじゃい!?」

「桃太郎さんです」

 サルはそう言うと、ものすごい速さで去っていきました。


「うおおい!! 何言ってんの、バカサル!!」

「貴様か、貴様が言ったのか! いい度胸してんじゃねえか! おお!?」

 鬼は怒り心頭です。桃太郎に早くもピンチが訪れました。


「き、聞いてください。くそ鬼と言ったのは犬でして、サルのヤローも嘘をついてまして…」

「んなの知らねえ。連れてきたのはテメーだろ。テメーが責任とれや」


 バキバキと拳を鳴らす鬼。

 もうどこからどう見てもヤ〇ザです。


「だから、違うんですって!!」


 その時、鬼の懐からケータイの着信音が鳴りました。


「お、メールだ」

「ケータイ持ってるんだ…」

「ふむふむ……。な、なんじゃとおっ!! メールによると、てめー、鬼退治に来たらしいじゃねえか!!!!」

「え、あ、いやいやいや、え? なんで? 誰から?」

「キジがメールで教えてくれたわ!」


 ふと気が付くと、いつの間にかキジは空高く飛んで去っていました。


「えええっ! いないし! それになんでキジが鬼のメアド知ってんの!?」

「これで言い訳しても意味なくなったな! 要するに喧嘩を売りにきたわけだ! このオレによお!」

「あ、いや、ほんと、若気のいたりというか、井の中の蛙というか、そんなもんでして。反省してます……」


 窮地に陥った桃太郎は、必死に謝りました。しかし、鬼はもはや許してくれそうもありません。


「くそー、こうなりゃヤケだ」


 桃太郎は思い切って刀を抜いて構えました。

 すると、どうでしょう。鬼の顔がちょっとひきつりました。


「あ、いや、え? 刃物?」

「刃物ですけど……」

「け、喧嘩に刃物系は反則じゃない? 斬れたら痛いじゃん。銃刀法違反で捕まるよ?」


 鬼に金棒も似たようなものです。


「あ、いや、だって、自分これしか持ってないし」

「あ、うん、そうなの。うん、そうか」

「あの、斬りつけていいですか?」

「よくねーよ! なんだよ、斬りつけていいですかって! よくねーよ! 怖いわー、最近の若者、怖いわー」


 どうやら鬼は刃物が苦手のようでした。


「降参だよ! 刃物で向かってこられたら降参するしかねーよ!」


 刃物恐怖症の鬼が降参しました。

 こうして、桃太郎は無事に鬼をこらしめて金銀財宝を独り占めして帰ったのでした。


 彼はのちに自分を裏切って逃走していった犬・サル・キジに懸賞金をかけて行方を追い続けたのでした。


めでたしめでたし


長文、ありがとうございました。つづきます!!

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