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白雪姫

※白雪姫は出てきません。

 暗幕に包まれた真っ暗な部屋に一人の老婆と一つの姿見が置かれている。

 老婆の姿はゆらゆらと燃えるろうそくの明かりでかろうじて見える程度。その目は死んだ魚のようによどんでいた。


「鏡よ鏡。我の声を聞きとどけたまえ」


 老婆の呪文により、姿見が光を発した。次の瞬間、姿見は意志を持つ物体へと変化していた。そう、彼女は偉大なる魔法使いであった。


「ん、あーあーあー。本日はお日柄もよく……」

「鏡よ鏡、我が誰だかわかるかえ?」

「ああ、これはこれは魔女様。おひさしゅうございます」


 鏡はペコリと頭を下げた感じで答えた。実際はしゃべるだけなのでまったく動けないのだが。


「鏡よ、ひとつ質問をしよう。この世で一番美しい者は誰じゃ?」

「それはもちろん、あなた様でございます」

「うひょひょひょ、そうであろうそうであろう」


 魔女は醜い顔をゆがませて笑った。


「うわ、こりゃまた一段と醜い……」

「なにか言ったかえ?」

「いえ、なにも!」

「ところで、鏡よ。最近、ネットで騒がれている白雪姫という小娘を知っておるか」

「もちろんでございます。天使のように美しい少女でございますよ」

「それほど美しいのかえ」


 魔女の目に殺意が宿った。


「ああ、いえいえ。ご心配には及びません。白雪姫なんぞは魔女様の美しさとは比べ物になりませんから。いや、マジで」

「そうじゃろう、そうじゃろう」

「まあ、例えるならば白雪姫が空から舞い降りた天使であるならば魔女様は水中に浮かぶミジンコのようなもので…」

「例えがおかしくないか?」

「ああ、すいません! 逆です、逆! 魔女様が天使です、はい」

「そうじゃろう、そうじゃろう。魔女が天使というのもおかしいがの。うひょひょひょひょ」

「あははは………」


 乾いた笑いが響き渡る。魔女はピタッと笑うのをやめた。


「とにかく、その白雪姫という小娘の評判が気になる。鏡よ、その女を鏡に映しだせるか?」

「お望みとあらば」


 鏡には不気味に笑う老婆が映し出された。


「うぎゃ! なんじゃ、この怖い顔をした女は! これが白雪姫か、おお恐ろしい」

「あ、間違えました。白雪姫と間違えて、あなた様を映してしまいました」

「割るぞ、こら」


 魔女がトンカチを取り出した。


「ああ、待ってください! 白雪姫はこちらです」


 今度は鏡に光り輝く美しい娘が映し出された。白い純白のドレスに身を包んでいる。


「おお、なんと美しい……」

「ちなみに、あなた様がこちら」


 鏡は、不気味にたたずむ貧相な格好の老婆を映し出した。


「うぎゃーーー! やめんか!」

「違いがはっきりわかりますね」

「ビフォー、アフターみたいに言うな」


 魔女は鏡に映る白雪姫の姿を見て「ううむ」とうなった。


「確かに、話題になるわけじゃ。これほど美しい娘は見たこともない」

「いかがなされますか、魔女様」

「ここはやっぱり、あれを使うかの」


 魔女は不敵な笑みを浮かべた。


「あれ、と申しますとまさか!」

「うひょひょひょ、鏡よ、おぬしもわかったか」

「わかるわけありません」

「このガキ……」


 魔女は、1個のリンゴを取り出した。


「これを食べさせるのじゃ」

「これはなんですか、魔女様」

「うひょひょひょ、これは毒りんごといってな。食べた瞬間、深い眠りに落ちるのさ」

「あ、クロロフォルムですか」

「全然、違うわい」


 魔女の計画はこうだ。

 この毒りんごを白雪姫に食べさせて眠らせ、代わりに自分がネット上で白雪姫になり変わろうというものだった。


「要するに、なりすましをするわけですね」

「うひょひょひょひょ、これで世界中のネットユーザーがワシのもとにひれ伏すのじゃ!」

「さすが魔女様。ずるがしこい!」

「うひょひょひょひょ。もっと褒めるのじゃ」

「魔女様、醜悪! 魔女様、悪女! 魔女様、老婆!」

「それ、褒めてねえだろ!」

「………で、魔女様。白雪姫にどうやってそのりんごを食べさせるのですか?」

「………………あ」


 魔女はその後、数回りんごを白雪姫に送り届けたが、すべて受け取り拒否で返還されたという。


最後までお付き合いありがとうございました。つづきます!!

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