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7.俺の悪友を紹介します。

 そしてまた、憂鬱な月曜がはじまる。

昨晩は、新作のゲームの攻略にも励む気持ちにもならず、彼女の残り香(柑橘系、多分シャンプーの匂い)の僅かに残る部屋で、彼女と過ごした数時間の思い出を何度もプレイバックし、そこから都合の好いようにデータを改竄、深夜の右手の上下運動。勿の論、、佳音が自室に戻ったのを確認し、襖戸にはつっかい棒を施してから、オイッチニーサンシー!


 枕元のティッシュが無くなってしまった。必要以上に消費して親の興味を引いてしまってはまずい。まずは、補給路を確保しないと。でも、特売のティッシュ6個入りを買っているのを近所のババア共に見られた日には…、さあどうしようか。

 

 しかし、月曜日の朝日は、黄色い。

 

 俺が通うのは、そこそこ名の知れた男子校。一応進学校だけど、通っている奴らの頭の中は、進学の事じゃなくて、あっちの事でいっぱいだ。そんなむさ苦しくてイカ臭い黒い軍団に揉まれながら、古い校舎に吸い込まれていく。

 ああ、せめて共学なら、潤いもあってもっと芳しい(昨日のシャンプーの匂いみたいな)素敵な登校になったものを。

 大体、教師も男しかいないなんて!

 本気で潤いが無い高校生活って、それでマトモな情操教育ができるのか?

 唯一の女性が食堂のおばあちゃん達って、ノーカウントじゃないか!

 ここに居る殆どの軍団が、きっと俺と同じように黄色い朝日を恨めしく思っているんだろうな。右も左も俺と同じ顔をしている。

 それなのに、麗らかな天候が、昨夜の俺の悪行(?)にスポットライトが当てる。俺がなんだか汚いモンスターになった気分だ。罪悪感にのた打ち回りたい。こんな煩悩に塗れた汚れっちまった俺が、また週末に彼女と会って、それで正常でいられるだろうか??


 ノ―!無理!


「よー、リア充くーん、なに教室の前で、のた打ち回ってんの?キモイよっ」

 ギリギリと汚い便所スリッパ(上履きともいう)が、罪悪感で、のたうち回る俺を踏みつける。

「サドっ!」佐渡ヶ島類るい、通称サド。その背後にイインチョー達もいた。

 サドは、名は体を表すという通りに、生粋のサドだ。糸目に、薄い顔のおキツネ顔。実家が踊りの教室をしているそうで、特技は三味線。姿勢が良くて、立ち居振る舞いが美しい。特に指先の動きが綺麗とのはなしだ。確かに、動きに無駄が無くてスッとしていて、暑苦しい獣共の中では異彩を放っている。そのせいか、結構女子にもてている。

 だが、あまりのサドっぷりに、付き合う女性付き合う女性、みんながドン引いて長続きしないという強者だ。

 それはそうだろう。廊下で倒れているお友達の背中を、手加減無く踏みしめて笑っている姿を見たら、百年の恋も冷めるというものだ。

 今も、横たわる俺の肩甲骨の真ん中を、力強く踏みつけて、一向に足を外す気配が無い。ニヤニヤと、高みから実に楽しそうに笑っている。どこの魔王様ですかというお姿だ。地味に痛い。心と体が。

「よー、リア充くーん。昨日も彼女とデートですかぁ?」

 その背後には、ザコモンスターの嫉妬メンズ。イインチョーを筆頭にモテナイメンズの佐々木希望ささき のぞみ児島武士こじま たけしがニヤニヤと楽しそうに笑っている。

 この様子を見ると、イインチョーめ、チクったな。

「そうだよ。何お前らも、昨日は、佐渡ヶ島と一緒にエスエムクラブにデートでもしに行ったの?」

「バーカ、昨日は俺の家で、映画鑑賞会さ。」

 サドは、そう言うと、おまけとばかりに、俺を蹴りあげ仰向けにして、勢い良く体を引っ張り起こした。痛い。反動で、今度は、教室のドアにぶつかりそうになったじゃないか。

「うげっえっ!って、何それ、おれ聞いてない。傷つくなぁ。」

「ふざけんな、彼女持ちのリア充には参加の権利は無いっ!」

 イインチョーは、眼鏡を右手の中指上げて、高らかに宣言しましたよ。

 何、その毅然とした態度?

 正義は我が手にって感じだよね?

 じゃあ、俺って悪なの?そうなの?

 彼女居るだけで、そんなに態度を変えなくてもいいいよね?

 大体、リア充のサドはどうなるの?

 可笑しく無い?

「彼女の居ない俺達に、俺の兄貴から素敵な差し入れがあったんだ。だから、彼女の居るお前には参加の権利は無いっ!」

 そういうと、更に嬉しそうに高笑いをするイインチョー。なんか、安い悪役っぽいぞ、その笑い。教室に入るクラスメイトから、冷やかな憐れみを送られている事に気付いていない。佐々木と児島が、一歩下がっているぞ。サドは、我関せずとニヤニヤ笑っている。

 イインチョーの兄貴は、プログラマーをやっている。仕事が忙しすぎて過労死一歩手前で、リアルの時間が無いので、リアルな彼女はいないそうだ。その替わりにDVDの蒐集を趣味としている。なんでも、新車がポンと変えるほど注ぎ込んでいるそうだ。でも、そのお金と時間あれば、彼女とかできそうに思うんだけど。

「えー、でもさ、勉強になると思うし、俺も見たいなー。ねえ、まだそのお宝あるんでしょ。貸してよ。」

「駄目だっ」「貸してよ~。」俺とイインチョーの押し問答は、予鈴のチャイムがなるまで続いて、痺れを切らしたサドが、自宅にまだあるから放課後に来ればいいという話しになった。

 イインチョーはまだ不服そうだったが、イインチョーもついてくることになって、それならばと佐々木と児島も行く事になった。

 なんだ、皆見たいんじゃん。


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