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22.女子高生3

 俺に、カミングアウトした事で、すっきりしたのだろう。佐々木は、再度ペンを手に持って、俺の顔に化粧を施していく。

「僕が女装に目覚めたのって、結構小さい頃なんだ。僕の家って、4人姉妹で、上3人が女で、年が離れて遅くに俺が生まれたんだ。だからまあ、可愛がられたけど、上3人のお姉達にとって俺って玩具みたいな感じでさ。可愛いからって、自分のお古を着せたりして、着せ替え人形みたいに扱われたんだ。だからまあ、女装自体に抵抗は無くてさ…。」

 佐々木は、なんだか色々溜まっていたんだろう。俺の化粧をしながらも、熱に浮かされうように、自分の事を喋りだした。俺が知っている大人しくて引っ込み思案な佐々木じゃなくて、興奮したように今まで思いを上手く言えずにいた分を吐き出すように喋っていく。

「でも、小学校に上がって、周りから変だって言われて、僕もお姉達にお願いしてそういう格好をしなくなったんだ。でも、学校で嫌な事があった時や、弱虫とか、僕って体が小さくてよく女子からも苛められたんだけど、そういう時に、自分の家に帰って、押入れに隠れて、お姉達の服を着るとなんだか少し癒されてさ。そんな事をずっと隠れてしてたんだけどさ、小6の時に出し物があって、僕、シンデレラの義理の姉役になったんだ。多分、からかって皆が票を入れたんだと思うんだけどさ、その時に、好きだった子が、シンデレラ役で、一緒に舞台に上がったんだ。で、その子が緊張して、セリフを忘れて泣き出したんだ。僕は、傍にいたから、すぐにわかって、覚えているのだけ、セリフを教えてあげたんだ。その後、舞台が終わってから、その子に舞台の下の暗い場所に引っ張っていかれて、お礼だって言われて、そこで初めてキスしたんだ。その子も僕の事好きだっていってさ。彼女、僕を見て、とっても可愛いって頬を赤くして褒めてくれてさ。その時、彼女の後ろに置いてあった鏡にの中に、可愛い女の子が二人でキスをしていて、それを見た瞬間に、僕は、全身にイナズマが走ったように、体の中心が震えたんだ。よくわからない気持ちよさって言うのかな、そのキスが終わって、彼女が立ち去った後に、僕、初めてパンツを汚していたんだよね。えへ。」

「……」

「今思えば、女装している僕と可愛い女の子がキスしているっていうシチュエーションに興奮したんだと思う。と、言う事で、まあ、それをきっかけに、僕は女装をすることで興奮までしてしまうようになった訳です。」

 化粧は、終わったのだろう。佐々木は、化粧の用具の入った箱をパタンと閉じた、そして、別の紙袋をガサガサと漁りだした。

「そ、それで?」

「ちょっと待って。このウィッグでいいかな。」

 佐々木は、鬘を取り出すと俺の頭に付けていく。偽物の髪が顔にあたって、気持ち悪い。

「その女の子とはどうなったんだよ。」

「別に、少しだけ付き合ったけど、中学は別れたからそのまま、自然消滅。僕は、女装を本格的に始めたんだ。はい、できあがり!」

 自分の出来に満足といった、晴れやかな笑顔で、最後に佐々木は自分語りを締めくくった。

 よく理解できない。

 綺麗な初恋物語にみえたファーストキスは、佐々木の性的倒錯の開始の合図だったのか。


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