Part3:孝の記憶と明日実の記憶
そろそろフィクション全開になってきたかも? 自分の記憶すら結構あいまいな作者だったり……でもまあ10年以上昔のことなのでご容赦願います。
孝の記憶にある限り、明日実と初めて会ったのは高校の入学式直後の事だ。
この松林高校の入試の際に成績がトップだった孝は新入生代表挨拶をやらされることになり、入学式で壇上に上がり、簡単ではあるがお決まりともいえる文を読み上げた。
そして式の終了直後に事件(?)は起きた。
各クラスの教室に入ってクラスメイトになった人たちと話をしていたとき、突然教室のドアが開いたかと思うと、一人の女子が突入してきて、孝の前に来てこう告げた。
「八坂孝くん、やっと見つけた……私と結婚を前提に付き合ってください!」
この言葉を言われた直後、孝は一瞬何が起きたのかわからなかった。とりあえず周りを見てみると、教室内にいたクラスメート全てが孝と同じような状態だった。
「あ、あの、キミはいったい誰なんだ?」
孝はそういうのがやっとだった。
「孝くん、私のこと忘れちゃったの?古川明日実よ」
明日実は遅ればせながら自己紹介する。
「古川……? 忘れたも何もそんな名前の女の子の知り合いはオレにはいないぜ」
孝は過去の記憶をほじくりかえしても目の前の女の子に見覚えは無かった。
「だったら今からでも覚えて♪ それで、返事を聞かせて欲しいな?」
明日実はそういうと、孝に返事を迫った。
「え、えーと……すまん、まったくシャレになってな〜〜い!!」
孝はイスを引いて立ち上がると、脱兎のごとく教室から逃げ出した。
「あっ……待ってよ、孝く〜ん……」
この日この時から孝と明日実の終わりなき鬼ごっこが始まったのである。
だが、明日実は9年も前に出会ってるのだと言い張った。
「あの日にも言ったはずだが、オレは9年前に明日実と会った記憶なんてない。それでも話は聞こうじゃないか」
孝もまた強硬にそう主張する。
「私は9年前にこの松林市に引っ越してきたの。小学校に転入してもなかなか友達ができなくて、いっつも一人だったわ。それどころかある日を境にいじめられるようにさえなっていたの。それで、小学校1年生の秋ごろ、その日も私はいじめられていたわ。でもその日は特にひどくて階段の上から突き落とされたの。転げ落ちることなくそのまま一気に落ちたところにたまたま一人の男の子が通りかかって受け止める……ことまではできなかったけど自分の身体を下敷きにして私を助けてくれたわ。あの日名前を聞いたあの男の子があなただったってわけなのよ、孝くん」
明日実は9年前に孝と出会った日のことを詳細に話した。
「うーん……そんなことあったかなぁ? 小学1年の秋のことだろ? しかも仮にそれがオレだったとして、その程度でオレを追いかけるきっかけになるものなのか?」
孝はなかなか思い出せないのか、悩んでいる。
「まぁ、9年も前の話だもんね。でも今話したことは事実だよ。がんばって思い出して。入学式の日は返事を早く聞きたいって言ったけど、今はもう焦らないよ。思い出せたらそれを考えた上で返事を聞かせてね」
明日実は孝にそういうと、「それじゃ、また来週ね」といって帰っていった。
果たしてどっちの記憶が真実なのか?まだまだ波乱の起こりそうな次回はどうなる!?




