君を守るよ
エコバッグに買ったものを詰めながら
買い忘れはないかなと考える。
大丈夫これなら、作れる。
野菜も入れてバランスよくして食べてもらおう。
苦手野菜も少しならいいよね。
首に巻いたマフラーがはらりと解けた。
その瞬間、冷んやりした空気を感じた。
どうやら汗をかいていたらしい。
そういえば今日はスーパーの冷房で凍えなかった。
これから会えるのが嬉しすぎて
浮かれているから、のぼせたのかなと
思いながら、そこそこ重たいエコバッグを
持ってスーパーを出た。
今日は久しぶりに会えるし、料理も作れそうだ。
預けてくれた鍵を久しぶりに使うのが
とても嬉しい。
外のひんやりした冬の空気が心地よく
彼の家に向かった。
これでよし。
前倒しでやっておいたことが功を奏して
今日は問題なく帰れそうだ。
あと20分で定時。
後は月曜の段取りだけしておこう。
ファイルに保存した会社資料を開いたところだった。
笹田さん、すみません
振り向くと後輩が神妙な顔付きでパソコンを持っていた。
どうした、顔色良くないけど
間違えて保存データ削除したみたいで
これがないと他のデータが作れなくて
どれ、見してみ
見せられたファイルを見ると、ざっくり削除されていた。
真面目な後輩の震える声で説明を受ける。
とりあえず、落ち着かせて状況把握からだな
ゆっくり話して、大丈夫だから
一緒に考えるから
はい、すみません
テーブルに箸とサラダとグラスを置いて
とりあえず椅子に座ってみた。
好物の豚汁、味付けどうかな。
こんな日に限って鼻詰まりで匂いも味も
感じなかった。
少し味噌が多かったかな。
時計をみると、約束の時間より1時間すぎ。
トラブル対応したけど、もう電車乗ったと
30分前に連絡があった。
あと30分くらいで帰ってくるはず。
気合いを入れたせいか、気持ちがゆるんで
眠気がやってきた。
奥のソファ移動して仮眠しよう。
駅最寄り駅に着いてスマホを見た。
残業確定の連絡した後のお疲れと了解のスタンプ以降
連絡なし。
3週間ぶりに会えるのに
何で今日なんだ
走ったら5分くらいか
後輩の削除したデータは無事復元できた。
本来ならこの機会に後輩に復元操作を教えるが
明日に教えると言い残し、猛然と片付け出てきた。
マンションのドアを開けると
料理の匂いに包まれた。
葉月、ごめん!
遅くなった!
急いでリビングへ入ると
整えれた食卓をが目に入るが葉月がいない。
葉月?
名前を呼ばれた気がして
ソファから身を起こした
あ、アキくん帰ってきたかな
おかえりって言わなきゃ
寝る前より体が重く感じる。
腕に力を入れて立ち上がった。
目の前には
肩で息をして、ボサボサ髪の明久がいた。
葉月、寝てた?ごめん
遅くなって
寒かっただろうに、頬と鼻が赤い。
おかえり、うたた寝してたよ
仕事大変だったね
温めるから5分待ってね
悪かった、待たせて
いいよ、急な仕事もあるのはわかるし。
コートと鞄置いてきて
ほら、出来たよ
見れば明久の好物ばかりで
待たせてことを更に申し訳なく思った。
コートと鞄とジャケットを自室に放り込んで
リビングへ戻った。
帰ってきた時は気づかなかったが
部屋の中は結構冷えている。
カーディガンは着ておくか
ぼーっとして照り焼きを少し焦がしてしまったこと
以外は大丈夫だと思う
久しぶりだから目を見て話せないよ
緊張する
あの、照り焼きのこげたところは
食べなくていいから
そう言ったけれど明久は全部平らげた。
今日のトラブルのこと、通ってるジムの話
3週間分の明久はを知れて嬉しかった。
片付けは俺がするよと言って
キッチンで洗い物をし始めた。
今日は大人しいな
いつもならもっとしゃべってるはずなのに
水切りカゴに最後の皿を置いて
テーブルで紅茶を飲んでいる葉月を見た。
すると、帰る身支度を始めたので慌てて声をかける。
え、帰るの?泊まってけば
もう遅いだろ
まさかの行動に狼狽える。
やっぱり怒ってるのか
うん、今日は帰るね
明日は実家に帰る用が出来ちゃって
急にごめんね
私、コートどこに置いたかな
えーと
ちょっと待って
こっち、見て
やっぱり
荷物を葉月から預かり
手を引いてソファに座らせる。
熱は?
測った?
鞄が見つからないまま
ソファに座らされて
質問されている。
自分がよくわからない状態なことはわかった。
熱?
多分あるはず。
測ってはないけど、明くんにうつす前に
帰らないと、迷惑かかる
迷惑とかないから
思考を読まれたことに驚いて
明久を見た。
とにかく今日は帰らないで泊まって
感染が気になるなら、リビングに布団用意するから
あっという間に部屋着と布団が用意され
寝かされた。
ごめんね
久しぶりに会えたのに
ご飯もイマイチで
本当に
もっと早く気づけたらよかったのに
俺もごめん
気を使わせたから
ご飯、美味しく作れなくてごめんね
久しぶりに会うから明久の好きなものを
たくさん作りたかった。
明日は2人で出かける予定だったのに
ごめんね
どうやら眠れたようだ。
微かな寝息が聞こえる。
そっと覗き込む。
熱のせいか頬が赤い。
息苦しくはなさそうで、すこしホッとした。
冷えた部屋で薄着で寝ていた時点で
気づくべきだった。
料理も
話している会話も
どこか違和感を感じていたのに。
我慢強くて
頼ることが苦手な性格なのも
知っているのに。
ごめん
家に帰していたら
1人で何も言わずに寝込んでいたんだろうと
思うと背筋が凍った。
まぶたに被さった前髪をそっと寄せる。
頼ってよ
お願いだから
君を守るよ
守らせて
守りたい
ずっとだ




