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貴方のように……。

王城の楽の音が、氷の入ったグラスみたいに涼しく揺れていた。

パーティーのあいだ、ボクはほとんどイヴァン兄様のそばを離れなかった。


「ルキウスは、どんな魔法適性を授かるのかな。僕も楽しみだよ」


兄様は微笑む。薄い色の瞳が、灯りを受けて柔らかい。


「確か……イヴァン兄様は三つ、でしたよね」


「あぁ。有難いことに“水”と“土”、それと“光”を頂いているよ」


この世界の属性は七つ――火・水・土・風・雷、そして稀少な光と闇。

人間に“闇”が宿る例は滅多にない。逆に“光”は、敬虔な者に芽生えやすい……と昔話みたいに語られるけれど、結局は先天の才らしい。光は呪い祓いや解毒、癒やしに長ける。


「僕のはね、戦に立つには向かないんだ。リンハルト兄上のように国を守るには、火や雷の強い適性が頼もしい。……僕は、そういうのは性格的にも無理そうだし」


兄様は冗談めかして肩をすくめる。

ボクは、その手の温度を知っている。


「ボクは……兄様みたいに、誰かを守れる適性が欲しいです」


言った瞬間、頭に大きな掌がのった。


「ありがとう、ルキウス」


撫でる手つきは、本のページをめくるみたいに丁寧で、心がぽっと温かくなる。


やがて終宴の合図の鐘が短く鳴り、兄様が名残惜しそうに立ち上がった。


「そろそろお開きだ。ルキウス、最後の挨拶もしっかりやるんだぞ」


ボクの肩に置かれた手が、そっと力をくれる。兄様はエドガーに向き直った。


「ルキウスのこと、よろしく頼むよ、エドガー」


「畏まりました、イヴァン様」


兄様が列へ戻っていく背中に深く頭を下げ、ボクは小声でエドに訊いた。


「エド……ボク、イヴァン兄様みたいになれるかな」


「ルキウス様はイヴァン様の弟君です。きっと、なれます」


即答だった。その確かさに、胸の奥が少しだけ軽くなる。


「……うん。じゃあ、“最後の仕事”してくる」


赤い絨毯へ一歩。背筋をのばし、顎を引く。

父上と来賓、兄姉たちの視線を正面から受け止める。


「本日は、私のためにお集まりいただき、ありがとうございました。未だ幼き身ではございますが、来たる適性の刻に恥じぬよう、日々励みます。皆さまの御健勝をお祈り申し上げます」


礼を終えると、楽の音がふたたび満ちた。

横目に、兄様が小さく親指を立てる。エドが見えない位置で頷く。


五歳の誕生日は、こうして終わる。

次に城へ来るとき、ボクの属性は決まっている。

――誰かを守れる力でありますように。胸の内で、そっと祈った。



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