アルくんの話5(……友達かよ、)
アルくんは一区切りつけるように、十字架で画面のさらに下をトンと示した。
そこには新しい文字が浮かんでいた。
> 『災厄の試練』
前世の666人殺しの償いとして、今世で6666の善行と6666人の人助けを行うこと。
今世で達成できなかった場合、魂は永遠の消滅を迎える。
……息が詰まった。
読み上げられるたびに、胸の奥がぎゅうと締め付けられ、吐き気すら込み上げてくる。
「ボク……無理だよ、こんなの……」
弱音を吐いた瞬間――
ガンッ!
アルくんの十字架が石床を叩いた。
鋭い音と共に、金の瞳が突き刺さる。
「ふざけるな!」
その声に、はっきりと怒気が宿っていた。ボクの体がびくりと震える。
「なら辞めるか? 今世を? 別に構わないぞ」
冷たい視線。突き放すような声音。必死に首を振った。
「や、辞めない……!」
「甘えるな!」
再び十字架が床を鳴らす。石に響いた音が、胸の奥で何度も反響する。
「お前の前世の罪から逃げるな。償えることを理解しろ。本来なら魂の消滅もあり得たんだ。今あるのは“チャンス”だと思え!」
アルくんは荒く息を吐き、怒気を押さえ込むように大きなため息をついた。
金の瞳の色が、ほんの少し柔らぐ。
「罪を意識したまま生きろとは言わねぇ。人生すべてを償いのために捧げろとも言わねぇ。ただ――努力と幸せの果てに、この試練を乗り越えろ。それこそが“意味”なんだ」
十字架を下ろし、ふっと笑った。
「……次はサービスだな」
画面に新しい文が浮かぶ。
> 『善行の祝福』
善行と人助けを1つ果たすごとに1ポイントを獲得できる。
そのポイントはステータスに自由に振り分けることができる。
「意味わかるか? これは、お前が善行を積むことでパラメータを上げられる救済措置だ」
「……じゃあアルくん、これで魔法の素養を上げることはできないの?」
小さく問いかけると、アルくんは苦い顔をして、ゆっくり首を振った。
「元々持ってねぇ素養は、上げられない。……済まない」
落ちた声に、ボクはほんの少し胸が痛んだ。けれど次に顔を上げて言った。
「でも、これも努力次第なんだよね?」
アルくんはにやりと笑い、十字架を背に回すと、素手でボクの頭をやさしく撫でた。
「あぁ。そういうことだ。見せてみろよ、ルキウス。努力するお前を、俺様は全部見てるからな」
その手の温かさに、ボクの胸は少し軽くなった。
重すぎる試練でも、アルくんが見ていてくれるなら――歩いていける気がした。




