アルくんの話3(………、)
透明な板に、細い文字が並ぶ。
アルくんが十字架の先で下段を示した。剣、短剣、盾――その右に小さく「Lv1」。
「これはな、ルキウス。お前が今まで触ってきた“道具”の熟練度だ。使えば使うほど上がる。単純だが、嘘はつかねぇ」
うん、と頷いてから、ボクはさらに視線を落とした。
その下、魔法の欄。火・水・土・風・雷・光・闇――
すべてに、斜線の×が引かれていた。
喉が、からん、と鳴る。
横目に見たアルくんが、ほんの少しだけ気まずそうに視線を外した。
「……すまない、ルキウス。お前には“魔法の適性”が無い。転生を優先したせいで、そこまで手が回らなかった」
画面の×が、胸の中心まで冷たく突き刺さる。
イヴァン兄様のあたたかな“光”を思い出す。毒を祓い、痛みを和らげる掌――ああいう魔法は、ボクには届かないのか。
指先が、半透明の板をそっと撫でた。
がっかりしている顔を、アルくんにだけは見せたくなくて、俯いたまま言葉を選ぶ。
「……大丈夫。ボク、魔法が使えなくても、やる。自分の手で、守れるように、努力する」
沈黙が一つ、落ちたあと――
アルくんが、笑った。子どもみたいな、でも神様の目で。
「あぁ。そのためにお前を転生させた。数字が無くても、道はある。使えるものを全部使って、俺様に“努力”を見せてみろ」
大きな十字架の先じゃなく、素手の掌が、そっと頭に置かれた。
ぽん、と一度。
それだけで、胸の冷たさが少し溶ける。
ボクは顔を上げて、もう一度、剣・短剣・盾の「Lv1」を見た。
×印の並ぶ下で、たしかにそこだけが灯っている。
「うん。ボク、剣も短剣も盾も、Lv1からちゃんと上げていく。誰かを守れる“やり方”を、魔法の代わりに覚えるよ」
「よし」
十字架が小さく鳴る。
頭に残る温度と、胸の奥に置かれた約束だけだった。




