アルくんの話2(お前わざとだろ……、)
アルマ様が急に声のトーンを変え、真面目な顔で言った。
「次に最も重要な部分だ。ここ、HP――体力と言ってもいい。これが0になったら死ぬからな」
言葉だけ聞けば、五歳の耳には重すぎる。だがアルマ様は淡々と続ける。説明口調にわずかの苛立ちが混じるのが、どこか人間味があって怖い。
「血を流しすぎたらHPは減る。流血状態ならガンガン減る。風邪でもHPは減る。とにかくHPが0になったら死ぬ。人間ってのは、案外簡単に死ぬんだ。忘れるなよ、ルキウス」
「もう、何回も“死ぬ”って言わないでよ、アルくん……」
ボクは顔をしかめ、小さく文句を言う。五歳の声はひょろりと頼りないが、心臓はぎゅっと縮む。
「大事なことだから何回も言ってんだよ」
アルマ様は十字架の先で軽くコンコンとボクの額を叩く。子どもらしい仕草が、むしろ恐ろしさを際立たせる。けれどその表情に嘘はない。彼は冗談めかしているが、本気で言っているのだ。
「次にMP、マジックパワーだ。マナポイントでもいい。簡単に言えば、魔法や技巧を使うための力のことだ。MPが0になってもすぐには死なない、だが気絶する。気絶して敵やモンスターに襲われれば、それは死に直結するだろう」
アルマ様の声が低くなる。教会の石壁に反響して、言葉がふたつに割れて戻ってくる。
「身の丈に合わないことをして、大きすぎる力を使って死ぬやつもいる。ルキウス、ゆめゆめ忘れるなよ。簡単に死なれたら、転生させた意味がないからな」
その言葉に、ボクは肩をすくめる。怖い。でも、どこかで腑に落ちるものがあった。前世で散々“命”を軽んじてきた自分が、ここでは命を守らねばならない。守るためのルールが、こうして目の前に示される。
「分かった。ボク、ちゃんと気をつけるよ」
口にすると、アルマ様はにやりと笑い、十字架をひょいと縮めてまた頭をぽんと叩いた。
「よし。覚えておけ。数値は平凡でも、その数値でどう生きるかがお前の全てだ。」




