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アルくんの話(アルマ様な………、)

アルマ様がにやりと笑った。手にした十字架が、夕焼けを切り取るように光を反射する。


「ルキウス、ちょっと大事な話があるんだ。言ってみろ──『ステータス・オーブン』」


からかうように命じられて、ボクは素直に口に出した。


「ステータス・オーブン」


その言葉に、空気がふわりと震えた。目の前に、半透明の画面がぷつりと現れる。前世で言えばテレビのようなもので、ガラスに書かれた文字みたいにボクの名前と数字が浮かんだ。光は淡く、でも確かにそこに存在する。


アルマ様は右手の十字架を、ふん、と軽く縮めてからボクの名前の上に指を差した。(十字架の大きさが変えられるなんて、妙なところで感心してしまった自分に苦笑する。)次の瞬間、十字架の先でボクの頭をコンコンと突かれ、頬がぴくりと跳ねる。


「おい、聞いてんのか? 大事な話してんだからちゃんと聞けよ」


「……やめてよ、アルくん」


頬を膨らませて抵抗すると、アルマ様は腕を組み、ちょっと年の近い兄のような顔をした。それだけで、胸の奥がふわりと温かくなるのを感じる自分がいた。


「よし。で、お前のステータスは──至って普通だ」


画面の数字がちらりと震える。チートもスキルも、特別なボーナスもない。平凡な数値が淡々と並んでいる。


「覚えてるかは知らねぇけどな、オレはお前にチートなんて与えねぇ。漫画や小説みたいな“俺最強”展開はねぇから、分かってるな?」


言葉は軽いが、目には真剣さがあった。空の色が教会の窓から差し込んで、十字架の金が細くまたたく。


「大事なことだから、今から言うことをちゃんと覚えておけ。ここでも前世みたいに戦争は起きる。魔物だって出る。『モンスター』って呼ばれる化け物だ。そいつらに遭えば、前世よりずっとあっさり死ぬ可能性だってある」


胸の底がきゅっとなる。アルマ様の言葉は、冗談の皮を一枚剥いだら鋭い現実になって突き刺さる。


「だから──ちゃんと努力しろ。生きるために生きる努力をしろ。自分で自分の大切なものを守れるようになる努力をしろ。友も、仲間も、家族も、――そのために手を伸ばせ」


アルマ様の声には、押し付けるのでもなく、突き放すのでもなく、どこか温度がある。子どものような軽口の影に、揺るがない意志が隠れていた。


ボクは半透明の画面をじっと見つめる。数値は変わらない。けれど、数字の隣で揺れる言葉の方が、ずっと重い。


「――わかった。ボク、努力する。自分の大切なものを守れるようにする」


口にした瞬間、アルマ様がにやりと笑って十字架をひょいと縮め、またボクの頭をぽんと軽く叩いた。


「よし、その意気だ。だが忘れるなよ。お前の行動、全部見てるからな。サボったら、容赦しねぇぞ?」


からかいながらも、本気で釘を刺される。ボクは小さくうなずいた。教会の光が、十字架の影を床に落とす。ステータスは平凡でも、歩き出すのはボク自身だ。


外の風が窓を揺らし、石の床に光と影の模様を描く。五歳の小さな胸の中で、決意が静かに膨らんでいった。



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