4.戦い
リアルの関係で更新が一日飛んでしまいました。
本当に申し訳ないです。
青い空、久しぶりに見たかもしれない。
空は平和だ。曇りでも雨でもどんな顔をしていても必ずその奥には美しい青色が広がっている。
今日も平和……なわけがない。
足元を見ればあるのは凄惨な光景。
踏みしめる足場の周りはコンクリートや何かもわからない金属が溶け出した液体がドロリと流れている。そして、元は人間だったと思われる骨の欠片や肉片が散らばっている。
俺が人間なら四回は吐いているだろう。
そして、その元凶はまさしく空に浮いていた。
―人の命をなんだと思っているんだ?
そして俺は見覚えのあるロボの残骸を見つける。
―俺って飛べるか?
〈私に対しての質問だね。その足を横に流れてる液体に浸けなければいけるよ。足の裏を見なよ。〉
やっぱり、思った通りだ。足の裏には噴気孔と思われる穴が大小無数に取り付けられていた。
―でも、これどうやって使うんだ?
ぴょんぴょん飛びながら浮かないか試す。
〈飛ぼうと思えば飛べるよ。〉
―言ってる意味がわからない。そもそもだけどこの体ってどうやって動いているんだ?
〈超完結に言うと、君の魂から直接命令を与えている。〉
―わからん、できると思えばできるんだな。
〈そういう解釈でいいよ。〉
足に意識を集中する。
―飛べる飛べる飛べる飛べる飛べる!
シュウゥゥ…………
足の裏から青い炎が噴き出す。
足が地上から離れ、体が浮く。
そこで、赤色のロボ(仮称:赤)もこちらに気づいたようで、こちらを見下ろしてきている。
ヒュウン!
―速っや!
一瞬で赤の前まで飛ぶ。拳を固め、大きく振りかぶる。
ガギィン!
装甲がぶつかり合う。
「熱っつ…!」
一旦距離を離す。手をよく見ると、装甲が少し溶けている。
その瞬間、赤が少し笑ったように俺には見えた。
赤は恐ろしい速度でこちらに向かって飛んできた。
「はぁぁぁぁああああ!」
拳と拳がぶつかる。
ジュワッ
こちらの拳が溶ける。
赤の方をよく見ると、熱で周りの景色が歪んで見える。
また突進……避ける。
―このままじゃジリ貧だな。この拳、どうやったら治せる?あぶねっ。
間一髪で攻撃を避ける。かすった部分が溶ける。
「『思考加速』!」
目に映る景色がゆっくりになる。
赤がゆっくり振り返り、またこちらを向く。
だが、この速度なら反応は容易い。
突き出される拳のルートを読んで横に回避。
〈『壊創能力』の扱い方だね。今回は装甲だけで内部には損傷がないから楽だと思う。〉
―で、どうしたらいい?
またも攻撃が来るが、ゆっくりと躱す。
〈まずは吸収したい範囲のイメージをする。そして、生成したい範囲をイメージする。そうすればできるよ。〉
―範囲のイメージ……?
なかなかに難しい。
〈例えばだけどマッチの箱一つの大きさはなんとなく想像ができるだろう。それと同じだ。〉
手を前にかざす。
「『壊創能力』!」
頭の中に入ってくる膨大な情報。
―あ、え?これもしかして取り込んだ原子全部の情報入ってくる?空気ちょっと取り込んだだけなのに。
一瞬『思考加速』が止まるほどの衝撃。だが、見えていたので余裕を持って赤の攻撃を避けられた。
〈よし、じゃあ溶けた部分を取り込んで元の形に戻してみて。〉
「よし、『壊創能力』」
溶けていた部分が何事もなかったかのように元に戻る。
これを見た赤の追撃が激しくなる。
〈ただ、範囲によって消費するエネルギーも違うから。〉
―は?エネルギーって?
〈マジか。ゲージが視界の右端にあるはずだ。〉
―おお、ある。半分くらい減ってる。
シュウゥゥ
炎の塊が飛んでくる…回避。
そして回避先に本体。接触ギリギリで蹴り上げるが、足の装甲が溶ける。『壊創能力』
―危ない危ない。ただ、このままだとジリ貧だな。
エネルギーも能力を使うたびに消費するし、大きな損害を受ければそれで負ける可能性だってある。
つまり、こいつと俺、というかロボ全般は圧倒的に相性が悪いのだ。
―さて、どうするか。近距離で戦えば溶かされる、遠距離はあの熱の塊が飛んでくる。こちらは攻撃手段が拳しかないと。勝てるのか?そして、『思考加速』地味にエネルギーを食う。
距離を離そうとするが、すぐに熱の塊が飛んできて包囲してくる。
『思考加速』で時間を引き伸ばし、一発ずつ対処していく。後ろから赤が近づいて来ているのはわかるが、まずはこれをどうにかしてからだ。
一発目、斜め上から降ってくる。体を横に移動し、回避。
二発目、真横から。一発目で包囲が崩れた場所に入り込み、回避。
三、四、五、六残り全て発射。全て一直線に俺に向かってくるが、当たるギリギリで回避。お互いにあたり、全て消える。
そしてそこまでの回避を読んだかのような赤の攻撃。回避方向からの横蹴り。避けようがないので腕で受ける。溶ける、再生!
左手での掴み。かなりまずいので後ろに下がる。
熱の塊発射。横にスライド。少しかすった。再生!
そのまま一定の距離を保ったまま回避して再生する。『思考加速』はエネルギーを食うので対処しきれなくなったときのみ使用。
―ここまでやってくると、エネルギーの消費が激しいのと、攻撃手段がないのがかなりの痛手だな。
〈攻撃、防御両方は創意工夫でどうにかなるぞ。〉
―マジ?どうやるの?
熱の塊に左右を挟まれる、上に回避。
〈防御は能力使って壁を作ればいいだろ。攻撃の方も敵の頭上にブロックを出すなりして落として当てればいい。〉
―なるほど、それは確かに。
ここまででなんとなくわかった。
こいつの行動はかなりパターン化されている。
近距離なら近づいて熱でゴリ押し。
中距離なら熱の塊で足止めからの距離を詰める。
遠距離なら熱の塊でできるだけ気をそらし、距離を詰める機会を伺う。
普通にいやらしい作戦だ。
それなら…中距離に近づき、熱の塊を止めて近づいてきたところをブロック落としで叩けばいい。
少しは希望が持てて不思議と笑みが浮かぶ。
―よし、やるぞ。
遠距離でちまちま撃ってきている熱の塊を回避し、一気に中距離まで距離を縮める。
そして、予想通りに熱の塊で包囲してきた。
本題はここからだ。
ときどき見えていたが、この世界の文明、えげつないのだ。赤のおかげでクレーターのような物ができているが、周りを見ると、80階はありそうなビルが普通に建っている。しかも、さっきからの赤の攻撃で結構倒れそうになっていたりする。これを利用しない手はない。そして、もう避難したのか、この場所、人がいないのだ。
―後方、結構倒れそうなビル、ある。あとは…。
熱の塊が発射される。そして赤が近づいてくる。
熱の塊が刃のように鋭くなり、襲ってくる。ここで決めるつもりだ。
「ここだぁぁぁぁあああ!『壊創能力』!」
赤を包む箱を生成。もちろん材料は後ろのビルの適当な二から三階部分。
箱はそれだけの素材を使っただけあって、厚みもあり、強度も高い。中から叩く音が聞こえるが、もう無理だ。
後ろからビルの上半分が倒壊し、こちら側に落ちてくる。
俺は急いで脱出。あの状況なら赤を確実に巻き込める。
「いけぇぇぇぇぇえええ!!」
ビルが落ちていく箱に接触、そのまま地面に激突する。
ズドォォォォ…………ン
他にもガラスが割れ、管が砕け散る音がする。
流石にこれだけやったら倒せていてほしい。
だが、懸念点は、俺もこれだけ食らって死んでいなかった。つまり……
『太陽熱球』
この距離で声が聞こえるはずがない。なのにその声は鮮明に聞こえた。
〈逃げろ!急げ、早く!できるだけあいつから離れるんだ!〉
言われるがままに最大出力でその場から離れる。
直後、辺りを閃光が包み込む。
ゴォォォォォォ………
振り返り、目に映った光景に驚愕する。
倒れたビルも、周りの建物も、地面も全てが球体のような形に抉れ、その残骸が溶け出していた。
パチパチと木材だったものが爆ぜ、ドロリと金属が溶け、流れることで抉れの中心は溶岩湖のようになっていた。
そして空中に佇む赤色の影、
俺はやっと気づく。これは俺が地上に出たときに地底まで抉ったそれと同じだということに。
〈君の魂から直接命令を与えている。〉とは
魂に情報を入力し、魂から出力するということ。つまり、人間の場合は脳を介して魂に情報がいっていたが、その工程を機械が行っている。
現実でいうところのスピリットボックスの確実版みたいな感じです。
エネルギーというのも出てきたが、あれも電気とかではなく、魂のエネルギー、つまり精神力的なやつです。つまりやればできるを具現化できるんです。