表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

8.We are

 ここは惑星アスピア、プレイヤーラウンジ区に位置する超超高層施設、スカイベルタワーである。数千室を超える部屋は、どれも統一された装飾が施されており、中欧風の雰囲気は利用者を落ち着いた気分へと誘う。高層階の部屋は、豪勢な装飾のされた窓から見事な青空と惑星アスピアの首都セントソルが一望できる。見事なスカイオーシャンビューはまるで巨大なスクリーンのようで、利用者は空を歩いているような錯覚をするかもしれない。


 そんな部屋の一室で、イオとジロはホログラムを見ていた。

 ホログラムにはCOPSにおいての主な勢力図が表示されている。これは、ジロがイオにより深くCOPSを理解してもらうために作ってきたスライドであった。


「まず、COPSは主に4つの勢力がある。勿論、同じ勢力内のプレイヤー同士がすべて協力関係にあるわけではいということを留意してね。」


 ジロはホログラムに映るいくつかの星域を指差す。


「まず、ここらへんを勢力範囲にしているのが、COPS最大勢力、『秩序派』だね。秩序派はプレイヤー至上主義で、だいたい『平和と安定』のために国家を作ることを目標にしている。」

「国家ですか?ということは、プレイヤーギルドがいくつかの惑星を支配して国家を名乗っているんですかね?」

「いや、いくらプレイヤーのギルドといっても単体ギルドは最大100人まで。惑星一つを支配するのにはとても足りないよ。」


 イオの疑問にジロが答えると、ホログラムの映像が変わる。


「プレイヤーギルドが結託して、『ギルド連合』っていう協力体制を築くんだよ。だから、国家を名乗ってる奴らはだいたいギルド連合を組んでる連中だね。まあ、連邦政府、つまり運営に承認されている国家は、現時点で一つしかないんだけどね。」


運営から国家判定を貰うのは意外とシビアだと言うことがわかったところで、イオが続けて質問する。


「ちなみにそれはプレイヤーの国家なんですよね?」


 ジロはイオの質問に頷いて肯定した。


「『第一帝国』って呼ばれているギルド連合のみが、連邦と対等な国家として扱われている。それ以外の連中は『自称』国家だね。第一帝国は秩序派の親玉みたいな感じかな。」


 なるほど、と頷くと、ホロスクリーンは先程の画面に戻る。


「続いて、2つ目の勢力、『自由派』。こいつらはまあ、いわゆる『ヒーロー』プレイをしてる連中だね。秩序派は効率重視だからNPCの扱いが雑なんだけど、自由派は『正義の下の自由』みたいなスローガンを掲げてるから、NPCの扱いは比較的丁寧だと思う。連邦政府とも仲が良いのが特徴的だね。勢力範囲もこのあたりだし。あとは、内ゲバも少ないイメージかな。」

「それって、NPCと友好的になれる自由派とそうでない秩序派ではゲーム的に前者の方が有利なのでは?」


 イオの質問にジロは少しだけ考える素振りを見せる。


「たしかに、自由派みたいなプレイスタイルのほうがNPCを味方につけられる分、情報面で有利になるんだけど、秩序派のやり方はNPCを好き勝手に使えるから、生産面ではそっちのほうが有利なんだよ。だから、どっちがゲーム的に強いのかはわからないかな。」


 プレイスタイルによってゲーム内で有利な物事が変わるのがCOPSの特徴的なシステムである。多くのプレイヤーに多様的なプレイスタイルを促すことによって、飽きを感じるプレイヤーは少なる。これが、プレイヤーが増加している一因でもあった。


「それで、3つ目。これはまあ、勢力というまとまりはないんだけど、『個人派』と言われている。自由気ままにゲームしている人たちだね。変な人が多いイメージだけど、そこまで気にする必要はないかな。はい、個人派の説明おしまーい。」


 ぱちん、とジロは自身の漆黒の手を叩いて鳴らす。


「では、最後の勢力は…」


 イオの問いに、ふふふ、とジロは謎の笑みを浮かべる。イオはなんとなく嫌な予感がした。


「…そういえば、ジロはどこの勢力に属しているんですか…?」

「よく聞いてくれたね、イオ。最後に紹介する勢力こそ、我が陣営!」


 ホログラムの映像が変わる。そこには大きな文字で、こう書かれていた。


『無秩序派』


「私達の勢力は主に『無秩序派』または『無政府派』と呼ばれている。プレイスタイルは、金を貪り、命を奪い、すべてを破壊し混沌を生み出す!!ってかんじー。」

「えっ」


 イオの顔は変態三人衆に絡まれたときと同じくらい硬直した。


「ということは…」

「そう!」


 ジロは親指をまっすぐ立てた。


「悪役ロールプレイ、さ!」


 ジロの笑みは、闇の精霊にふさわしいものであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ