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6.お気持ち表明いただきました

 イオの進路を塞ぐように立ちふさがったのは、三人の男たちであった。


 見た目はそれぞれ、白いスーツを着ているのが一人、後は黒いジャケットを着ているモヒカンとマッシュヘアの変な色の服を着た男である。


 三人の男は、イオが乗るホバーボードの進路上に塞ぐ形で立つと、三人のうちの一人の白シャツがイオ向かってに話しか始めた。


「貴女、初心者ですよね?このホバーボード、レンタルが代結構高いのでモノレール使ったほうが良いですよ。」


 優男風の白シャツがそう言うと、後ろのモヒカンも続けて話し始める。


「えっと、実は、うちのギルド結構人足んなくて、勧誘ってイメージ悪いかも知んないスけど、いろんなこと教えてあげられると思うんで、どうですか。」


「?」


 突然絡まれてイオは困惑してしまったようである。

 イオが首を傾げていると、モヒカン男に変わりすっと前に出てくる影があった。


「説明しよう!ギルドとは!」


 モヒカン男の隣りにいるマッシュヘアが急に喋りだしたのだ。


「21人から100人のプレイヤーたちの集まりであり、一丸の目標に向かって情報や資源を共有しあい、協力できるシステムだ!ちなみに2人から4人は『パーティ』、5人から20人は『クラン』と呼ばれているぞ!また、ゲームシステム的には保証されていないものの、プレイヤー間で協定を結び、ギルド同士が手を組む『ギルド連合』なんて概念もあったりする!!」


 全くついていけないイオは、昨夜の夕食の際に言っていた仁の言葉を思い出した。


「あ、ネットの怖い人。」


 イオは思わずそう呟いた。

 こいつらどうしたものかと考えていると、白シャツが再び話し始める。


「あ、いまウチのギルド30人くらいなんですけど、女子は3人くらいいて結構楽しくやってるんですよね...で…」

「なあ、この子声めっちゃ可愛くね?」

「ですね、それ思ったです。」


 白シャツが話している間、モヒカンとキノコ頭がそんなことを話しているが、イオはどうにか対応を考えていた。


「あの」


 イオが話し始めると、三人は静まる。


「私のことを誘ったのは、私が女だからでしょうか?」


「「「えっ」」」


 イオの言葉に三人が固まる。「ギルドに女子が三人いる」のくだりから、もしかして彼らは自分たちのギルドに女性がもっとほしいから声をかけたのではないかと推測したのであった。


 イオは続けて話す。


「初心者の勧誘なら他を当たってください。ほら、また扉からたくさん人が出てきましたよ。」


 イオは広場の中心を指さした。イオの言う通り、広場には初心者が溢れかえっている。


「アドバイスは嬉しいですが、見ての通り今から行く場所があるので。失礼します。」


 イオはそのままホバーボードを三人が立つ方向から進路を少し変えて進めようとすると、また三人は進路に立って妨害した。


「ちょっと待ってほしい。えっと、君に声をかけたのは…さっきまでキョロキョロしてたというか、ほら!やっぱり効率的にゲームを進めるうえで何が大事かとか、共有したほうが…」


 白シャツがボソボソ話しているがもはやイオは聞いていなかった。


「お気遣い無用です。では…」


「実は!!!可愛いアバターの子がいるなって思って、気になって話しかけました!!」


 突然、キノコ頭は大声で叫んだ。


「おまっ何言って…」

「黙れ!!!!」


 モヒカンの静止を振り切りキノコは叫ぶ。


「貴女を見た瞬間、ビビッときたんです!!僕はこれまで数多のゲームをしてきたが、女ゲーマーは性格が悪かった!!相手にしてくれなかった!!!」

「全国の女性ゲーマーに謝れよ…」


 モヒカンのツッコミを横目にキノコは続ける。


「誰も相手にしてくれなかった!!!!!!!!!!!!!」


 号泣しながら前のめりな勢いで話されるので、イオは呆気にとられてしまった。


「...あの」

「はい!!」


 イオが口を開くと、息を荒くしたキノコは聞く姿勢に入った。

 イオは無表情であった。普段から感情が表情に出づらい彼女であったが、今は温度すら感じられない顔であった。


「いきなり行動を邪魔された上に、勢いで無理やり意味不明な話を聞かされるこちらの身にもなってください。そもそも顔も知らない相手に身内でしかわからないような話をされても分かりませんよ。あなたはこのゲーム内で出会いを求めているのですか?実際の顔も見たことないのにアバターの顔で判断しているんですか?というか、女性に好かれたいなら、まず行動を改めるべきです。しつこい上にうるさいですし印象最悪ですよ。あと、その、変な服を変な感じに着るのを辞めるべきです。」


 イオの口撃は止まらない。


「インターネットで見ず知らずの女性を誘う前に、まず現実で女性に向き合ったらどうですか?そちらのほうがより簡単で学びになると思いますよ。ゲームはあくまでゲームをする場所なので、出会い目的でされているのでしたらそれ専用の場所でするべきです。たしか、バーチャルマッチングアプリとかありますよね?インターネット上でどうしても女性とお話されたいのでしたら、そちらでされたらどうでしょうか?ここでされても迷惑ですよ。先程言われていたギルド内の女性にもこのようなふうに接しているのですか?だとしたら困っているかもしれません。可哀想です。かなり。」


 キノコは白目を向いている。


「いきなり男性三人で近づいて来られたのでびっくりしてしまいましたよ。勧誘するなら適切な場でしてくださいね。ん?なんですか、貴方から話しかけてきたのですから話を真面目に聞いてはどうですか。なぜ黙っているのですか?なんとか言ったらどうですか?」


 キノコは撃沈した。


「はは、そういえばソーカちゃん、昨日メッセ送ったのにまだ既読すらついてないや…」

「おう…」


 キノコはうずくまってしまった。


「もういいです。迷惑な行為を続けたら、そのうち運営に通報されますよ。では私は急ぐので。」


 イオはスッキリした顔で目的地へ向かうのであった。


イオちゃんレスバ強そうだね(侮蔑)

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