メカヲタ、軍隊を作る
修練場に着いた僕は大量に置かれた鉄鉱石や予備装備を確認した。
この国は国土の6割が山脈であり、当然鉄や銀、銅等の鉱石を採掘するのが盛んだった。稀にミスリルの様なレアメタルも採掘される事がある。
残念ながら寒冷地帯である為ボーキサイト等は手に入りそうもない。
もっと暖かい地域を早めに抑えてアルミニウム合金作成に漕ぎ着けたいものだ。
ある物で勝負するしかない以上、素材の基本となるのは鉄や銅、方鉛鉱、リン鉱石、錫石、タングステン鉱石等が手に入りそうだ。宝石類も色々取れそうだが、おいおい見て行こう。
ゴーレム作成における最大の課題は、単一素材での製作時に現れる欠点だった。金属単体では硬いが重い、軽いが脆いといった特性が避けられない。そこで考案したのが、新しい構造だ。まずゴーレムのフレームを作り、衝撃分散用のダイラタンシー液状層を全身に注入する。その容器として薄い銅の層を設け鋼でコーティングする。
その上からパーツ分割された外装を取り付けることにした。
外装の主材料は鋼鉄だが、十分な量が確保できればミスリル層、その上に炭化タングステン層を重ねたラミネート装甲とすることで、高い靱性、防刃性、対魔法効果を実現できると考えた。動力源は基本的に魔力だが、魔石をコアとしてメインフレームに組み込むことで、一種の蓄電池のような機能を持たせた。
試作品として、コストを度外視した3メートル級のゴーレムの製作に着手した。地属性魔法の形状変化能力が非常に有効で、脳内でイメージした形状を直接具現化できるので有用だ。素体と外装パーツを分離した構造により、私の趣味を反映した、まるでロボットのような外観が完成した。肘や膝などの急所となりやすい箇所には、予め素体レベルで装甲処理を施す事で防御性能の向上を目指す。
外装パーツ数は予想以上に多くなり、量産型では部品数を削減し、機動性を若干犠牲にした設計に修正する必要があるだろう。こうして完成したXナンバー01試作試験型ゴーレム「タイタン」には、外装に型式番号を刻印した。
最初に作ったストーンゴーレムと模擬戦を行ってみる。
周りでは騎士や兵士達が興味深く見守っている。そうだろう、そうだろう、例えロボが無い世界でも男の子の本能にはロボが眠っているものだ。(※個体差があります)
まずはストーンゴーレムに攻撃を、タイタンには防御を命じ、防御性能の検証を開始した。ストーンゴーレムが振るうグレートアックスがタイタンに襲いかかる!激しい金属音とともに、驚くべきことにグレートアックスのポール部分が変形した。武器を捨て、拳による直接攻撃に移行したストーンゴーレムだったが、今度は自身が砕け散る結果となった。観衆は興奮の渦に包まれている。
実験を終了し、ストーンゴーレムをインベントリに収納しながら、この成果の重要性を実感していた。このゴーレムは戦車さえも相手にできる性能を持っているかもしれない。目的は圧倒的な力の実現であり、その点では申し分ない結果だった。
詳細な損傷確認では、ストーンゴーレムの攻撃によってラミネート装甲のミスリル層にヒビが入っていることが判明した。衝撃がミスリルの靱性限界を超えたようだ。この知見を活かし、ミスリルをチップ状に加工する改良を施した。
対魔法性能の検証のため、メルフィーナを通じて最高級の魔道士—魔道士団副団長—を招聘した。タイタンに防御態勢を取らせ、魔法攻撃の試験を開始する。
最初に試されたのは、戦場で最も一般的なファイアボール。熱と衝撃を伴うグレネード的な呪文だが、予想通り無効化できた。2800度近い耐熱性を持つ炭化タングステンとミスリルのラミネート装甲は、対人用の火力では傷つかない。
続くサンダーボルト—通常は複数の敵を貫通する強力な雷撃—も完全に防御。ミスリルのチップ状加工が有効に機能していることが確認できた。一般的な魔法使いの攻撃は、この防御システムでほぼ無力化できることが明らかになった。
この結果を受けて、数日間かけてタイタンの下位互換機体「G-001 サイクロプス」の量産を実施。タイタンの5本指に対し、サイクロプスは3本指(親指、人差し指と中指の結合、薬指と小指の結合)に簡略化。外装も大まかな区画に再設計し、実用的な機動性を維持しつつ製造効率を向上させた。
装備として、機体スケールに合わせた大型メイスとタワーシールドを製作。タイタンには搭乗用キャリアを背部に設置し、ラミネート処理を施した大型シールドと試作の回転式メイス(これ自体が武器型ゴーレムで、内蔵の魔晶石により自動回転する)を装備させた。この成功を受けて、ドリル型武器の開発も視野に入れている。
最終的な生産数は、サイクロプス50機とタイタン1機。驚くべきことに、これらすべてに加えてサンドゴーレム2機までインベントリに収納可能だった。一般的なインベントリは荷馬車1台分程度が限界という中、これは他国には真似できない圧倒的なアドバンテージとなる。
一方で、遠距離兵器の開発は難航していた。大型ゴーレムと異なり、小型銃器の製作には極めて精密な加工技術と適切な鉱物の選定が必要だ。前世で使用していた素材と同等品の確保が困難で、代替材料の探索に苦心していた。この課題には、専門的な知識を持つ鍛冶職人の育成が不可欠だが、現地の職人たちには技術概念の理解さえ難しい状況だった。
そこで当面は、既存の遠距離攻撃武器の改良・開発に注力することにした。現用の150-200m射程のロングボウについて、鏃の金属変更などの改良案を検討したが、コストパフォーマンスの面で難がある。クロスボウの開発も選択肢として挙がったが、期待する戦果には不十分と判断。むしろ、豊富な石材を活用したストーンゴーレムの投石戦術の方が、現実的な解決策かもしれない。
そこで破損したストーンゴーレムを新たな姿で蘇らせることにした。今度は投擲に特化した設計だ。
下半身は安定性を重視して太く短く作り大地に固定出来る仕組みにし、腕は投擲時のしなりを最大限に活かせるよう長めに仕上げた。試験的に30-40センチメートル、重さ約1キログラムの石を投げさせてみると、その威力に僕自身が驚愕した。
放たれた石は恐ろしい勢いで空を切り裂き、おそらく500メートルは優に飛んでいただろう。人間に直撃すれば致命傷は免れないほどの破壊力だ。腰、肩、肘の三点による回転運動だけのシンプルな機構だが、これを砲台として見れば、驚異的なコストパフォーマンスの兵器となる。
弾薬となる石は至る所に転がっているため、補給の心配もない。さらに、射程圏内に敵を発見したら自動で攻撃を開始するよう設定すれば、完全な自動砲台として運用できる。
この可能性に心躍らせ、僕は山へ向かい、このストーンゴーレム型投石器を100機量産することにした。背中には昇降機能を付けたキャリアーを付け石が無くなるとキャリアーが自動で下がる仕組みを付けた。驚くべきことに、これらすべてがインベントリに収まってしまった。さらには、弾薬用の岩石も次々と砕いて収納していったが、何百トンもの重量があったはずの素材もいとも簡単に格納できてしまったのだ。
このインベントリの存在だけで、小規模な戦争なら勝利できるのではないかという考えが頭をよぎる。こうして、国の正規軍の編制に一切の変更を加えることなく、私直轄のゴーレム師団が誕生したのだった。
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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク