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メカヲタ、ゴーレムを作る

転生して2日目、目を覚ましてもやはりドラゴンのままだった。昨夜まで疎らだった羽毛が、一夜で真っ白な艶のある毛並みへと生え揃っていた。爬虫類かと思われた姿から一転、ふわもふな存在へと進化を遂げた気分だ。


メイドたちやメルフィーナの評判は上々で、特にメルフィーナは抱きしめたい衝動を必死に抑えてワナワナしていた。可愛らしさは嬉しいが、今日は契約の重要な日。気を引き締めて臨まなければならない。


朝食を済ませ王の元を訪れると、その反応はメルフィーナそっくりだった。親子の似通った性質を強く感じる。

契約の儀は大々的に執り行われ、国内外に広く知らしめられる予定だ。それはその情報自体が他国への抑止力となるため、僕が古代竜である事実も含めて情報として提供される事になる。


昨夜の決定を受け、午前中は各部署が慌ただしく準備に追われていた。

国内の至る所に早馬が走り、朝から様々な貴族たちが急いで集まってきている。儀式まで時間があったため、僕は昨日案内された騎士や兵士たちの訓練場へと足を運んでいた。現在の魔術能力を検証しておきたかったのだ。


最初に試したかったのは土属性の魔術だった。なんと言ってもゴーレムの作成を検証したかったからだ。

ゴーレムは魔法生物に類する人工生命体だが、デザイン次第でメカニックな存在になるんじゃないかと期待していたのだ。

ゴーレムには素材から作り上げるゴーレム作成と、異次元から呼び出すゴーレム召喚の二種類がある。将来的な戦力としてゴーレム部隊を用意したい僕としては、作成の方が有用だと判断している。


練習として、まずは貴重な素材は使わず、手近な石材でストーンゴーレムを作ることにした。設定なしでは単純な石材の積み重ねになるが、僕はディテールにこだわるタイプだ。集められた石材を魔法で粉砕し、鑑定魔法で成分を分析すると、地球の岩石と大差なく、主に珪酸塩鉱物で構成され、マグネシウムや鉄なども微量に含まれていた。


この材料を用いて人型に成型する。脆弱性を避けるため、やや不格好でもしっかりとした造形にした。高さ3メートル、重量約1.2トンのメカニックなゴーレムが完成した。ポールアックスとタワーシールドを装備させてみたが、武器が小さく見えた為、タワーシールドを左肩に埋め込んでショルダーシールドとした。

ポールアックスは大型のグレートアックスに変更し、両手持ちにさせた。背面には騎乗用のキャリアも設置することで僕が乗れるようにした。


ゴーレムは基本的に命令入力方式で操作する。単純な命令が基本だが、巡回、探査、発見、攻撃などの命令を組み合わせてプログラムすれば、かなり自動的な戦闘が可能となる。

試験として背面キャリアに乗り、残っていた1m程の岩への攻撃を命令した。

動きはズシン、ズシンとゆっくりだが、その威容と力強さ、そしてグレートアックスを余裕で振り回すパワーは圧巻で、一撃で岩を半分まで粉砕した。


人間との戦闘を想定すると、石材では靭性に問題があり、破壊されやすいと考えられる。そこで新たなアイディアを思いついた。フルプレートの鎧一式を用意し、中に砂を充填。この状態でゴーレム作成を行うと、フルプレートを纏ったサンドゴーレムが完成した。鉄製のフルプレートによる高い防刃性能と、砂による衝撃分散効果で極めて高い靭性を獲得。サンドゴーレム固有の欠点である、ダメージによる体積減少も、器としてのフルプレートによってカバーできている。


このサンドゴーレムをもう一体作成し、儀式への護衛として同行させることにした。騎士型サンドゴーレムには片手剣とカイトシールドを装備させ、マントも纏わせた。

また鎧のデザインをメカ寄りに変更し、騎士型ロボットの様な外見を作り上げた。

この3体を当面の護衛として運用する予定だ。


次に検証したのは不明瞭だった空属性である。予想通り空間属性として機能するなら、インベントリや空間転移、空間圧縮など、今後の戦術に大きく関わる可能性があった。胸の高鳴りを感じながら、作成したゴーレムのインベントリ収納を試みる。空間に魔法陣が形成され、3体のゴーレムを収納することに成功。この結果だけでも、世界に挑戦できる程の重大な成果だった。


収納したゴーレムの取り出しでは、高所に魔法陣が展開し、そこからゴーレムがズシンという音と共に降り立った。この光景を目にした騎士たちは、虚空からの大型ゴーレム出現という事態の重大性を理解し、歓声を上げた。これは敵地での不意打ち的なゴーレム軍団展開が可能という恐るべき意味を持っていたのだ。インベントリの容量検証は必要だが、現時点でこの成果は十分だった。


最後に試したのが雷属性である。実は属性確認の時点で、この属性こそが最も期待していた力だった。

この中世の世界で「電気」を生み出す仕組みなしに「電気」が使えるからだ。近代兵器開発における最大の課題は電気供給だった。特に高電圧制御や電流制御が可能かどうかで、実現できることが大きく変わってくる。


電気は直接的な武器としても、電気分解などの化学反応を起こす手段としても活用範囲が広い。アーク溶接や切断は、この時代の技術では到底実現できないものだった。さらに超電磁砲のような電磁加速技術や、電磁力を利用した攻撃・防御手段も多数考えられる。空間魔法と地属性魔法を組み合わせれば、前世でも困難だった化学反応すら可能かもしれない。


恐らくこの世界のドラゴンたちは、生来の力のみで戦っているだろう。しかし僕は、この力を使って自分や仲間を数十倍も強化できる知識を持っている。これらの力の制御を研究し、前世界の理論的限界を魔法で突破できる可能性がある。この展開に、震えるほどの興奮を覚えた。


いつか近代兵器をも凌駕する兵器を開発し、この世界最強の守護竜になってみせると心に誓った。ここにドラグマッドサイエンティストが誕生した瞬間だった(※妄想です)。魔法を応用すればビームも発射できるのではないか、など妄想が止まらなくなった時、メルフィーナの声で現実に引き戻された。


「古代竜様っ!大丈夫ですか?そろそろお時間になりますので、移動をお願いいたします。」


我に返り、「アギャっ」と返事をして彼女の元へ駆け寄った。メルフィーナは嬉しそうに僕を抱き上げ、儀式の会場へと向かった。

自分の手に入れた恐るべき魔法の可能性にワクワクが止まらない。

読んで頂きありがとうございました!

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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

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