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「竜騎兵(ドラゴナー)」


「第3スチームガンナー隊、前へ!目標、天使型!――撃てぇッ!!」


アイゼン王の咆哮が戦場に響き渡った。ドワーフ軍が誇る最新鋭部隊が、一斉に蒸気銃を構えた。背中の大きな蒸気機関から轟音が鳴り響き、高圧縮された蒸気の力で弾丸が空を切り裂いていく。


その標的となったのは、神聖国が新たに配備した「天使型」兵士たち。召喚勇者の出奔後、神聖国が開発に力を入れた新兵科の一つだ。白い翼を広げ、まるで本物の天使のように空を舞う姿は美しかったが、その戦闘能力は侮れなかった。高度な機動力を活かした弓術と魔法攻撃は、地上軍にとって大きな脅威となっていた。


ドワーフの誇る技術の結晶、ハルトアイゼン製スチームガンは確かに有効な対空兵器だった。しかし、ヒラヒラと舞い踊るように回避する天使型に対して、その命中率は決して高くなかった。


「羽虫共め、ブンブンと飛び回りおって!」


イライラと顎髭をいじるアイゼン王だったが、彼を本当に悩ませていたのは別の存在だった。大地を震わせながら姿を現したそれは、全長15メートルにも及ぶ巨大な亀の姿をした兵器、通称「玄武型」。その甲羅の上には神聖国の精鋭部隊が陣取り、神弓と呼ばれる強力な大型弓で攻撃を仕掛けてきた。まさに移動要塞と呼ぶにふさわしい存在だ。


「このまま防衛ラインを突破されては...大型蒸気圧縮砲グングニル、用意!回転式穿孔弾頭装填!」


「グングニル用意!回転式穿孔弾頭装填、了!」


砲兵長の復唱を合図に、周囲の砲兵たちが素早く動き出す。旗信号が次々と上がり、陣地全体が息を呑むような緊張に包まれた。


「タイミング合わせ...撃てぇーッ!!」


轟音と共に放たれた槍状のドリルの数々が、玄武型の装甲を容赦なく貫いていく。硬質な甲羅さえもバキバキと砕きながら、次々と突き刺さっていった。


「次弾装填急げ!まだ動ける奴を集中的に潰せ!」


しかし、これこそが蒸気圧縮式兵器の致命的な弱点だった。再装填の際、蒸気を圧縮するのに時間がかかりすぎる。スチームガンナー隊も同様の問題を抱えており、まるで古式の火縄銃のように隊列を組んでの交代射撃を強いられていた。


その隙を突くように天使型部隊が接近し、砲兵陣地への攻撃を開始。アイゼン王は眉間にしわを寄せながら、「むう、まだまだマキナ師匠の様にはいかぬか...仕方ないゴーレム隊を...」と呟きかけた。


しかし、その言葉は途中で途切れた。彼の視線の先で、水晶カメラを内蔵した浮遊型自動偵察機――通称ドローンが戦場を飛び交っているのを見つけたからだ。そのドローンを使用できるのは、ドラゴ・エクス・マキナ配下の精鋭、遊撃部隊「竜騎兵ドラゴナー」だけ。


「通信失礼致します、アイゼン王。竜騎兵1シリル小隊、竜騎兵2アルバート小隊、援軍に到着致しました。ご許可頂ければ、作戦開始致します」


気付けば本陣周辺には、いつの間にか量産型改シスターズが展開していた。続いて到着した2台の指揮戦闘車両の上にも、機銃を構えたシスターズが配置されている。


「分かった、頼む」


「了解。各機オールウェポンズフリー。殲滅対象、天使型...撃て!」


「ドコココココッ!!」重厚な機銃音が戦場に響き渡る。散開したシスターズ部隊がロータリーガンを放ち、次々と天使型を撃墜していく様は圧巻だった。


「天使型、上空へ離脱開始。シスターズ11-15・31-35は狙撃ライフルにて追撃開始します」


ミエリッキの冷静な報告の通り、大口径狙撃ライフルの一撃一撃が、逃げ惑う天使型を無残な姿で撃ち落としていった。


天使型の殲滅後、部隊は即座に玄武型への対応に移行。シリルの指示で、シスターズ部隊はグレネードランチャーを装備し、グングニルの再装填時間を稼ぐ援護射撃を開始した。


魔法のファイアボールに似たグレネード弾は、より遠距離まで届き、連射性にも優れていた。その攻撃の合間を縫って放たれたグングニルが、次々と玄武型を貫いていく。


この圧倒的な火力の前に、神聖国軍はついに後退を開始。しかし、この戦いでハルトアイゼン軍の決定力不足も浮き彫りになった。竜騎兵の援護がなければ、確実に劣勢に立たされていただろう。


「竜騎兵の諸君、よく来てくれた!お陰で順当に神聖国軍を後退させることが出来た。礼を言うぞ」


「ご無沙汰してます、アイゼン王。我らはマキナ様の指揮に従っただけですので、礼は不要でございます」


22歳になったシリルは、最初に会った頃の面影を残しつつも、凛とした立派な指揮官へと成長していた。


「やっぱりシスターズだけじゃ物足りないッス!」

その真面目な空気を破ったのは、2つ年下のオペレーター、ティスだった。


「アイゼン王の御前、ティス失礼」

同い年のミエリッキが慌てて制止しようとするが、かえって場が騒がしくなる。


「お前ら怒られる前に静かにしろよ〜」

指揮官のアルバートが、いつものように2人を宥めに入った。


「相変わらずのようじゃの」

アイゼン王は微笑みながらそう言い、シリルは「面目ございません」と眉間に皺を寄せた。


一見すると騒がしい彼女たちだが、機械仕掛けの守護竜から直々に教えを受けた最高レベルの指揮官とオペレーターである事は間違いない。その実力は、全軍指揮を任されたティーガー・ビーズリィや、アイン達を束ねるメルフィーナ女王、そしてマキナ本人に次ぐと言われているほどだ。


メルフィーナ女王の結婚から5年。双子の王子姫に恵まれ、ドラグロード王国は安泰と言われるようになった。子供の誕生以来、マキナは狂ったように王都の防衛システムを強化し、今や王都は難攻不落の要塞と化していると聞く。


アイゼン王は密かに微笑んだ。守護竜マキナの影響は、確実にこの世界を変えていっているのだと。



アイゼン王の思考を遮るように、通信機が再び鳴った。


「アイゼン王、申し訳ありません。マキナ様より緊急の通達が入りました」


シリルの声が真剣さを増す。


「なんじゃ?」


「神聖国の新型兵器、まだ秘匿されているものが複数あるとの情報です。今回の天使型、玄武型は...その一部に過ぎないかもしれないとの警告です」


現場に重い空気が流れる。シリルは続けた。


「マキナ様より、ハルトアイゼンの技術開発部隊との協力体制を強化したいとの申し出がございます。特に蒸気圧縮技術の応用について、新しい提案があるとのことです」


アイゼン王は髭をいじりながら思案する。確かに、今日の戦いで彼らの技術にもまだ改善の余地があることは明白だった。玄武型に対する決定力不足は、今後より深刻な問題となるかもしれない。


「面白い話じゃな。マキナ殿の技術は確かに優れている。じゃが、そなたらの様子を見ていると、技術だけではないものも学べそうじゃ」


「はい?」


「チームワークじゃよ。一人一人が優秀なだけではない、お互いの特性を理解し、補い合える関係。それがそなたらの強みじゃ」


シリルは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに凛とした顔つきに戻った。


「ありがとうございます。マキナ様にその旨、お伝えしてよろしいでしょうか」


「うむ。それと...」


アイゼン王は遠くの空を見つめながら言葉を続けた。


「あの方に伝えておくれ。"弟子は元気にやっておる"とな」


シリルは小さく微笑んだ。


「承知いたしました」


竜騎兵たちが立ち去った後、アイゼン王は再び戦場を見渡した。蒸気の煙が立ち込める中、技術者たちが新型武器の改良点を話し合っている。彼らの士気は上がっているようだ。


(次は、もっと良いものが作れるはずじゃ)


アイゼン王は密かに心を躍らせていた。神聖国の新兵器、そして守護竜マキナとの新たな兵器改良。時代は確実に動き出している。


ドワーフたちの誇りと技術は、この先どこまで進化を遂げるのか。その答えは、まだ誰にも分からない。


ただ、アイゼン王だけは確信していた。守護竜に導かれし者たちと共に歩む未来には、きっと希望があると。


蒸気の向こうに、新たな時代の幕が上がろうとしていた。

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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

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