第2部 プロローグ - 逃亡勇者の軌跡
第2部になりますm(_ _)m
夕暮れ時の南東国家連邦――通称フェデラルの街並みは、人々の喧騒で賑わっていた。獣人や亜人たちが行き交う雑多な通りで、一人の冒険者が静かに歩を進めていた。
茶色い髪を後ろで束ね、質素な冒険者の装備に身を包んだその男は、一見すると何の変哲もない冒険者だった。しかし、その眼差しには言い表せない深い影が宿っている。
「ダーウィン様、新しいダンジョンの情報が入りました」
獣耳の少女が駆け寄ってきて、丁寧に一枚の地図を差し出す。男――かつての勇者ジャスティン、今はダーウィンと名乗る彼は、微かに笑みを浮かべた。
「ありがとう、ミリア」
五年前、彼は「勇者」という称号を捨てた。神聖国から与えられた使命を放棄し、守護竜マキナとの戦いで敗れたあの日から、彼の人生は大きく変わった。
かつての仲間には女神の加護がかかっており、裏切りにあった事もあった。
しかし、それでも決して後悔する選択ではなかった。
女神の加護を失い、最初こそ戸惑ったものの、今の彼はダンジョン攻略で得た魔具と、実戦で培った技術によって、むしろ以前より強くなっていた。皮肉なことに、「元勇者」となった今の方が、真の強さを手に入れていたのだ。
「またあの『聖なる暗殺者』が動いているそうです」
ミリアの言葉に、ダーウィンは軽く肩をすくめた。神聖国からの刺客は、もはや日常の一部と化していた。
「構わない。今までと同じように対処すればいい」
その言葉には確かな自信が滲んでいた。実際、この数年で神聖国から送り込まれた刺客たちは、誰一人として彼に傷一つつけることができていない。
むしろ彼の存在は意図せず、ハルトアイゼン王国や魔王軍にとって神聖国が新たな勇者を召喚できない今、彼らは絶好の機会とばかりに攻勢を強めていた。
「でも、なぜ女神様はここまで執着するんでしょうか?」
ミリアの素朴な疑問に、ダーウィンは遠い目をした。
「おそらく、私が『前例』になることを恐れているんだろう。勇者が神の意思に背を向け、なおかつ生き延びる――それは、次に召喚される勇者たちにとって、希望にも絶望にもなり得る」
彼は空を見上げた。茜色に染まった空は、かつて彼が異世界から召喚された日の空を思い起こさせた。
「ただ、私には守りたいものができた。この世界で見つけた仲間たち、そして――」
言葉を途切れさせ、彼は懐から一通の手紙を取り出した。ドラグロード王国の王妃メルフィーナからの密書だ。彼女もまた、かつての敵でありながら、今では貴重な理解者となっていた。
「新たなダンジョンで何が見つかるか、楽しみだな」
ダーウィンは微笑んで言った。彼の周りには、既に信頼できる仲間たちが集まっていた。獣人の戦士、エルフの魔道士、そして人間の盗賊――種族も立場も様々な仲間たちが、彼の新たな人生を彩っていた。
かつて「正義の勇者」だった男は、今や「自由な冒険者」として、自分の道を歩んでいた。それは決して楽な道のりではなかったが、確かな充実感があった。
やがてはこの冒険者としての生活に終わりを告げ、勇者ジャスティンに戻る日が来るだろう。
その時彼は機械仕掛けの守護竜とどう向き合うのか。
空には、新たな冒険を予感させる夕焼けが広がっていた。そして、その光景は、まるで彼の未来を映し出しているかのようだった――。
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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク




