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メカヲタ、戦う

「マキナ様!ドラグナートに...!」


ターニャの切迫した声が執務室に響き渡る。彼女の頬は走ってきた影響で紅く染まっていた。僕は既に最悪の事態を察していた。


「落ち着いて報告を」


「王都に神聖国から使者が現れ宣戦布告。直後ドラグナートから敵襲の報告が水晶ネットワークを通じ入り、途中から水晶ネットワークが途切れ通信途絶...なお現場には...」


ターニャの声が震え、顔色が青ざめていく。僕の心臓が早鐘を打ち始めた。


「...現場には、メルフィーナ王女がいらっしゃるとの事です!」


その瞬間、僕の思考は停止した。メルフィーナ。契約者であり、かけがえのない存在。王族の血筋を守る理由で他者と結婚することを決めた彼女の最後の言葉が脳裏を過る。


僕はターニャが何か言っているのも聞こえず走り出していた。


あの時何も言えなかった。何も伝えられなかった。それでも今、彼女を生かしたい。


考えている暇はない。僕は即座に竜の姿となり、轟音と共に飛び立った。ブースターを最大出力にし、音速の壁を突き破る。角から発生する衝撃波が空気を切り裂いていく。


(待っていろ、メルフィーナ)



ドラグナートが視界に入る。街の上空は異様な雰囲気に包まれ、大気中の魔力が枯渇していた。

ゴーレム部隊が各所で停止している光景が目に入る。

(勇者め、魔力を消し去る方法をもっていたのか...)


「マキナ様!!」


広場に降り立った僕を出迎えたのは、メルフィーナの婚約者、フェーター・ムートだった。彼の姿を見た途端、胸の奥が僅かに疼いた。


「この街を預かるムート侯爵家の長男、フェーター・ムートと申します!メルフィーナ王女様を...」


「彼女は無事なのか?」


僕は言葉を遮って訊ねた。それが今の僕にとって最も重要な情報だった。


「はい!現在、王都への避難経路を確保しております。私はここに残り、ガンナー隊の指揮を執って...」


「お前も逃げろ。彼女と共に」


「いいえ、それはできません!メルフィーナ王女はもちろん、市民を守るのが貴族の務めです!」


その言葉に、僕は苦い笑みを浮かべた。


「務め」


メルフィーナが僕との関係を諦めた時と同じ言葉。この世界は皆、己の役割という鎖に縛られることを選ぶのか。


「ティーガー!」壁上で指揮を執る副官に向かって叫ぶ。「市民の避難を急げ。敵は私が止める」



敵陣を見据えると、約4万の軍勢。その中心に立つ勇者と、不自然なまでに装飾の施されたフルプレートアーマーの騎士団が目に入った。


(魔力が干渉されている以上、ロータリーガンは使えない。なら、物理で叩き潰す!)


僕は一気に加速し、音速をも凌ぐ速度で敵陣のただ中へと突っ込んだ。装甲騎士の一団を、巨体で真っ二つに分断する。


「はっ!」


勇者の剣が閃光と共に振り下ろされる。咄嗟に首を捻って避けるが、剣風だけでも装甲を削ぎ落とすほどの一撃だった。


「機械仕掛けの守護者マキナよ、その程度か?」


挑発的な勇者の言葉に、僕は低く唸る。尻尾を大きく振るい、周囲の騎士達を薙う。装甲は木端微塵に砕け散るはずだった。


しかし—


「なぜだ...」


吹き飛ばしたはずの騎士達が、潰れた装甲を引き摺りながら不気味に立ち上がってくる。その動きは明らかに人間のものではない。


「クハッ!」


油断した隙を突かれ、高く飛び上がった勇者の聖剣が私の左肩を深く抉る。激痛と共に装甲板と鱗が砕け散り、紫紺の血が滴り落ちる。


「守護竜殿、やはり正しいのは—」


私は勇者の言葉を遮るように、右爪を振り下ろした。聖剣で受け止められたが、その衝撃で地面が大きく陥没する。


「黙れ」


次の瞬間、僕の角が勇者の胸を貫こうと突き出される。だが、不気味な光を放つ騎士達が我が身を盾にして防いでいく。


(この動き...まるで意思を持たない人形の様じゃないか)


装甲の隙間から漏れる微かな光が気になった。その瞬間、全てが繋がった。


「女神の祝福?いや、これは..."呪い"だ」


僕はインベントリから空間属性付与の大型ナックルを取り出し装備する。拳に力を込めると、周囲の空間が歪んでいく。


勇者が再び聖剣を振りかぶる。だが、もう遅い。僕の全身に重力波が渦巻き、大気すら轟音を上げて収束していく。


「勇者ジャスティンよ、お前は気付いていない。お前が率いているのは、既に人ではない軍団だということにな!」


「何を...!」


「今見せてやる。グラビティ・ドラグ・ストライク!」


渾身の一撃が放たれる。空間を歪める重力波を纏った拳は周囲の大気を巻き込んで渦巻きながら勇者と共にその配下の騎士団を一掃した。

装甲が砕け散る中、その隙間から漏れ出る女神の光は、確かに祝福であると同時に、彼らを不死の存在に変えた呪いの証だった。


空中で吹き飛ばされながら、勇者の表情が恐怖に歪むのが見えた。自分が何を率いていたのか、今になって理解したのだろう。


(メルフィーナ、お前の大切な王国を、僕は必ず守ってみせる)


戦いの轟音の中、私は固く誓った。それが契約者への、そしてかけがえのない人への私なりの不器用な愛の形だった。

読んで頂きありがとうございました!


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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

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