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閑話 メルフィーナ ②

私はまだあの日のことを鮮明に覚えている。2年前、ドラグロード王の呼び出しを受けた時の緊張と不安を。王族の血を残すための結婚—— その言葉が私の心に重くのしかかった。


その頃のマキナ様は、まだあどけない幼生体だった。庭園で一緒に過ごした午後の光、私が本を読むそばで眠りについた彼の穏やかな寝顔。純粋な愛情で接することができた、あの輝くような時間。


今でも覚えている。彼が初めて人型になった日のことを。私の心臓が大きく跳ねた瞬間を。その時から、全てが変わり始めた。教導士から鉱石の知識を学び、深夜まで回復魔法の練習を重ね、指揮官としての書物を読み漁った。

マキナ様に「よく頑張りましたね」と褒められた時の喜びは、今でも胸に残っている。


父上は全てを見通していたのだろう。マキナ様が人型になる前に私を結婚させようとしていた理由が、今になって痛いほど分かる。

幼い頃から、父上は私のことを第一に考えてくれていた。王族としての厳しい教育の中にも、いつも優しさがあった。



「お前の幸せを願っているんだ」

父上の言葉が耳に蘇る。結婚の話を告げに行った時、父上は私を強く抱きしめてくれた。その温もりは、まるで幼い頃に戻ったかのようだった。申し訳なさと感謝で胸が潰れそうになる。





空しかった。私の想いは届かなかった。


確かに、彼の中にも何かがあったはず。でも———。


現実は残酷だった。彼は機械的に計算し、冷静に思考し、そして決断を下した。私との感情より、国を守ることを選んだ。


当然だ。彼は機械仕掛けの守護竜。国の象徴なのだから。


私なんかの感情で、どうして振り回されることがあろうか。



これからはフェーター・ムート様の元へ。アイン達にはマキナ様の守護を命じた。彼の影さえ、今の私には耐えられない。



フェーター様は素晴らしい方。これでいい。迷ってはいけない。もう泣いてはいけない。全ては幻。ただの夢。私は———。



子を産み、王族としての務めを果たす。それだけを考えればいい。



馬車は揺れている。ドラグナートまでの長い道のり。考えたくないのに、思い出が押し寄せる。母は、私を産んだ時、どんな気持ちだったのだろう。

窓に映る自分の顔を見つめる。



王族の望まぬ結婚なんて、珍しくもない。でも———。

私にも子供が生まれたら。マキナ様は———。



ダメだ!もうこれ以上考えてはいけない。何をしても変わらない。世界が色を失っていく。



マキナ様との日々は、まるで夢のようだった。でも、私は彼を苦しめただけ。きっと嫌われている。いや、最初から必要とされていなかったのだ。


銘はドラゴンロードに従って付け、私の微々たる魔力など誤差でしかない量の魔力をドラゴンロードが与えていた。


私は契約者という肩書きを貰っただけ。


そうか...私の仕事は終わったと、あの日言われてたっけ...。


契約者という名だけの存在。微かな魔力を与えただけの、取るに足らない存在。今更気付いた。私の役目は、とうに終わっていたのだと。何とも滑稽な話。



もうすぐドラグナートに着く。そうしたら、この想いも、この痛みも、全て封印する。


「さようなら、マキナ様。どうかドラグロード王国をお守りください。」


その言葉に、最後の想いを込めた。

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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

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