メカヲタ、育成する
ハルトアイゼン王国方面軍が撤退した事で魔王軍全体に大きな変化が起きた。
一時はその勢いのままに神聖国ゴッデスべフェールを侵略するものと思われたが、勇者の踏ん張りもあって増援が間に合い北方の国境まで戦線が後退したのだ。
魔王軍としてもハルトアイゼン王国方面軍が3日と持たず6割強の死者を出して撤退に追いやられるとは想像だにしなかった。
指揮官グファルは魔王軍の中では新参ではあったが、そのテイミング能力と戦闘力を買われての抜擢だっただけにこの失態は彼にとって大きな痛手となるだろう事は明白だった。
しかし彼が持ち帰ったハルトアイゼン王国の戦力予想規模は魔王軍で論じられていた予想を遥かに上回っており、その上竜の国ドラグロード王国の守護竜が参戦したとあっては戦力不足は否めない。
それでも誰かが責任を取らねばならないのが、組織と言うものだ。グファルはこうして降格処分となり、運の悪さが招いた不適切な評価によりその家族さえ不幸になっていく。
彼の娘がやがてグファルの無念を晴らす為に竜に挑む物語はまだまだ先のお話だ。
こうして戦線は膠着し、ハルトアイゼン王国方面はとりあえずの平穏を得た。
「勇者は生き残った様ですな。」
考え込んでいた僕にアイゼン王は勇者の現状に対する情報を持ってきていた。
「勇者に恐れをなした魔王軍は撤退開始。神聖国軍の援軍も到着しこれ以上の侵略行為は許さないそうだ。」
はっはっは、今から神聖国の横っ腹から侵略したろうかと思う内容だがそう言うものなんだろう。
「今側面を突いたら神聖国は混乱するでしょうね」僕はイタズラっぽくそう提案してみせた。
アイゼン王は目を丸くしたが、笑いながら首を横にふった。
「いやいや、マキナ殿は存外恐ろしい事をお考えになりますな。しかし今側面を突いても首元まで届きますまい。かの国は未だ戦力を隠し持っているでしょう。」
5万の大軍と拮抗する程の戦力を魔王軍に割いても大国であるハルトアイゼン王国国王に警戒させる国力があるという現実が重い。
純粋な人口比による国力を比べれば、ドラグロード王国を1とすればハルトアイゼン王国が25、神聖国が100以上だ。
そもそもの人口が多い上に神の加護なる謎パワーまである。
「現状で我々が生き残っていくには、開発力で上回り続けるしかないでしょうね。」
「そうだな、今回マキナ殿のお陰で我らも切り札を切らずに済んだ。抑止力がある内に次の開発を急ぐべきだろう。」
国力差を考えれば圧勝している様に見えても、薄氷の上を歩いている様なものだ。
それに勇者の存在もある。
僕は急ぎ開発研究所に戻り、次なる戦いに備えた開発と人員確保をすべきだと考えた。
「当面私は新兵器や新装備の開発と人員確保に努めます。今回持って来たタイタン級、サイクロプス級、トロール級、ストーンバレット改は全機置いて行きますので、開発、防衛に役立てて下さい。」
人間種であれば一個大隊を上回る戦力だ。
万一この北方を魔王軍が再度侵攻しようとした時、大きな助けになるだろう。
「すまない、ありがたく頂いておこう。代わりと言っては何だが鉱石など必要な物が有れば言ってくれ。」
僕は頷き、資材で足りない物が無いか確認する。
新たな敵も現れた以上、アイゼン王との関係は今まで以上に強固なものにしなくてはならない。
どこへでも素早く移動し、展開できる遊撃部隊を本格的に用意していくとしよう。
こうして僕たちは帰路についた。
道中の休息時間にメルフィーナが神妙な面持ちで話しかけてきた。
「私も指揮官訓練を受けようと思います。」
ふむ、僕は彼女の主張を聞いて考えた。
確かに前線において彼女の存在は象徴的な意味合いと回復魔法以外に無いだろう。
もし彼女が指揮官として有能であれば、ゆくゆくは女性司令官、女性参謀などの浪漫が見える!
「是非!!お願いします!!」
王女で指揮官とか、かっこいいじゃないか!
世の中大抵の事は楽しんだ奴が強い。
やる気があるなら、是非やって貰おう。
快い僕の返事に彼女は満面の笑みを浮かべ喜んでいた。
前線に着いて来る理由が欲しかったのかもしれないな...思えば彼女はいつも何か役立とうと頑張っていた。
戦闘ではアート達やターニャが立場を確立し必須メンバーになった。
このまま人員が増えれば、彼女の立場は狭くなると考えたのかもしれない。
「気使いの足りない守護竜だこと...」小声で口に出してみて本当にそうだなと思う。
「メルフィーナ、指揮官をやると言うなら僕が直々に教えよう。アイン、ツヴァイ、ドライ、バトラーと量産型の指揮が出来る様になってくれると非常に助かる。」
この言葉にメルフィーナは真剣な眼差しで頷いた。
実際、指揮官養成所で教えているのは大型ゴーレムの運用がほとんどだ。
アイン達小型ゴーレムの運用は大型とはスピードのスケールが違う。
判断から指揮までに与えられる余裕が短く、ミスがそのまま取り返しがつかない場合も多々あるのだ。
それ故に今までは僕が直接指揮していたが、彼女が運用出来れば僕は自由に戦うことが出来る。
ただ心配なのは僕は思考がそのままゴーレムに伝わる為、指示が必要無いのでタイムラグがほぼゼロで対応出来る。
対して指揮で僕と同じ事をしようとすると高度な予測演算を必要とし、その難易度は大型の指揮など片手間に出来るレベルだと言う事だ。
一瞬の判断なんていう漠然としたものでなく、予測に予測を重ねた未来予知に近い予測が必要と言う事だとメルフィーナに言い聞かせた。
もし難しければ大型ゴーレムの指揮でも助かると加えて伝えたが、彼女は俄然やる気で小型ゴーレムの指揮官になるつもりの様だ。
流石にアートの指揮は任せられないが、アイン達がメルフィーナの指揮で戦う様を想像するとワクワクするものがあった。
ベースに戻ったら早速育成開始だと告げるとメイド達もメルフィーナ王女を応援していた。
彼女がこの世界初の小型ゴーレム指揮官として名を馳せる日が楽しみだ。
読んで頂きありがとうございました!
星評価、ブックマーク、いいね!
よろしくお願いします!!
感想やご意見有れば是非お聞かせくださいね!
(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク




