メカヲタ、ハイキングを楽しむ
巡航速度で飛ぶ僕の手には皆が乗った魔改造馬車が握られていた。
僕の翼ならハルトアイゼン王国を南北に横断するのに約17時間、流石に飛び続けるのは皆の体力的にも厳しいので途中ハルトアイゼン王国の北にある鉱山都市で一泊して翌日に到着予定だ。
この時代の移動手段に比べて僕の巡航速度は約8倍、本気で飛ばなくても相手の予想を遥かに上回って現場に到着できる。
しかもインベントリにゴーレム達を格納して現地展開できるのだからチート以外のなにものでもない
魔王軍にもこの機械仕掛けの守護竜の恐ろしさをその身をもって味わって貰うとしよう。
神聖国という共通の敵がいる以上手を組むという選択肢もあるはずだが、こちらの実力を示さねば話し合いのテーブルに着くことさえ難しいだろう。
仲間になるにせよ、敵になるにせよ一度は戦って見せる必要があった。
鉱山都市が見えて来たので数キロ手前で着陸し、魔改造馬車をゴーレムに引かせて街を目指す。
竜の姿で街に入ると騒ぎになるからね、そんな非常識な事はできない。
鉱山都市に入ると戦争中という事もあってか、かなり慌ただしい雰囲気だった。
使いの者が僕達を見つけ休息用に用意してくれた施設へと案内される。
そこで食事と睡眠を取り、明日に備える。
明日の昼頃には戦場だ、皆の顔にも緊張感がある。
皆を早めにベッドに入らせ、僕は武装の最終チェックを始めた。
戦場に着いた時どんな状況になっているかで即戦闘も有り得る。
いざという時に動かない兵器など意味が無いからね。
同時に魔改造馬車の更なる魔改造を開始する。天板の上に回転式砲座を取り付けロータリーガン(アイン達と同じモノ)を固定し簡易な迎撃システムを装備する。
砲座には量産型を配置する予定。
車内に居ても外の状況が分かる様に水晶モニターを取り付け、窓にはシャッターを取り付け室内の明かりや空調を管理する為の魔石をセットした。
装甲の厚みも調整し、今後馬で引く事が出来なくなる程の重さになったが防衛力を更に強化しておく。
前の時のように大事な仲間に危険が及ばぬ様、この強化は戦場に着く前にやっておきたかったのだ。
ベースが馬車なのでこれ以上の改装は難しいが、帰ったら必ず前衛基地となる指揮車両を作成しよう。
一通り強化を終えた時既に夜明け近くになっていたが、不安は多少マシになったと思う。
そのまま馬車の中で仮眠し、朝を待つ事にした。
数時間後目を覚ました僕を待っていたのは、メルフィーナのお小言と簡易な朝食だった。
僕がろくに眠らずに魔改造馬車を改装していた事に感謝しつつも、身体を気遣って心配しているのがよく分かった。
いつも心配してくれる彼女には本当に感謝している。
皆の準備が終わったのを確認し竜形態になり飛び立つ。
4時間も飛べば前線だ、各員の緊張感が高まって来ていた。
昼を少し回った頃、アイゼン王率いるハルトアイゼン軍が魔王軍の巨人部隊と戦っているのが空から確認できる距離までやって来た。
アイゼン王の陣地の場所を確認し地上に降りて馬車で現地に向かう。
量産型を一体召喚し天板上の砲座に座らせ。指揮権をメルフィーナ王女に移譲した。
簡易ではあるが、装甲車っぽくて中々良い!
アイゼン王に面会した僕達はそのまま作戦会議に参加、現状の確認と方針を決めていく。
「現状魔王軍は必要以上に攻めてくることはしない。この場に我々を釘付けにし膠着状態を作り出す事が目的だと分かる。」
案の定と言うかやはりと言うか、こちらは牽制に過ぎない様だ。
敵の戦力は、大型巨人50を主軸にした混成部隊の様だが後方に控えた部隊に動く気配は無かった。
かと言って被害が無い訳では無いし、状況が変われば一気に攻め崩される可能性もある以上放ってもおけない...
アイゼン王も戦力的にはまだ余裕があり、切り札も切っていない状況だったが下手に手を出せず膠着状態を維持し続けている。
少し極端な手で状況に揺さぶりをかけて見るか。
「ちょっと話し合いでもしてみましょうか?」と僕は間の抜けた意見をアイゼン王に真顔で伝えてみた。
「話し合い?....何か考えがあるのだな?」
「要は相手を撤退させ、こちらに攻める気は無いと示せば良い訳ですよね?」
少し悩んだアイゼン王だったが、頷いた。
「じゃあ、ちょっと行ってきます。」
僕はそうアイゼン王に告げると、メルフィーナ達に本陣で待つ様に伝えアートのみ伴って歩き始めた。
戦況は既に混戦になっている。
大型巨人と大型ゴーレムが入り交じった大型対決の状態だ。戦場の広さに対し数は少ない。
その中をアートと二人、ハイキングコースを歩く様に戦場の中心を進む。
隠れるでも走るでもなく、ただ歩いて敵陣に真っ直ぐ向かった。
途中巨人が僕達を見つけることもあったが、近くのゴーレムに命令して気を引かせそのまま歩いて行った。
戦場を抜け敵本陣が視界に入った。
多種多様な種族の混成部隊だ。
最前線にはゴブリンクラスの最弱モンスターも混ざっている。
魔族と呼ばれる種族にはテイマーも居るのだろうか?
一切攻撃せず、走りもせず、たった二人で12000は居るだろう部隊の前に立つ。
「指揮官殿はいらっしゃるだろうか?私はハルトアイゼン王国の同盟国ドラグロード王国の守護竜マキナ!話がしたい!」
突然目の前まで歩いて現れ、指揮官を出せと言う間抜けな僕に対し魔族軍はゲラゲラと笑った。
一部の前衛がおそらく命令も無しに僕達に向かって走り出していた。
攻撃を仕掛けようとしたゴブリン達モンスターが次々に殴り潰されていく。
殴る力が強過ぎて殴られたモンスターの飛び散った肉片や体液が敵本陣側にだけ飛び散っていた。
アートの身体はおろか殴ったその手にすら体液一滴着いていない。
その手に装備した空間属性による重力波で殴ったのだろう。
ゴブリン等身体が足のつま先まで無くなっていた。
「もう一度だけ聞きます。指揮官殿はいらっしゃいますか?」
今度は笑いは起きなかった。
「部下が勝手に手を出し失礼した、守護竜マキナ殿。」巨大なバイコーンに乗って現れた男はフルプレートアーマーを装備した大男だった。
「私は魔王軍ハルトアイゼン王国方面指揮官グファルと申します。噂に聞くドラグロード王国の守護竜殿がどう言った御用で参られたのですかな?少々立て込んでおります故、複雑なお話には回答いたしかねますが。」
流石に魔王軍の指揮官ともなれば、礼儀正しいものだ。
「いやなに、そう難しい話をしに来た訳ではありません。同盟国ハルトアイゼン王国にせよ、ドラグロード王国にせよ貴国に攻める気は現状ございません。なのでこの軍を引いて頂きたいのです。」
未来的には敵になるか、味方になるか分からんけど、現状攻める気はない。
「そう申されましても、我らも命令あってここに来ております。はい、そうですかと帰っては上司に叱責を受けるは必定。ご理解頂きたい。」
なるほど、定型文でもっともな話だな。
「撤退する確かな理由が無いと引いて頂けないという事ですね。まあ、ごもっともな話。ですが、ここに私が来たと言うのは理由になりませぬかな?」
守護竜マキナの参戦、まあ歴史上歴代の守護竜とも戦った事など無いだろうけど。
「お噂は聞き及んでおります、が、見た事もないものを噂のみを信じて撤退したとあれば、私の立場は失墜し家族は皆卑怯者、臆病者と罵られる事でしょう。」
まあ、そうだよね。言ってる意味はよくわかる。ただ知る為には相応の犠牲が付き物だ。
「そうですか、ではこれではどうでしょう?」
僕は僕の背後にバトラー、アイン、ツヴァイ、ドライを召喚した。
「執事とメイドを増やしてどうなさるおつもりですかな?」くっくっくと笑う指揮官グファル。部下達も笑っている。
「では、準備はよろしいか?」
意味を理解出来なかった指揮官グファルは問い直す。
「何のですか?」
まったりとした空気に完全に虚をつかれていたのだろう、間の抜けた返事をするグファルに僕は一言で伝えた。
「戦争のです。」
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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク




