閑話 「メルフィーナ」
ここから第2章成竜編になります。
彼を初めて見た時、私は少し怖かった。
生まれたばかりの竜の幼生体が、私に警戒心を向けたと思い足が竦んだ。
しかし幼生体は私の足下で飛び跳ね、私が手にした布を欲しがっているだけだった。
しかしこの幼生体はただの幼生体ではなかった。生まれて直ぐに人語を解し、特殊古代語さえ理解している。
その上、三属性な上に雷と空属性という特殊な属性を有していた。
彼は私達を見極めると言う。
私にこの幼生体に見合う力など有はしない。
多少人より魔力が多いが、それもこの幼生体にはまるで足りないのが現実だった。
どうやって認めて貰えばいいか、分からなく不安だった。
とりあえず部屋に連れて行くと、彼はこの国の情勢や竜族の知識、宗教や歴代の契約竜等の知識を恐ろしい速さで吸収していった。生後数時間で既に高い知性を感じる。
私は彼の興味に合わせて本を集める事しか出来なかった。
彼は本を読むことで驚く事に筆談を可能にしていた。
最初の言葉は「お腹空いた」だった事に私は感謝した。
これならお力になれると思った。
抱き抱え厨房にお連れし焼いた肉とバナナを食べさせてあげた。
城内を抱き抱えて案内すると、彼は兵士やメイド達にも愛想を振りまいていた。
...たったこれだけだ。私が出来たと言える事など何も無い。
にも関わらず彼は私に契約を求めた。
この古代竜は情報から判断したのだ。
私が何かをした事が彼に決心させた訳では無かった。
それでも彼の申し出は心から感謝の気持ちが溢れ出た。
これでドラグロード王国は救われると、お父様の期待を少なくとも裏切らずに済んだと涙した。
一晩たって全身が美しい白い体毛で覆われその可愛らしさに心奪われた。
本当に可愛らしく、愛嬌のある動きに心躍るものがあった。
彼には可愛い名前をつけてあげようと思ったのを覚えている。
儀式を前にして彼は訓練場でゴーレムの作成をし始めた。
思えばこの瞬間からだ。
彼の中に何か強大な力を感じる様になったのは。
彼は3体のゴーレムをあっさりと作り、空間属性という特殊属性による収納魔法によってゴーレムをしまった。
そして儀式を受ける為、私は彼を抱き抱え移動した。
儀式が始まった時、私は彼の為に用意した可愛い名前を思い返した。
そして宣言しようとした時、私の頭の中に誰かの声が響いた。
「その竜の名はドラゴ・エクス・マキナ。マキナと銘じよ。」
決して背けない恐ろしいまでの圧を感じ、私は用意していた名前を捨て、彼を機械と銘じ魔力を可能な限り捧げた。
マキナと銘じられた彼は明らかに喜んでいた。
少し寂しかったが、それでも喜んで貰えたなら良かった。そう思った矢先に視界一杯にドラゴンロードの姿が広がった。
ドラゴンロードはマキナ様にドラゴ・エクス・マキナの呼び名と私とは比べ物にならない量の魔力を捧げた。
あの時ドラゴンロードは確かに私の望みを叶える為にマキナ様がドラゴンロードを召喚したと言っていた。
その後ドラゴンロードはまた頭の中で声をかけてきた。
「汝の役目は終わった。これよりはドラゴ・エクス・マキナが望む通り最善を尽くすがいい。」
私の役目は終わり?彼を束縛するでもない契約者など、大した意味は無いのだろう...
捨てた名前は思い出す事すら出来なかった。私は恐ろしくなって呆然としていた。
マキナ様の声で我に返り彼を抱きしめて震えるだけだった。
その時群衆の中から火の魔法が放たれ、マキナ様を目指していた。
私はこの身を挺してでも彼を守ろうとした。しかしそれは杞憂だった。
彼はこの状況さえ予測しゴーレムを作っていたのだ。
守る筈が既に守られていた。
そこからの彼はドラゴ・エクス・マキナとしてゴーレムの部隊を作り出しドラグナートを助け、神聖国の1万の兵すら軽く倒してしまった。
彼は私を守る為の執事やメイド型ゴーレムを作ってくれた。
彼は守護竜として恐ろしい程の知識と魔力を持ち、その後も私達を気遣った馬車等も作ってくれた。
ドワーフ達からも信仰を得て、魔神と呼ばれる様な恐ろしいゴーレムも作成し配下としてしまった。
私には何一つ理解できない。
ドワーフ達の方が私より役に立てているのが堪らなく切なかった。
私は彼と契約者の関係ではあったが、私が出来ることはとても少ない。
あれから3年の時が経ち、彼も近く成竜になるだろう。
この3年間で彼は食料事情を改善、王都やドラグナートの防衛力の強化、ゴーレム部隊の作成、自動砲台による迎撃システムの構築、遠距離との通信を可能にする特殊古代語魔法と魔石加工を使った通信機の作成、銃火器の発展、魔石加工による「電気」を利用した家具開発、医療用具の開発、指揮官やオペレーター、開発者や技術者を育成する機関も作り私達の世界を大きく変えてしまった。
最近ではハルトアイゼン王国から提供された砦とドラグロード王国の土地を合わせて作られた開発施設の大改造をすると張り切っていた。
私も少しでもお力になりたくて、ただ付き従うだけでなく、ドラグロード王に倣い外交力を高める為勉強もした。
実験で傷ついた人を助ける為に必要な回復魔法を高レベルで習得したり、出来る事は何でもやろうと頑張ってきた。
それでもマキナ様と比べたら、私は何と非才で役たたずなことか。
それでもマキナ様は変わらぬ笑顔で変わらぬ態度で愛嬌を振りまいてくれる。
でも一番悔しいのはマキナ様を抱き抱える役がアートと言うゴーレムが完成して以来奪われたままと言うことだった。
しかしあのゴーレムはマキナ様が作り出した最高傑作であり、その力は計り知れない。私が立ち向かえる相手では無かった。
私はこれからもマキナ様に尽くして行こうと心に決めているが、果たしてどこまで役立っているか不安で仕方ない。
騒がしく改装工事を行う傍らで紅茶を嗜みながらエルフィーナ王女は表面には一切出さず悩むのだった。
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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク




