メカヲタ、出会う
HAPPY NEW YEAR!!
ハルトアイゼンに招待された僕達はいつもの面子を引き連れて魔改造馬車で優雅に移動していた。
いつものメイドさん達、いつもの騎士達、メイドゴーレムに執事ゴーレム、そしてメルフィーナ王女と僕とアイゼン王....
普段は和やかな車内の雰囲気が、今は張り詰めた緊張で満ちていた。
「いやぁ、このリクライニングシートと言うのは天才的な発想ですな!簡単な仕組みに知ってしまえば当然こう在るべき存在と分かるのに、なぜ今まで発想出来なかったのか。」
一人有頂天なアイゼン王に皆愛想笑いが凍りついている。
リクライニングシートが気に入り、自分が乗って来た馬車より魔改造馬車の方が乗り心地が良いからと必死に止める側近を無視して乗り込んで来て早5日。
皆の表情筋は限界が間近だった。
「あと1日、あと1日、あと1日」と誰も声に出していないのに皆の声が聞こえる気がする。
そんな緊張した空気の中でも、アイゼン王は僕に銃器の話や魔石加工のコツを得意げに語っていた。僕は王の話に付き合いながら彼が興味を持ちそうな浪漫装備について話をした。
特に彼の心を捉えたのは、「20m級対大型モンスター用決戦型ゴーレム【ギガンティック】」という構想図案だった。前世の巨大ロボットアニメからインスピレーションを得た、全高20mの大型ゴーレムという冗談めいた話だったのだが、彼の目は少年のように輝いていた。その様子を見ていると、僕自身も幼い頃に巨大ロボットに憧れていた記憶が蘇ってきた。
アイゼン王は熱心にゴーレムの機能や戦い方について質問してきたので、僕も調子に乗って妄想を膨らませていった。
人が乗り込んで操縦するコクピット型で、パイロットの動きに連動して動く仕組み。右腕には装甲を貫く巨大ドリル、左腕には超大型パイルバンカー。そして背中の風属性魔石を凝縮したインジェクターノズルから収束した高出力な風を噴射して舞い上がり、全エネルギーを込めて放つ必殺技「ハイパーギガトンキック」まで考え出していた。
完全な空想だったのだが、アイゼン王はすっかり気に入ってしまった様だ。
「20mという規模、人による直接操縦での制御の簡略化、そして回転力を活用したドリルと超大型パイルバンカーという現実的な兵器、そして浪漫あふれる必殺技...」
震える声で興奮を抑えきれない様子の王は、「そのゴーレム、是非ハルトアイゼンの守護神として作りたい!」と熱く語った。
メルフィーナ王女とメイドさん達は終始スンっとした顔をしていたが、男性であれば誰もがこの浪漫を理解できるはずだ。実際、男性騎士たちは目を輝かせながら話に聞き入っていた。
そんな夢物語に花を咲かせながら、どうにか6日間の旅を終え、僕たちはハルトアイゼンに到着した。
到着した晩は盛大なパーティが開かれ豪華な料理も並んだのだが、メンバー全員6日間の気苦労と疲れで食欲が沸かず苦しそうにしていた。
アイゼン王は何人かの技師を呼びつけ何かを熱く語っていたが、ときおり聞こえてくる「20m級」とか「バンカーは直ぐに出来る」等聞こえてはならない会話の様だったので、そっと目を逸らした。
暫くしてパーティも終わりを迎えた頃、アイゼン王は僕を呼びつけ、紹介したい奴らが居ると二人のドワーフ達を紹介される事となった。
「この者たちは我の信頼出来る技師達だ。本来なら我自信がマキナ殿と共に開発をしていきたいのだが、大臣共に止められてな! 代わりと言っては何だが、この者たちをマキナ殿に預ける!」
そう言って紹介されたのは2人のドワーフ達だった。
銃器関連のスペシャリスト、ガンスミスのゲパルト。魔石加工のスペシャリスト、マジックストーンクラフトマンのエルダ。
どちらも名の通った銘持ちで、知らぬドワーフは居ないとまで言われている存在だ。
フンっと睨みを効かせたゲパルトは僕に掴みかかる勢いで迫って来た。
「あんたがドラグロード王国の守護竜マキナかい。俺ぁ、あんたに言いたい事がある!!」丸太の様に太い腕をピクピクと動かしながら迫る。
「ゴーレムに骨格を作ったのは流石だ!しかし、なぜ骨格を作って筋肉を作らねぇ!?」
その言葉に僕は衝撃を受けた!!!
そうだ、動かすのは魔力で動くからと動かす機構を怠った...そうだ、もしゴーレムに骨格に続き筋肉の様な機構を取り込めば、もっと柔軟で攻撃防御に適応した動きが可能になるのではないか?
「筋肉は...浪漫だろうが!!」
....少々意味がわからん流れになったが、彼の主張は正しい。いや、筋肉が浪漫かどうかはさておきだが。
僕はその場でインベントリにしまってあった素材をいくつか取り出し骨格を作り始める。
ベースはアイン達メイドゴーレムだが、ややサイズアップして160cm程で骨格として内部フレームを作成した。
このサイズで試験的に作成し、やがて大型ゴーレムに還元するのが目的だ。
「おいおい、このクラスのゴーレムをそんな簡単に形成出来るのか。」
アイゼン王、ゲパルト、エルダも混ざってメイドゴーレムの草案を考え出す。
僕はゲパルトに筋肉組織の構成を簡略化しゴーレムに取り込む案を提示した。
ゲパルトはニヤリと笑い「良いだろう、筋肉の図面は引いてやる。」と部下に命令してその場に机や機材等を集めさせた。
エルダは「なら私はフレームに埋め込む魔石にお望み通り雷属性を付与してみせよう」と大量の魔石の中から適した魔石を選び実験を開始する。
アイゼン王は突如として始まったドラグロードの機械仕掛けの守護竜とハルトアイゼンの名工が集って作り出す最新型ゴーレムに興奮が収まらなかった。
「用意出来る全ての鉱石と魔法素材をインゴットで持ってこい! まだ解析出来ていない鉱石や新素材も全部だ!」と命令を下した。
エルフィーナ王女やメイド達は既に疲れ切っていた為部屋に戻った様だが僕はゲパルトの一言が産んだインスピレーションに期待が高まり創作欲がピークに達していた。
アイゼン王の王命で運ばれて来た素材に目を通していく。
魔法金属はさすがに豊富でミスリル、オリハルコン、アダマンタイトまであった。
他にも彼らが素材として解明出来ていなかった素材の中に金紅石を発見した。
金紅石とは二酸化チタン(TiO2)95%を含む鉱石でチタンを生成するのに使えるのだが、残念だが量が足りない。しかし金紅石があったと言う事はこの世界にもチタン有ると言う事だ。
どう言った経緯でこのルチルを手に入れたか不明だが、海岸線付近の砂鉱床を探してみるのが良いだろう。
場合によってはイルメナイトが見つかるかもしれない(※ルチル同じく二酸化チタンを含む合成ルチルの元)
こうして突発的に始まったゴーレムに新技術を盛り込む開発は、既に夜もふけてきていたにも関わらずそのままその場で続行される事になった。
やはり開発は皆でやるのが楽しい。
違った角度からの意見が新技術を生み出すことがあり、役割を分担する事でより完成度を高めることも出来る。
未だ作り始めたばかりの新型メイドゴーレムだが、最高の技術者達と素材を元にこのゴーレムは既存のゴーレムとは全く違う最高の作品になるだろうと予感していた。
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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク




