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メカヲタ、転生する

...周りが何か騒がしいな。

そろそろ起きなきゃ仕事に遅れる時間なのか、だいたい今日は何曜日だ?

昨日配信されたロボットアニメからすると今日は火曜日だった気が...

そんな事を考えつつスマホを取ろうと手を伸ばすとコポッと水の様な音が聞こえた。

なんで水の音が耳元で聞こえるんだ?

まさか津波でも来て冠水したのか?!

だから安いからって海岸から近いアパートは辞めておけば良かった。


でも苦しくないな、既に死にかけているのか。そう言えば身体の感覚がおかしい。

手も足も上手く動かせないのに、何かへんな所が動く気がする。

手足を少しでも動かそうとじたばたしてみたら、左足が何かを蹴破った。

身体の周りにあった水が引いていくのを皮膚で感じる。

おお、これで息ができる。


くっっさ!!何か凄く臭い!!

汚水の中にでも落ちていたに違いない。

これは急いで脱出しなくちゃいかん!と身体を覆っていた殻状のものを殴り割った。

光が差し込んできて眩しい。上手く目が開かない。

「おお!!産まれましたぞ!!」

突然どこかの爺さんがボケた事を言っているのが聞こえた。

産まれたんじゃない、今必死に脱出したんだ!と文句を言ったら思いがけない声がでた。

「アギャアギャ!ウギャッ!」

え?どゆこと?

そっと目を細く開き周囲を殻の隙間から見てみる。

視界に飛び込んで来た景色に、僕は唖然とした。

何か知らない人達がめっちゃ居る。

一旦殻に戻り考える。

状況を整理してみよう。

昨日は確か24勤務明けで連勤もあってめちゃくちゃ疲れてた。

家に帰ってベットに腰掛けたら疲れがどっと出て...最後の力を振り絞ってロボットアニメを見たのは覚えている。

そのまま死んだのか...

我ながらあっさり死んだもんだ。

アニメの続きが気になるのに残念だ...色々思う所はあるが、今は考えても仕方ない。


ところでさっきから目の前をゆらゆらと揺れているこれは何だろ?

そっと手で触れてみる。

あらヤダ、手ぇ短っ!爪鋭いなー。

とりあえず触れてみる事に成功。

あー、これあれだ、尻尾だな。

触った手にも感触あるけど、ゆらゆら揺れてた方にも感触があった。

じゃあ、この殻は卵かぁ...卵かぁ....

爬虫類系かな、この感じだと...

そんなん嫌じゃ!!!

卵の殻の中で思いっきり仰け反る。

生粋のメカヲタな僕が爬虫類だと!トリケラトプスとステゴサウルスはややメカっぽいけどぉ!

思わず叫び暴れてみる。

卵がころんっと転がり横になった。

ずっとこの中に居てもだしなぁ、出るか臭いし。

殻から這い出した僕を周囲に居た人々が、「ぉぉおお。」とどよめいて見ている。

とりあえず卵から這い出した所で身体を拭くものを探す。

何かペッタリとくっついた薄い膜っぽいモノがウザったい。

指で摘もうにも不器用過ぎてウキーってなりそう。

随分と仰々しい台に乗せられていた様で、それなりの高さがあった。

うーん、身体が拭けそうな物は無いなぁ。あの辺の爺さんの服で拭いてやろうか。


すると一人の女性が大きな布を両手に乗せてやってきた。

おお、気が利くじゃん!ありがとうと言ったつもりが「アギャア!」となった。めっちゃ威嚇したみたいになってしまった。

女性は驚きその場で立ちすくんでしまう。

あー、ごめん。そんなつもりじゃ無かったんだ。言い訳も全て「アギャアギャ」に変換されてしまい、何も伝わらない。

仕方がないので自分で布を取りに行こうと立ち上がってみた。

お、さっきより力が入る。流石野生動物は生まれて直ぐに動けるからいいよね。

多分爬虫類だけど。

とっとっとっと歩き、台座からぴょんっと飛び降りて立ちすくんだ女性の足元まで歩み寄る。

女性はガクガクと震え動けないでいた。

まあ、小さい恐竜的な何かが威嚇後自分に向かってきたら怖いわな。

彼女の手からずり落ちて来ていた布の端を手で掴もうとしたが手が短くて届かない。


くっ、どうでもいいけど生物としてこの手の短さはどうなの?と思ったが仕方ないので口で咥えに行く事にする。

それでも微妙に届かず足元でぴょんぴょんと跳ねていると周囲からクスクスと笑い声が上がり始めた。

人の努力を笑うんじゃないよ!

まったく優しさが足りない。

僕の動きに安心したのか立ちすくんでいた女性が膝を曲げで布を下ろしてくれた。

おお、やっぱりいい人じゃん。

やっと届いた布に身体を擦り付け全身を拭こうと奮闘する僕。

「まあ、綺麗好きなんですね」と微笑んだ彼女は近くの人にお湯とタオルを頼んでくれた様で、布と格闘する僕をそっと持ち上げお湯の入った桶の中へ入れてくれた。

突然持ち上げられてビックリしたけど、直ぐにお湯の中へ足から入れられて理解した。


調度良い温度のお湯にお風呂を思い出す。

あー、いいねー。身体にまとわりついていた汚れが剥がれ身体がスッキリしていく。

顔を洗おうとしたが、短い手が届かない!


「失礼します」と声がかかり、数人のメイドさんが身体を洗ってくれた。

全身綺麗に洗われた僕はタオルでしっかりと拭かれさっぱりとした。

そこで気がついたのだが、てっきり爬虫類だと思ったが羽毛っぽいものが部分部分生えていた。

これは鳥類も有り得るか?恐竜の時代とかに居たよねそんな感じに鳥っぽいの(※始祖鳥)。


「綺麗になりましたね!」メイドさん達にそう声をかけられたので、うんうんと頷いてみた。

「まあ、言葉がお分かりになるのですか?」その問いかけに「アギャっ。」と答えつつ頷いた。

メイドさん達は喜んでキャッキャしている。


「どうかしたのですか?」

そこに入ってきた女性、最初に布を持ってきてくれた女性がメイドさん達から僕が言葉を理解していると聞かされ驚いていた。


「んんん、それではご質問してもよろしいですか?」

やや緊張した面持ちでそう切り出した彼女に「アギャっ。」と答え頷いた。

彼女の表情がパァっと明るくなった。

「まあ、本当にお分かりになるのですね!」だいぶ嬉しかった様だ。まあ、僕でも犬や猫が言葉理解してたら....怖くね???

ニヤッと笑った犬とか、怖くね???

怖い想像が膨れ上がっていく。

ま、まあ、異世界だしな。


「ではこれより移動致しますので、その、抱き抱えてもよろしいでしょうか?」

産まれたばかりだしね、移動するなら抱っこは仕方ないだろう。

「アギャ。」と答え両手を上げてバンザイする。

メイドさん達は僕の仕草に可愛いと喜んでいた。

うぬ、中身おっさんとしてはやや恥ずかしい気がしてきた。


そのまま抱っこされて移動する。

彼女の後ろには数名の騎士っぽい格好の人達が真面目な顔で着いてきていた。

うわー、騎士だよ...近代兵器無さそう...と残念に思った。あ、でも甲冑の感じはちょっとメカニカルなデザインだな。

僕は思わず茶目っ気を出して、抱っこされた肩口から後ろの騎士達に短い手をピコピコと振った。

騎士達の口元が緩み目が泳いでいる、後ろの方の騎士は小さく手を振っていた。案外いい人が多そうで良かった。

そこでふと思った。僕手があるじゃん。じゃあ鳥は無いじゃん(※爬虫類も厳密には無い)である。

いよいよ自分が何者になったのか謎だけが深まる。

これは早急に調べなくては行けないなと考えていると目的の場所に着いた様だ。


大きな扉の前で門番の様な騎士が声を上げる。まるっきり中世っぽい時代背景にメカヲタとしての僕には絶望しか無かった。


「第一王女メルフィーナ様、ドラゴンの幼生体を伴ってご到着です。」


....はい、答えはドラゴンの幼生体でした。

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(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

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