俺がパスワードだ〜戦場を駆ける撃墜王、エースパイロットの武勇伝〜
エースになるための条件に、撃墜スコアというものがある。当時の俺のスコアは65535機落としたエース中のエースだ。
あぁ、ちなみにこれは現実の軍隊ではないぞ。あくまでバーチャルゲームの中での話しだ。
全盛期には素人タレントまで輩出し、人気芸人、声優を配してテレビ番組まで持つほど勢いがあった。
俺はいわゆる最古参のパイロットになる。戦場を経験したものならわかるだろう。
右も左もわからん坊やが、百戦練磨の将官クラスと同じ戦場に放り込まれる時代を駆け抜け今に至る。
あれは、地獄だ。何もわからぬままに、撃破されるまで翻弄され続け恐怖を刻み込まれる。
「何やってんの!!」
同時に出撃する羽目になった少尉から罵声が飛ぶ。
何をやっているのかわからないから撃破されたわけだが、あの頃の俺は二時間待ちでようやく遊ぶ事の出来た興奮で、何も覚えちゃいなかったよ。
今では考えられないくらい熱い時代。上官も騒ぐだけ騒ぐやつもいれば、モニターを見ながら丁寧にレクチャーしてくれる大人もいた。
みんな一日中、戦場に入浸り熱い戦いを繰り広げていた。
朝から晩まで、いったい彼らの仕事はどうなっているのかリアルを想像してはいけなかった。
十年以上に及ぶ歴史の中でいくつものドラマがあった。ぶち切れた戦士が、拠点に若い連中を引き連れ乗り込んで来る事もあった。
リアルヒロインに群がる部隊は鉄の結束を誇ったものだが、ヒロインを掻っ攫ったリーダーを恨み解散した話しも聞いた。熱が冷めると自然に恋仲も錆びついたそうだ。
語ればそれこそ一冊の本を出せるくらいの戦場のドラマと人間のドラマがある。
俺もいつの間にかランカーに名を連ね、エースの一角を担うようになったものだ。
パスワードと名乗れば、近隣の拠点で知らないものは新人くらいには有名になれた。
「パスワードさんはどうしてパスワードってパイロットネームにしたんですか?」
怖いもの知らずの高校生に訊ねられた。先達の将校やエース達が触れずにそっとしていてくれたのは、優しさなのだろう。
撃墜王と異名を持つ俺が、パスワードとパイロットネームを混同してつけた情弱のド素人だったなんて、いまや恥ずかしくて言えない。
「あぁ、こいつアホだから、名前とパスワード間違えたんだよ」
笑いながら説明する戦友。おのれ、背中を撃つような真似をしやがって。
戦友の裏切りにより、俺は撃墜された。何事も入力は慎重に――――それが俺からの忠告である。
お読みいただき、ありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
某ゲームでの体験をもとにアレンジを加えて出来上がった作品となります。おでんエッセイと同様に、町中にある店の一幕として、ほんの少しばかり今回のなろラジ専用ワールドにかかってます。
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