失うのが怖いだけ。
彼女ができて早8か月。
長いようで短いような、なんて考える暇もないほどに「恋」に没頭していた。
恋人なんてできたことがなかった。
考えたことは何度もあったが、自分はだれにも釣り合いが取れない気がしてならなかったのだ。
そんな私にも所謂”運命の人”が見つかった嬉しさがやっとわかってきた。
私の恋人はとても「可愛らしい」。心が優しく、恋愛相談とやらをしょっちゅう受けているらしい。
博識ではないし、成績も下のほうだがそんなことは私の眼中になかった。
ただひたすらに”好き”だった。
その時までは、
私は自暴自棄になりやすい、現代社会でいう”メンヘラ”だ。
依存気質にある私はよりによって最も壊れやすい恋人を心の拠り所にしてしまったのだ。
それが彼女にプレッシャーをかけることも知らずに。
そしてもう一つ、
図に乗ってしまったということ。
私はどうやら”キザ”という人種らしく、それはまあ女を見つければ声をかけてしまう性分だった。
恋人ができたことにひねくれた安心感と自信を抱き始め、悪びれもなくそれを続けてしまった。
彼女は呆れてしまった。
「好きかどうかわからない」この言葉を彼女の声で聴いたとき、涙より先に心臓に痛みを覚えた。
”なぜ彼女のことをもっと考えなかったのだろう”
その言葉を脳内で連呼しながら涙をこぼした。
ああ、これで終わりか。
なんてかっこいいセリフは出てこなかった。
泣いた
初めてだった
こんなに胸が痛むのは
肉親を亡くした時の痛みはこれくらいかなんて考えた時もあった。
先が見えなくなったし、生きる気力さえ失いかけた。
怖かったのだ。
誰よりも僕を”すき”でいてくれたあの子が違う人の隣で笑っているのが苦痛だと初めて思った。
「君が幸せになればいい」なんて吐き捨てていた自分を殺したかった.
ただ、必要だったのだ。
私には彼女が、彼女の声が、髪が、仕草が、優しさが。
走馬灯のように流れる思いですべてに泣いた。
ありがとう
そう言って君はまだ隣にいる。
君は恋人じゃなくて「大切な人」
君をもう好きじゃない、あの時みたいに。
愛してる。
と書かれた置手紙には、
滲んだ涙の跡が残っている。