表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

失うのが怖いだけ。

作者: 定まさし

彼女ができて早8か月。

長いようで短いような、なんて考える暇もないほどに「恋」に没頭していた。

恋人なんてできたことがなかった。

考えたことは何度もあったが、自分はだれにも釣り合いが取れない気がしてならなかったのだ。

そんな私にも所謂”運命の人”が見つかった嬉しさがやっとわかってきた。


私の恋人はとても「可愛らしい」。心が優しく、恋愛相談とやらをしょっちゅう受けているらしい。

博識ではないし、成績も下のほうだがそんなことは私の眼中になかった。

ただひたすらに”好き”だった。

その時までは、


私は自暴自棄になりやすい、現代社会でいう”メンヘラ”だ。

依存気質にある私はよりによって最も壊れやすい恋人を心の拠り所にしてしまったのだ。

それが彼女にプレッシャーをかけることも知らずに。

そしてもう一つ、

図に乗ってしまったということ。

私はどうやら”キザ”という人種らしく、それはまあ女を見つければ声をかけてしまう性分だった。

恋人ができたことにひねくれた安心感と自信を抱き始め、悪びれもなくそれを続けてしまった。

彼女は呆れてしまった。

「好きかどうかわからない」この言葉を彼女の声で聴いたとき、涙より先に心臓に痛みを覚えた。

  ”なぜ彼女のことをもっと考えなかったのだろう”

その言葉を脳内で連呼しながら涙をこぼした。


ああ、これで終わりか。

なんてかっこいいセリフは出てこなかった。


泣いた

初めてだった

こんなに胸が痛むのは


肉親を亡くした時の痛みはこれくらいかなんて考えた時もあった。


先が見えなくなったし、生きる気力さえ失いかけた。

怖かったのだ。


誰よりも僕を”すき”でいてくれたあの子が違う人の隣で笑っているのが苦痛だと初めて思った。


「君が幸せになればいい」なんて吐き捨てていた自分を殺したかった.


ただ、必要だったのだ。


私には彼女が、彼女の声が、髪が、仕草が、優しさが。

走馬灯のように流れる思いですべてに泣いた。


ありがとう

そう言って君はまだ隣にいる。


君は恋人じゃなくて「大切な人」

君をもう好きじゃない、あの時みたいに。



愛してる。



と書かれた置手紙には、

滲んだ涙の跡が残っている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ