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かぐや姫の恋嵐  作者: 武佐井 玄
葉月編
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火曜日 その二

あの人の声だとわかっていても、いきなり後ろから声をかけられたので、僕は席から跳ね上がってしまった。


振り向くと一人の少女が立っていた。膝まで届く大きな白いシャツを着ている。袖は千切ったと見え、袖付けのところがめちゃくちゃだ。目は大きく、鼻と口は小さい。眉毛は細くて短い。黒い短髪はぴったりと頭にくっついている。肌も白い。まるで月の白さだ。


「あ、あなたは、昨日の?」


「そう。屋上で会ったのが私。思ったほど驚いていないね」


大きな目はじっと僕を見つめている。澄んだ瞳の中から、僕の姿がうっすらと見えるような気がした。驚いていないんじゃなくて、どんな反応をしたらいいか心が忘れた。


「じゃ、あのでかい球体は何?」


「あの球体?それも私だから変な物みたいに呼ばない」


もしかしたらと思ったけど、間違いはなかったようだ。あの白い球体が変化して、僕の目の前に今、立っている。


ききたいことがいっぱいある。どこから来たか、どうやって僕に今までと違う昼夜を見せてくれるか、それと……。


僕が黙っているのを見て、少女は椅子に坐って素手でギョーザを摘んで食べ始めた。僕が食べたくて温めたけど、止めることはしなかった。


ギョーザを全部食べてからも少女は何も言わなかった。


「私がなぜこの世界に来たか、聞きたい?」


僕の考えを読んだかのようで、驚いた。


聞きたいことがいっぱいあって困った。


「そう、あなたがなぜここに来たのかが知りたい。それに、あなたは一体どんな生き物なのかも。それから……それから」

「質問が多い」


少女の一言で僕は口を閉じた。そして、一つ一つ答えてくれるのを待った


しかし、少女は僕の質問には答えず、あちこち歩きまわりながら、家の見物をした。



「普通な家、特色がない。逆に聞くけど、あなたはなぜ今の世界が嫌い?」


「つまらないから、嫌い」


床を見ながら、僕は消えいるような声で答えた。


「分った。でも、もう一度だけ聞くけど本当に後悔しない自信ある?」


大きいな目に見られ、少し怖気づいたけど、僕ははっきりした声で話した。


「後悔しない」


「私と違う景色を見るのは楽なことじゃない。怪我をすることだってある。死ぬことがあるかもしれない。そんな覚悟もある?」


少女の声は冷たく伝わってきた。


死ぬ、と言う言葉には正直驚いた。軽い気持ちで死にたいと思ったことは何回もあったし、口にしたことも何回かあった。しかし、今回は違った。冗談じゃないことはわかったから。


ぐっと拳を握ってから、覚悟はあるといった。


また沈黙。


少女の視線は僕の身体から離れていない。値踏みでもしているのだろう。


「私の事について教えるのはいいけど、その前に少し休ませて。この身体になったばかりなので、なれないこともあるし、昼間はあちこちで戦ってたからとても疲れた。起きたらちゃんと教える」


少女は僕に背を向けて言葉を続けた。


「あなたの部屋を借りる」


「うん」


僕は自分の部屋を指で指した。


少女は僕の部屋に向かって歩いた。ドアの前に立ち止まり、振り返って僕に忠告をした。


「この部屋に入って夜這いするのはだめ」


本気で言ってるのか冗談なのかわからない。少女の顔はとてもまじめだから。


それから何か思い出したらしく、少女は振り返って、「そうだ。この髪の毛をお冷の中にいれ、あなたの親の部屋において」

少女は言ってから、自分の髪の毛を何本か抜いた。髪の毛は一定の長さに伸びてから切れた。


僕は小走りで少女の前に行き、髪の毛をもらった。


「どうしてこんな事を……」


「答えは明日」


パタンと、ドアが閉められた。よほど疲れているんだろう。


テレビをつけて見たけど、頭の中は少女の姿が離れられない。それに、明日になれば変われる自分の生活への憧れが、僕の心を興奮状態にさせた。


そうだ!忘れるところだった。少女が言ったとおりに、髪の毛が入ったお冷をパパとママの部屋にもっていかないと。


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