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かぐや姫の恋嵐  作者: 武佐井 玄
葉月編
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月曜日 その二

頭の中には夕方に見た光景しか浮かんでこない。焼き付けられてしまった。


僕は厨房に入り、食べ物がないか探してみた。予想とおり、何もない。それもそうだ。家で料理を作って食べる人はうちにはいない。僕は冷凍庫から冷凍ギョーザを取り出し、レンジにいれた。


二分を待とう。


そして、冷蔵庫から冷たいジュース取ってリビングルームに戻った。少し自分を落ちづかせないといけない気がした。ジュースを飲んだら、喉を伝って体の中に入った。冷たさは全身に広がり心がすっきりした。


テレビの左角には二日前に貼ったメモがそのまま残っている。電話という便利な通信道具があるのに、パパとママは電話をしてくれない。


メモの内容:

フモト、ママとパパは仕事で何日か家に帰れなくなるから、一人でもちゃんとご飯を食べて、学校へもちゃんと行ってね。高校三年生なんだから、遊んでるばかりじゃ、だめだよ。


これはよくあることだから、別になんとも思っていない。パパとママは僕のために必死に働いているんだから、仕方ないこと、と自分に言い聞かせるけど、寂しい気持ちは変わらない。


チーン!


冷凍ギョーザを温め終えたレンジの音が響いた。


僕は厨房へ入り、レンジから冷凍ギョーザを取り出し、食べ始めた。やっぱ、こんな緊張した時に、あったかい物がお腹に入ると気持ちよくなる。


食べ終えてから、リビングルームに入りテレビをつけた。見たい番組があるわけではない。ただ、空っぽな部屋にこれ以上寂しくさせないだめだ。


目はテレビを見ているものの、内容は一つも入ってこない。その変わり、頭の中をよぎったのは夕方の光景のみだ。


自分が今まで歩いてきた普通な日々、思い返してみても心を刺激するとか体をワクワクさせるそんな記憶など一つもない。


どうするべきか、ソファーに座って悩んだ。このまま何も見なかったように、普通の生活に戻ってもいい。それがいやなら、あの得体のしれない気球が消えたところの真っ下へいって調べてみてもいい。


なかなか決められない。今まで一人で何か重大なことを決めたことがなかったから。優柔不断な性格が足を引っ張っている。


行くか、行かないか。考えれば考えるほどネガティブになっていく自分に気づいた。あの場所へ行っても何も見つからないとか、あなたみたいな人に新しい世界が広がるわけがないとか。


いろいろ悩んでいると、テレビに張ったメモがまた目の中に入った。何も変わらなくてもいい。しなくて後悔するより、してから後悔したい。


こう思えたら少し気が楽になった。


僕はさっそく靴を履いてあの場所へ向かった。緊張で心がどきどきするけど、あの得体の知れない物に会えたら、一生忘れられない思い出を作れるだろう。会えるかどうかはわからないけど。


街に出ると、一人で勝手な期待をし始めた。あの変な物に出会ったら、楽しい思い出、悲しい思い出、怖い思い出、いっぱい作れるだろう。会えるかどうかわからないけど。


やっとこんな平凡な生活から抜け出せる。


心の底からこみ上げて来る興奮のせいもあって、身体が震え出した。両手で自分の身体を抱き、抑えた。


あの物が消えた真下まで行く間、さまざまな考えが頭の中で渦巻いた。


最近はやる異世界への旅、それとも僕に超能力を与えて世界を救わせる?あの物にのっとられて世界を破滅する怪物と化する、とかばかげた事が次から次へと頭の中で飛び交う。


怖いけど、楽しみだ。


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