私の1ページ_1
「あのさ、過去に一日だけ戻れるとしたら、どの日に戻りたい?」
ライブ観戦が終わり、帰りの閑散としたホームで先輩が脈絡もなく質問をしてきた。客席の一番前で見た熱気の余韻に浸っていた私は、緩んだ顔をそのまま向ける。
「戻りたい日が迷うくらいたくさんあると、人生幸せだと思うんだよね。」
そうかなぁ、と思うが口には出さない。過去に戻りたいと思うこと自体が、現在と違うものを求めているように思えてしまう。それでも、先輩の問いに答えようと、私は戻りたい日を探すために記憶を辿ろうとする。
「今日はそんな日だったんだ。」
先ほどから何も答えない私に構わず、先輩はいつものように屈託なく笑った。私はただ、そっか、とだけ呟いて記憶を辿るのを止める。
きっと、今日に戻りたいと思う未来のあなたの隣にいられるのは私じゃないから。