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ないものねだり症候群

作者: 鮎子

幼い頃から、昔から

私は自分にないものばかり欲しがった

自分にないものは、いつだってキラキラ輝いていて

それらを平然と持っている人たちが、羨ましくて仕方なかった

いいな、いいな、どうしたらそれは手に入るんだろう

もちろん無いものねだりの自覚はあった

隣の芝はいつだって馬鹿みたいに青く

また自分の芝もめちゃくちゃに青いなんて幻覚を見る程度には

ないものねだり症候群が悪化していた

私はいつしか、努力という言葉と出会う

努力をすれば、なんとか手に入るものもあるんだと知る

足掻いて足掻いて背伸びして背伸びして

やっと届く世界に少し指先がかすって嬉しくって

でもそれも束の間の一瞬で

背伸びし続けているうちにだんだん足がつって

転んで

なんでって言う前に

もう

疲れたよ、って


泣く気力もない

ただただ、沈んでいく


どんなに頑張ったって、どんなに無様に足掻いたって

手が届かない次元は存在する

上には上がいて、その先は永遠に続き

その高所で優雅に、無様にあがく私を滑稽だと見下ろす連中がいて

自分の立ち位置を目の当たりにして打ちのめされて

笑って誤魔化しきれない境地に佇み

さらに沈んでいく


確かに「置かれた場所で咲け」とはよく言ったもので

そのほうがきっと楽だし、より自然に咲き誇れるのだろう

それでも、私はないものねだりが悪化していて

やっぱりどうしても自分で咲きたい場所があって

叶えたい夢があってってさ

どうしても、この頑固な意思が

自分の首を締めているのは重々承知なのに

ないものねだりが、やめられない

私にはないものが、どうしてもきらきらと眩しくて

いつか手に入れたいのだ

だから、今日も夢見て追いかける


「だってまだ、隣の芝が青いから」

そんな理由で私は欲しがり続ける

求め続け、もがき続ける

諦めることはいつでもできる

なら今じゃなくても、いいだろう

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