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第6話

 キャロンが気絶から復活し、二人で昼食を取った後、特訓を再開する。


「魔法の習得、おめでとうございます! 予想より凄まじく早いのでキャロンはびっくりです!」


 さっきから隙あらば抱きついてこようとするので、俺はその度に小さな紫電を身体から放出して警告する。


 さすがにさっきのトラウマがあるせいか、キャロンは近寄ってこない。


「もしかして警戒されてる……?ま、まあ気を取り直して、スキルの練習に移りましょう! これには実戦が一番です!」


 昼食後から、三人の応援が来ている。一人はナホーティア。天使のような笑顔で俺に手を振る。あと二人も、俺の幼なじみだ。


「ヤッホー、ケイブ」

「お久しぶりね」


 代わるがわる俺に挨拶をしてくるが、二人とも吹き出しそうになるのを何とかこらえている様子だ。


「スキルの習得、おめでとう! ……ププッ」


「整理整頓、素敵なスキルね……クスクス」


「悪かったなあ! しょぼいスキルで!」


  我慢の限界だったのか、二人とも大爆笑した。


  腹を抱えて笑っているのは、リミュ・セインファイザー。


  ツインテールの美少女。ケイブよりは十センチ程小柄だ。かなりの小顔であり、出るところは出ている為、スタイルは良く見える。ハキハキとした快活な女の子だ。顔をくしゃくしゃにして笑っているのだが、その表情がとても可愛いらしい。白いワンピースがよく似合っている。


  口を抑えてお上品に笑っているのは、リーフェ・ハイデルファンド。


  ケイブより背は少し高め。長い脚と目を奪われる胸囲の持ち主で、抜群のスタイルを誇る。眼鏡のせいか知性を感じさせる面立ちである。


  ナホーティアの胸が大らかで、優しげな性格を表すかのようにふっくらしているとすれば、リーフェのそれは形がシャープで、つんと上を向いている感じだ。普段はクールビューティーなくせに、今は笑いが止まらない様子だ。


  二人とも、リハイヘヴン家に仕える貴族の次期当主である。ナホーティア、リミュ、リーフェと俺の四名は家ぐるみで仲が良く、生まれ年が同じということもあって、小さい頃から行動を共にしていた。


「お坊っちゃま、まずはリミュ様と模擬戦をして頂きます。戦いの中で、スキル発動のコツを掴んで下さいませ。スキルの修練方法は千差万別。おのおので感じ取るしか無いのです」


  リミュは刃のついていない鉄剣を手に持っている。


「よろしくね! ケイブ。この剣を使わせてもらうわ。私もスキルの練習をしないといけないからね」


「お前だけずるいぞ! 武器を使うなんて!」


「あらそう? 使いたけれはケイブも使ってもらって結構よ」


「ああ、そうさせてもらう」


  そう言いつつ俺も鉄の剣を手に取るが、正直なところ、剣の腕前はリミュの方が圧倒的に上だ。それに加えて……。


「知ってると思うけど、私は『剣豪』と『怪力』のスキルがあるからね。怪我しても知らないわよ!」


「さてね、怪我をするのはどっちかな?」


  リミュに剣で勝つ見込みは無く、魔法で何とかするしかない。攻撃をいなしつつ、魔法を叩きこむ戦法を取ることにする。


「言うじゃない。それじゃ行くわよ!!」


  真っ直ぐに突っ込んでくるリミュ。怪力のせいか、脚力も尋常ではなく間合を一挙に詰めてくる。


  一撃目は何とか受け止めるも、身体が後ろに吹っ飛ばされる。


「くっ!」


  雷魔法を使おうとするが、発動するまで時間がかかる。イメージに慣れていない為だ。イメージが出来上がる前にリミュが突っ込んでくる。


「魔法なんて使わせないわよ!」


「くそっ!」


  必死で剣を受け止めるが、リミュの怪力を何回も受け止めるのは難しい。


「さあさあ、スキルを使ってみなさいよ!」


「言われなくても使ってやるよ! 後悔するなよ!」


  リミュから距離を置きつつ心に念じる。


ーー頼む。整理整頓スキルよ。リミュの怪力を何とかする方法を教えてくれ。


『思考を最適化します。雑念を払い、集中力を上昇させます』


ーーそれだけ??


「ほらほら! 刃はついていないけど、骨くらいはすぐに折れちゃうわよ!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


「勝負に待ったなんてなしっ!」


  怪力のスキルを持つリミュは、片手で剣をぶんぶん振り回してくる。俺は防戦一方になる。


  心は焦り始めるが、スキルを使用してからというもの、頭が凄くすっきりしてきた。


ーー何とか、この状況を打破する方法はないのだろうか。


  すると、スキルがまた俺に語りかけてきた。


『怪力はどうしようもありませんが、マスターの持つ知識を使い、剣撃を無効にする思考に誘導します』


  その瞬間、俺は無意識の行動に出た。雷魔法を発動させ、剣に纏わせる。


  リミュは一瞬顔をしかめるが、そのまま撃ちかかってくる。


  剣と剣が触れあった瞬間、リミュの剣にも電気が通った。そして、リミュの剣が勢いよく吹っ飛んだのだ。


「ええっ!?」


  戸惑いを隠せないリミュ。俺はこのチャンスを逃さず、雷魔法をリミュに打ち込んだ。


  「きゃああああああっ!!」


  リミュには、一体何が起こったか解らなかっただろう。電気のないこの世界では、電磁石の原理なんて知る由もない。双方の剣に電流を流し、二つともN極の磁界を作ったのだ。


  地面に倒れるリミュ。気絶しているようだ。


「勝負あり! ケイブお坊っちゃまの勝利です!」


ーー整理整頓スキルが、俺の知識を総動員して解決策を示してくれた。これは本当に使えるスキルだな。


  自分が知らない知識は使いようがないが、持っている知識や体験は使いこなせるスキルのようだ。


  勝利の快感に浸りながら、俺はリミュの乱れたワンピースを直すことを忘れなかった。

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