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嵐のような姉

登場人物


北川夏美(25)

IT企業に勤める、数少ない女のエンジニア。彼氏いない歴は3年ちょい。イケメンが大好きだが恋愛対象としては見られない。


古道由香(27)

夏美の同僚の、数少ない女のエンジニアの一人。沢渡が好きで、恋愛経験に乏しい。


藤本武人(25)

夏美の同僚かつ同期で、夏美と仲良い。最近は宇佐美が気になっている。あだ名はふじもん。


沢渡龍也(?)

夏美の同期で営業マン。夏美と同じビジュアル系バンドを好む。かなりのイケメン。


宇佐美(26)

夏美の同期で受付をやっている。性悪女として女子からは嫌われる系の人。沢渡に対しての態度がすごい。


橋下(?)

夏美と同じ部署の同期。夏美曰く、「どうしようもない男」


横濱(24)

受付に配属されている同期で夏美とそれなりに仲良い。少し空気読めない一面も。

「夏美ぃぃぃぃぃ!!!!!!!」



____ああ。


「今の私には夏美だけが頼りなのぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」



____そうですか、あーはいはい。



…。


シクシク。



…え、まだ続くの?



「夏美ぃ…」



はぁ…


「…あなた、それでも」




そう、言葉を切って息を大きく吸って。



いくよ、私。


今回こそ言ってやるんだから。





「私の姉なの!?!?!?!?」








_____これは、1時間前に遡る。


慰安旅行から帰ってきて、次の休みの日。


完全に、引きこもりモードよ。


家を出ずにIMITATORのライブ録画鑑賞のために、オタク感満載な準備をしてやってるこの喪女感、最高に楽しいし、もう一生こんなんでもいい気もするしなぁ、


とか言ってるうちに、なんかチャット来たんだけど。


誰?


夏美はぁと今日家に行くからね(はぁと)』


…うわ、姉じゃん、しまった既読付けちゃったよ


というより、え、今日来るの!?!?!?迷惑なんだけど!?!?!?


確かに、私の姉、北川美和きたがわみわはこういう突拍子も無いことを平気でやってのける。


私より3つも上だから、アラサーなんだけど、そんな歳にもなって、何で妹にこんなに頼るような困った姉に育ったのか、ホント不思議。


あ、また通知来たんだけど。


『もう家の前だから入れて(はぁと)』


…いい加減、『はぁと』をやめてほしい…


もう、私ったら、こんなに嫌でも姉が来ればちゃんと入れてあげるなんて、ホント偉い偉い。


…あー、こんな風に気を紛らわせてても仕方ないか…


「ヤッホー!!!!!夏美ぃ!!!!」


…エントランスのロックを開けてすぐに入ってくるのね、ホント元気だなこの人はいつ見ても。


「何、姉ちゃん…」


どうせ、またあの話題なんでしょ?


「あのね、あのね、」


あーあ、やっぱりこのパターンか。


目から涙が溢れ出す。


「…わかったから、落ち着いたら話してよ、飲み物でも準備するから」




…そして、今に戻る。


「それで、今日は誰相手の話?この間の彼氏?それとも合コンで出会った男?」


「雄作とはとっくに別れてるし!違うもん!」


ああ、さいですか。


「実は…


今回は夏美にも関係してるから!そんな呆れたような顔しないで!?!?」


ほう、じゃあ聞いてあげようか?



ここら辺で段々察しがつけると思うけど、私の姉はかなりの恋愛体質だ。


それで変な男にいつも引っかかって(もしくは姉がクズ男ホイホイなのかもしれないけど)、私に泣きついてきてるのが多い。


私が小学生の頃からこんな感じで、そのせいで恋愛に関してだけは少し他の子よりも大人びた考えを持ってるような子になってしまった。


まあこんなもん聞かされてても恋愛自身は自分で出来てるし、別にその点では恋愛音痴の方の喪女にならなくて良かったとも言えるけど。


「…それで?どんな話なの?」


大志たいしに…会ったの」


思わず私の身体がビクつく。


「それで?何で私に関係してるって?」


「え、いや、その」


「そんな人、私は知らないから」


「ご、ごめん…」


全く、姉は何を言い出すのかと思えば。ホントろくなこと言わないんだから。


「それで?その男と何があったの?」


「う、うん…


今、私の職場にいるの…」


シンと、一瞬部屋が静かになる。


「…そう、それで?」


「すごく今更話しかけてきてさ…」


「うん、それで悪い気しなかったって?」


「…そういうことじゃないの。


ただ、私にしてみればね、こんな奥手じゃないけど、なんていうかね、その、


…そう!簡単に言うとデートに誘われちゃってさ!


それに行くべきかどうかってさ、やっぱり悩むじゃん…?」


…はぁ。そう言うことね。


「そんな話、いっつも思うんだけどさ、お母さんにでも話せば良かったじゃん。


お母さんの方がそういうの詳しいと思うけど」


「でも、今ママにそんなこと言ったら、『その人と結婚しないとあなた行き遅れるよ!?』とか言われそうなんだもん」


確かに。27歳で彼氏なしだと、結婚してほしいって私達に願ってるお母さんが黙っちゃいないか。


正月に実家に帰るたびに、なんか言われてるみたいだし。


「それに…


大志のことだし、夏美にも伝えないといけないかなって…」


「別に、言う必要も無いよ。


そんな男、興味ないし。したいようにすれば?」


「…そうだよね、わかった」


まあ、姉がそう言う理由も、認めたくはないけどわかるし、


それ以上に、姉の性格上自分から好きな人にアタックかましていく方が多いから、それで戸惑ってるのもあるんだと思う。


まあ、だから、今回の突然の来訪は一応許す…


「それじゃ、ご飯だけ奢ってもらってさっさと帰る!!!


なんかさ、行くレストランがね、ここら辺だからさ、終電とか言い訳にされて持ち帰りされたら困るし?


だから、夏美、この家に今日と明日泊めて?」


…許すか!!!!!


ってか、何言ってるのこの人、奢ってもらう前提にしてるの!?!?


「は!?!?何言ってるの!?!?」


「えー、でもぉ、今日泊まる用意ちゃんと持ってきたんだよ?」


えー、じゃないよ!?!?この家の主は私よ!?!?


「出てって!!!!」


「困るぅ」


「〜っ、いい加減にしてよバカ姉ちゃん!!!!」




それでも姉が出ていくことはないってこと、流石にわかってたから、


諦めて、イヤホンしてベッドの上でうずくまってIMITATORのライブ録画の続きを見た。


…さっきまでの解放感を返してよ!!!!!!!








それは、急にやってきた。


姉が私のベッドに忍び込んで、シングルベッドにいい歳した女2人が寝るとか言う最悪な状況から解放されて、やっと一息つけた時だった。


「じゃ、今日の夜また泊まるからよろしくねぇ〜鍵借りてくねぇ〜」


そう言って、嵐のような姉は一旦私の砦を抜けていった。


…ふーん。あんなに夜のこと心配してたくせに、ランチから会うつもりなら流石にそんなに長くいることないだろうし、何考えてるのやら。


っていうか。ちょっと待って?私が隠しておいたスペアキー勝手に持ってったよね!?


このまま借りパクするんじゃないのあの人。いや、やりかねない、というかやるでしょあの姉なら。


折角の休みが…久しぶりの土曜日休みで日曜日と2日間楽しいことだけしたかったのに。


なんでこんな風に悩む羽目に…






ブーッ


あれ、チャットが…?


静かな所でのバイブ音は鳴り響きやすい。


やけに自己主張が激しい。


面倒なことじゃないといいけど…


通知を見ると。


『藤本』


「!?!?!?」


ふじもんから!?!?


えっと、いや、待つんだ、待つんだ北川夏美。


いい?これは、君が期待してるようなことじゃないんだ。そんなに甘い考えだと後から辛いぞ?


こんな言葉を知ってるかい?医学では報酬予測誤差って言葉があってだな…


んもう!!!!!!!そんなこと今言ってる時じゃないでしょ!?!?


っていうかこの変な解説してるの誰!?!?


いいじゃん!!!!今までプライベートで送られてきてなかったのに、今回初めてだよ!?!?少しは期待するでしょ!?


い、いや!何言ってるの!?!?いつふじもんからのプライベートなチャットを期待してたの!?!?私とふじもんはそんな関係になるはず…


もうなんだっていいや!!!!えい!!!見ちゃえ!!!!!


『今日お前暇?』


何この期待出来そうな文は!?!?


『暇だけど?どうして?』


『今日奢るからさ、夕飯一緒に食わね?』


はい来ましたーーーーーーーーーーー!!!!ほら大勝利ーーーーーーーー!!!!!


『いいけど、どこで?』


『〇〇駅の△△とかは?』


何そこ知らない!名前からオシャレそうなんだけど。


おっと、ウェブに載ってるの見たけどめっっっっっっちゃオシャレやん??????


よく見たら予約制じゃん?????


え?????これは????キタコレって言っていいのでは??????


『いいよ』


『了解。じゃあ18時に〇〇駅の◇◇で集合な』


………………………。


これ、夢じゃないよね?


って、浮かれてる場合じゃないじゃん!!!!


「お洒落な服…!!!!探さないと!!!!」


捨てる神もいれば拾う神もいる、だっけ?


そうよ!!!私は拾われたのよ!!!


姉のせいで気分悪かったのなんて、もう忘れたわ。








約束の時間。


待ち合わせ場所にいくと、もうふじもんは先に着いていた。


え、ヤバ、服の趣味が刺さるんだけど。


こんなカジュアルな感じは会社では見られないし、そりゃフォーマルな格好もいいけど、これはこれで…


「お、北川。来たか。」


「う、うん」


今日の私はいつもより完全に戦闘モードでキラキラしてるはず。


気付いてもらえるかな…?


…って!!!!何その顔!?!?


いつもと同じ顔とか、なんか腹立つ!!!!!


「…あれ?」


ここで、私は気付いてしまった。


というか、気付きたくなかった嫌な予感を、今気付いたふりしてたのかもしれない。


「何で、店に行かないのよ?」


「あ、ああ…」


…さては、何かしら企んでるね?


それも、そんなに嬉しくない。


「ああ、もう2人来てたのか!」


後ろから、少しだけ聞き覚えのある声が聞こえた。


その声で、80%くらい理解して、キッとふじもんの顔を見る。


ふじもんは咄嗟に顔を逸らして口笛吹いてる。


「北川さん、久しぶりです。あ、先週話しましたけど」


その声からしてイケメン感を漂わせ、実際の容姿を見てもどこから見ても私好みのイケメンで、爽やかに流行ファッションを着こなす、そんな男が。


「さ、沢渡さんこんばんは…?」


「沢渡さん、コイツ照れてるだけなんで、いつも通りで大丈夫っすよ」


余計なことを言うふじもんに制裁を食らわす余裕がないほど、私はパニックしている。


え、このカオスな状況、


私にどうすればいいっていうのよ!?!?!?!?

次回の更新は12月13日です。

美和は早生まれで、夏美は6月生まれです。

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