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魔導帝国の英雄譚 〜そして少年は英雄になる〜  作者: 愚者
1章 学院生活編(上)~魔法嫌いの剣士~
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幕間① 精霊の独り言

これも前話と同じく勉強中に書いた物になります。此処からは受験期間中に考えまくった構想を元に書いていきます!

 

 限界が、近い……


 とある「精霊」は「一人」呟く。それが誰の耳にも留まらないと分かっていながら――


 魔力や魔素、魔法という超常の存在が当たり前にあるこの世界には、「精霊」と呼ばれる霊的な存在が数多く存在する。世界創生――この世に確かに存在するであろう「原初の神」によって、この世界が作られた瞬間、彼らは生まれたとされている。数え切れない程の歳月を生きる精霊は優れた知力を有し、強大な力を司り、この世界を密かに見守り続けている。


 長き月日を生きた精霊にとって、この世界に生きとし生けるものは全て我が子も同然だ。世界最古の霊的存在にして「概念」その物が形となった彼らは、時に恵みとなって土地に豊穣をもたらしたり、時に災害となって自然界のバランスを調整したりと、世界の均衡を保つ表裏一体の存在なのである。


 さて、そんな世界の神秘とも言うべき精霊の一体は、今、正に消滅の瀬戸際に立っていた。その精霊は遥か太古、一人の人間と「契約」し、主人亡き今も「霊体」ーー人には見えない状態となって世界を彷徨い続けている。優れた知力を持つ彼らには明確な意思・自我が存在し、時折気に入った人間や生物に自身の力を与えることがあるのだ。


 契約した精霊は契約者の魔力を糧とする事で、その極めて強力な力を主人に貸し与えるがーー遥か昔、精霊の主人が亡くなる結果となった、ある「呪い」の力によって、その精霊は契約者の死による契約の解除を実行する事が出来ず、その超自然的な存在としての力が行使出来なくなってしまったのだ。


 力が衰えたり、契約した主人などから魔力が供給されない精霊に待っているのは「存在の希薄化」――つまり、文字通りの消滅だ。


 残された僅かな権能を使って今まで存在を保っていはいるが……それにも限界が近づいていた。優れた知性を持つからこそ、精霊は自身の消滅期を悟っていた。


 ――早く、新たな主を見つけなければ……


  精霊は基本、同じ所に留まる事は少ない。しかし、魔力の流れが活発で、霊的存在たる彼らにとって居心地が良い場所には長居する事が多い。精霊が今まで存在を保ってこられたのも、この地に流れる太い霊脈から供給される力に寄る所が多い。


 精霊が根を下ろしたのは、とある魔法の学院だった。精霊でさえも畏怖を覚える、強大な力を持つ「魔女」が支配するその地では、今日も今日とて才能溢れる若き魔道士の卵達が勉学に励んでいる。この地で自分に相応しい新たな主を見つけるべく長き時を待っていたのだがーー残念ながらそれに値する者は現れてない。


 確かに、凄まじい才を持つ者も居るには居るが、そのどれもが純粋な魔道士――「武力」と「金属」を司る「剣精霊」の自分とは正反対の素質なのだ。無理もない。精霊の求める比類無き「剣才」を持つ者は学院の性質上、非常に現れにくいのだ。かと言って、今更別の場所で主を探す程の余力は、今の精霊には残されていなかった。


 一人、生徒では無いが、学院の職員の中に凄まじい魔法と剣の才能を持つ者が居るが…‥‥あれはダメだ。才能としては申し分無いが、既に「先客」――他の精霊の気配が感じられた。恐らく、かつての自分と同じ様に契約しているのだろう。


 ――早く、新たな主を見つけなければ……


 最早、今まで繋ぎ止めてきた自我も薄れ掛けているが、残された力を振り絞り、精霊は現実世界に自らの視界を開く為の「眼」を飛ばす。必死ではあるが、半ば諦めの気持ちと共に探すが――


 ――この者は!?


 飛ばした「眼」の一つに映った人間に、精霊は初めて「驚愕」という感情を覚えた。それ程までに、映った少年の潜在能力は圧倒的だった。ともすれば、かつての主を凌ぐ程の……


 ――他の者とは比べ物にならない程の魔力量、それにこの剣…なるほど。これがこの人間の本質ですか。面白い、非常に面白い……!


 何百年ぶりかに昂らせた感情のまま、精霊は「剣精霊」の力を存分に使い、少年を見極めていく。凄まじい情報量が精霊に蓄積される。本来ならこれだけ派手に力を使えば消滅待ったなしだが、今の精霊にその様な危惧はお構いなしだった。


 ――間違いない。彼こそが「私」の新たなる主、彼ならば「私」を使いこなせる……!


 そうと決まれば話は早かった。精霊は少年に気付かれないよう、極めて静かに彼が持つ剣に宿り、自分の存在を保てる必要最低限の魔力を借り受ける事にした。魔力量が低い者ならば体から力が抜け落ちるような感覚に陥るが、少年の圧倒的な魔力量ならば問題にならなかった。


 こうして、「剣精霊」はとある少年の剣に宿り、時が来るまで少年の魔力で自身の存在を取り戻していくのであった――



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